生徒R.A.Bの目撃談 - 春風
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「……グスッ…っく、ぅ…」
「………」


──嗚呼!!眠れない!!

これでも僕は一応風邪を引いている身であって、体はそれなりには疲労状態にある。体を横たえているにも拘らず、それなのに眠れない理由は、隣のベッドからほんの僅かに聞こえて来る、すすり泣く声にある。
と言っても、声を殺して泣いているのだろう、それ程物音は漏れては来ていないし、声はある程度抑えられている。


「………」


けれど、隣でこんな人がいると言うのに、これを放って呑気に眠りに付ける程、僕は鈍感な性格をしていない。ましてや、相手はあの兄さんの恋人であるという女性である。


「………」

僕は迷った挙句、杖を取り出し小さな声で呪文を二つ唱えた。


「………っ」


そして、僕は充分に躊躇した後、右のカーテンに手を掛けて一気にシャァッ!と引いた。


「っ、ひゃぁっ!」
「…っ!」

突然開いたカーテンに驚いたのか、変な高い奇声を上げてその口元までベットの毛布を被ってしまった彼女。僕は、その彼女を見て、一瞬言葉を失った。
──真っ赤に充血した白目に、泣き腫らされ重たくなっている瞼。目尻から止めどなく流れる涙が、その白い頬を絶え間なく濡らしている。


「…ぁ…あ、そ、その、煩くしてしまって、ご、ごめんなさいっ…」
「………」


すると彼女は、その涙袋に溜まったを手の甲でクイッと拭き取って、小さな声で僕に謝って来た。
……待て。この人は、僕が文句を言うためにカーテンを開けたと思っているのか。それなら、それは大きな勘違いだ。

僕は慌てて、けれどあくまでも無表情は忘れずに、##NAME2##先輩に声を掛けた。


「……あなたのベッドの周囲に、人除け呪文と防音呪文を掛けました」
「!」


僕がそう言うと、大きく見開かれるその双眸。涙で濡れて窓からの月光に光るそれは、とても幻想的に見えた。


「だから、その………もう、思い切り泣いても大丈夫ですよ」
「!…っあ、ありがとう、ございます」


僕は言い終わると、##NAME2##先輩の言葉を待たずにカーテンをシャァッ!と元通りに閉めた。


「………」

柄にもないことをしてしまったかもしれない。けれど、後悔は何故だかする気にはなれなかった。


「………ひっく、ぅっ」


すると暫くして聞こえて来たのは、彼女のちゃんとした泣き声。

そう。実はこの防音呪文は、##NAME2##先輩と僕のベットの周囲に掛けてられてある。要するに、僕自身も呪文の囲の中に入っており、##NAME2##先輩の声を聞けるようになっているのだ。


「………」


ワンワンと声を上げて赤ん坊のように泣く彼女の声を聞きながら、僕はベッドに体を横たえた。
…何故だろう。##NAME2##先輩の泣き顔が、瞼の裏に焼き付いて離れない。

暫くして静かになった隣の彼女を確認して、僕はようやく目を閉じて眠りに落ちることが出来たのだった。

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春風