赤兎 - 春風
懊悩焦慮

##NAME1##の部屋を出た神威は、阿伏兎と元老の元へと向かった。
すると、阿伏兎が神威に言いにくそうに口を開く。


「…団長」
「なんだい?」
「……さっき、元老から連絡が入ってだな…」
「うん。それが何?」


そして阿伏兎は決心して、その言葉を言った。


「……あの吉原に査定に入れ、との命令だ」
「………」

すると神威は、暫く沈黙して言った。


「…嫌だ」
「いや、まだ続きがあってだな―」
「俺には##NAME1##がいる。…態々そんなとこに行って女抱かなくったって──」
「って、んな話じゃねーよ!査定だって言っただろ、査定!」


阿伏兎は神威に怒鳴って、また再び言いにくそうに言った。


「…吉原を統べるトップが誰だか、知ってるか?」
「そんなこと知らないよ、興味ないしね」
「………」


阿伏兎が沈黙した。
神威は、いつもと様子の違う阿伏兎を、真剣な目で見つめる。


「……あの夜王…鳳仙だ」


ピクッ

阿伏兎の口から出たその名前を聞いた途端、神威は体を反応させて、その蒼い目が爛々と光った。


「………へぇ」

神威の口元は、やはり弧を描いた。
その笑みを見て阿伏兎は、予想通りではあった笑みではあるものの、思わず冷や汗を掻いた。

しかし。


「………オイ、二人して随分と楽しそうな話してんじゃねーか」
「「!!?」」


するといつの間にか、二人の背後に##NAME1##が立っていた。


「##NAME1##、寝てろって言っただろ!」
「お前が忘れ物してたからよ。ほらよ、コレ」

##NAME1##がそう言って神威に差し出したのは、神威が書類に書き込む時に使っていた万年筆だった。


「今から元老ん所に行くんだろ?団長がペン一本持ってねーでどうすんだ、馬鹿」
「…ありがとう」

神威は素直に受け取った。阿伏兎は一人ハラハラと二人の様子を見ている。

すると##NAME1##は不機嫌そうな顔で言った。


「俺が女だからって、行くのをためらってんのか?そんな情けなんかいらねーよ。とっくに女なんか捨てた身だ」
「ううん、##NAME1##は女だよ。可愛いしスタイルいいし巨乳だし──」
「黙れ!お前はいっつもそればっかりじゃねーか、変態スケベ万年笑顔野郎!」
「…ねぇ##NAME1##、今のそれ結構傷ついた。心にグサッと来た」
「知るか!」


##NAME1##はプイッと神威から顔を背けた。


「それに……」

すると##NAME1##は、一気に声のトーンを下げた。
その様子に阿伏兎は、また冷や汗をかいた。


「──夜王って呼ばれたくらい、夜兎の中で一番強い奴に、会ってみたいしな」


そう言う##NAME1##の口元も、やはり弧を描いていた。


「………本気で勘弁してくれよ…」


そんな二人の様子を見て、阿伏兎は盛大に溜め息を吐き、その頭を抱え込んだのだった。


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春風