唐松に寄り添って - 春風
熱き青春への招き

視点:切原赤也


「…ハッ、ハッ」


ひたすら壁打ちをする。俺は結構この時間が好きだ。普段先輩らとワイワイしてる分、一人でこうしてると何か落ち着く気がして。
蘭の試合を見て俺は、実を言うと寒気が走っていた。例えるなら、あの時──初めて三強らと試合してボロ負けした時──みたいな、既視感。確かデジャビュとかとも言うんだっけ。

だから、幸村部長が“蘭を今度の合宿に呼ぼうと思っている”っつった時、変な話だけど、何となくそうなる気がしてたんだよな。
臨時マネージャーってのがどうなるかは分かんないけど、俺は蘭にテニスを知って貰いたいと思うし、蘭なら何でもこなせるんじゃないかって思う。


「…選手、か」


自分で言うのもなんだけど、俺はこの立海大で結構やらかしてる方だと思う。だって、一年の俺が三年相手に喧嘩売って負かしちゃったし、その後“あの三強に無謀な戦いを挑んだバカな奴”って認識されちまったし。まあ今ではぜんっぜん後悔はしてねーんだけどな。


だけど、そのせいで夏の大会前には色々あった。
レギュラー、準レギュラーに入れるのは五十人以上いる部員の内の、たったの十五人。毎月第二土曜の練習試合でその準レギュラーは入れ替わることもある。三試合組んで、二試合以上負けたらアウト。どんな理由があろうと、切り捨て繰り上りが繰り返される。
これはレギュラーにも言えることで、レギュラー同士当たることもあるけれど、それでもセンパイらは必ず二試合は勝つんだ。まぁ、ウチの戦力の筆頭だから三強同士を当てることはないらしいけど。

あんなに猛勉強して、ここに入学したんだ。そしてあの時俺は、ソイツらを倒して立海大のナンバーワンになるって決めてんだ。だって俺は、自分の好きなことで負けたくないんだ。誰にも何にも、負けたくない。


話がずれたけど、俺は十五人の中に一年の夏前に入っていた。たったの十五人の中に一年が唯一いれば、先輩らにしてみれば格好の獲物だったんだろうと俺も思う。幸村部長たちの時とは違って、たった一人。だけど、それでも俺は、あの人らを超えなきゃならないんだ。


「……」


だから、マネージャーでも選手でも何でもいい、蘭っていう同級生の存在が──俺を支えてくれる存在が部内にいてくれるってなら、正直結構心強い。でも、そこに蘭の意思があるかどうかじゃ、すっげえ違いなんだ。
もしも蘭が、テニスのことを知りたくってテニスを好きになりたいってなら、俺は大歓迎だ。

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春風