赤兎 - 春風
懊悩焦慮

「##NAME1##、##NAME1##」


──誰かが呼んでいる。手離したくないと感じる人の声が。

##NAME1##はその声を頼りに、重たい瞼を無理矢理持ち上げ目を開けた。


**********


「……ん……」


##NAME1##は目を開けて、視線をキョロキョロと辺りへ走らせた。

##NAME1##の枕元には、神威が椅子を持って来て座っていた。その神威は、分厚い書類を片手に、珍しくペンで何かを書き込んでいる。そんな神威に対して##NAME1##は驚いて、書類に何かを書き込んでいる最中の神威を見つめた。


「………か、む…い…?」
「っ、##NAME1##?」

名前を呼ばれた神威は書類からバッと目を上げ、目を覚ました##NAME1##を見て、ホッと息を吐いて目尻を緩々と下げた。


「お早う、良く寝たね〜」
「……俺、どうなってたんだ?」
「凄い高い熱だったんだよ。倒れてから丸五日も寝てたんだから」
「倒れた?俺がか?」

##NAME1##はまだ血液の充分に巡っていない頭をフル回転させ、自分が阿伏兎に話し掛けてから倒れたことを思い出した。


「……あぁ、確かそうだったな」
「気分はどうだい?」
「………。起きて直ぐに誰かさんの顔見たせいで、寝覚めが悪ィな」
「よぉ〜し、犯しちゃおっかな。今の##NAME1##弱ってるんだし、抵抗する力も弱いしね」
「冗談だ嘘だ悪かった止めてくれ。私、本気で死んじまう」


神威と##NAME1##は、いつも通りの言い合いをする。

それから一呼吸置いて、神威は書類を投げ出して、勢い良く椅子に反り返って伸びて体をほぐした。
その様子を見て##NAME1##は口を開く。


「お前が書類に目を通してるなんて、こんなに珍しいこともあるんだな。…にしてもお前がペンを握ってるなんざ似合わなさ過ぎるけど」
「仕方ないよ。##NAME1##宛の書類がどんどん溜まって、仕舞いに##NAME1##の机から雪崩れ落ちたんだから。##NAME1##が復帰したら、暫くは書類漬けだからね」
「………」

それを聞いた##NAME1##は、あからさまに嫌そうな顔をする。
神威は、そんな##NAME1##の顔をじっと見つめて言った。


「………##NAME1##、今日は復帰出来る?」
「………。あぁ、もう戻れる。書類の始末もやんなきゃなんねぇしな」


そう言う##NAME1##を、神威はじっと見つめた。
しかし##NAME1##の顔は、明らかにまだ火照っている。
要するに、神威が見た限りでは、##NAME1##はまだ本調子ではない。##NAME1##が無理をしようとしていることは、神威にはバレていた。


「………嘘付くなよ」
「嘘じゃねーよ」
「まだ顔が赤いよ」
「お前の目の錯覚だ。…お前、久しぶりに書類見つめてたせいで、目が疲れてんだろ」


すると##NAME1##は、剥きになって否定した。


──全く、なんて強情さだ…。


「なっ、なんだよ」

口での説得を諦めた神威は、実力行使に出た。
神威は##NAME1##の腕を引っ張り、自分の元へ寄せて、自分の額と##NAME1##の額とを強引に合わせた。


「?!」

その途端、##NAME1##は声にならない悲鳴を上げ、その顔は良く熟した林檎のように一気に赤くなった。


「………って、何が大丈夫なんだよ!まだ熱があるじゃないか!」


パッと額を離した神威は、##NAME1##に向かって怒鳴った。
しかし未だに、##NAME1##の顔は燃えるように赤く、しかも耳までが真っ赤になっている。幸い、神威はそれには気付いていない様子であった。


「明日まで寝てろよ。溜まってる仕事、俺が何とかするから」
「……大丈夫だ。どーせお前、仕事なんかせず阿伏兎に任せっきりなんだろ」
「失礼だな。俺は……阿伏兎のご飯を作ってあげたんだから」
「飯かよ」
「ご飯って言っても、態々地球から魚介類を取り寄せた海鮮料理だったんだからね」
「無駄に本格的だな。つーかお前料理出来たのか!なら毎日私に任せずに自分で作れよ!」
「嫌だ、##NAME1##の料理最高なんだもん!食べれなくなるなんて嫌だ!それに、料理していると昔ひもじい思いをしていた頃のことを思い出すから嫌なんだよ!」
「おい、ふざけるのも大概にしろよ!お前は駄々っ子か!お前だってもう良い大人じゃねーか!!」
「男はいつまで経っても少年なんだよ!!」
「うるせぇその口剥ぎ取ってやろうかこの十八禁野郎が!!」

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春風