赤兎 - 春風
流血淋漓

ガッ ドゴウ


阿伏兎が月詠の顔面を掴み、思い切り月詠を床に叩きつけた。辺りには乱暴な音が響き渡る。


「月詠さんんん!」


そんな爆音が響く中、##NAME1##はその様子をじっと見ていた。


──アイツ、死ぬのかな。


チャッ

阿伏兎は口のクナイを左手に持ち変え、その口に獣特有の獲物を捕らえた時の狂気染みた笑みを浮かべた。


ガキィィン

しかし、それを月詠が必死の面持ちでクナイで防いで叫ぶ。


「早く!!今のうちに逃げろ!!」


月詠はそう叫びながら、見事自分の足を阿伏兎の顔面に直撃させた。


「うわ、アレは阿伏兎もかなり痛ェだろーな…」


──結構、しぶといんだ。


##NAME1##は、自分でも知らず識らずのうちにホッと溜め息をついていた。自分と同じ地球人、しかも女という同性のせいか、月詠に少し情のようなものが湧いていたらしい。
しかしそれらを全て振り切るが如く、##NAME1##は云業に言い渡した。何しろこのままでは、標的をむざむざと逃してしまうことになる。


「よし云業、もう行け。…さっさと終わらせろ」
「了解」

##NAME1##の指示で、云業は傘を上に向けて、晴太らの逃亡を防ぐべく、発射の準備をした。


ドドドド


阿伏兎が戦っている最中だったが、云業が他の連中に向けて攻撃を始めた。


「なっ、下から…」


ドドド ゴ ドォウ


銀髪の侍は晴太を背中に守り弾丸を避けるが、地面から突き出された傘による攻撃をまともに腹に攻撃を食らう。ガハッと勢い良く口から喀血された血が、辺りを汚した。夜兎の力には人間は到底敵わないのであるから当然であるが、そう割り切るには余りにも呆気ない。


「銀ちゃんん!!」


ズシ オォオォオオ


そして、云業が姿を見せた。地鳴りがして、その登場は余計に重く感じられる。


「夜兎が二人!!」


――違ェよ、まだ残ってんぞ………。


「放せっ!!」


バタバタ


見ると、云業が晴太の襟首を掴んでいた。晴太は手足を使って力一杯盛大に暴れてみせるが、云業はその抵抗を物ともしない。


「晴太ァァ!!」


##NAME1##は、一人上で起こっている出来事を傍観していた。

すると、そこに―……


「##NAME1##」
「っ!?」


――いつの間にか##NAME1##の隣には神威がいた。神威は、いつもの様に顔に笑みを張り付けている。


「………あの夜兎、知り合いなのか?」
「うん、予想通り俺の妹だった。もう、縁も情も何も、残っちゃあいないけどネ。##NAME1##、君と一緒だ」
「………」


そう言うと、神威は傘を肩に担ぎ戦闘体制に入った。


「だけどね…弱いんだ、アイツ。弱い夜兎なんて邪魔なだけ。俺には必要じゃない。だから、ちょっと……潰して来るヨ」


神威はそう言うと、不敵な笑みと共に##NAME1##の前から一瞬で姿を消した。


「晴太ァァァ!!」


――アンタを最悪の獣が狙ってんぞ、神威の妹さんよォ。


##NAME1##は心の中で、神楽に対し忠告をした。


ダッ


神威の妹は、高下駄を乱雑に脱ぎ捨て、晴太を掴んでいる云業に、傘を構えて駆けた。

そこに―………


「邪魔だ。どいてくれよ」


――神威の声が聞こえた。その声には、何故か戦慄を覚えさせられた。兄妹に向ける声にしては、余りにも冷たい声だ。


「言ったはずだ。弱い奴に、用はないって」
「…にっ…」


神楽の返事を待たずに神威の傘は降り下ろされ、その衝撃で配管は不吉な音を上げて、破壊された。


ゴゴゴ ドゴォ ガゴォ

ズゴゴ ズズゥン ゴゴゴゴ


破壊された配管からは、むせかえるような土煙が舞う。

そこで##NAME1##は、残った配管の中から、ヒョイッと上へ移動する。晴太は、四つん這いでガクガクと震えながら下を見ていた。


「ぎ…銀さんんん!!みんなァァ!!」


――これは生きてるな。


しかし、##NAME1##は気付いていた。先の四人らがまだ生きていることに。
しかし、敢えてそれを口に出そうとはしなかった。


「やり過ぎたかね。うるせーじーさんにどやされそうだ」
「大丈夫だよ。鳳仙の旦那はこんな街より花魁様にご執心だ」
「だろーな。もしも何か言って来たら、俺が色仕掛けで誤魔化してやる」


その言葉に、思わず神威は目を剥いた。


「は?駄目だよ、##NAME1##。色仕掛けとか、俺にしかしちゃ駄目だろ」
「黙れふざけろ」
「あーあーもう喧嘩は止めろ!」


見兼ねた阿伏兎がタイミング良く仲介に入った。


「それに、態々##NAME1##がそんなことする必要ないよ。この子を連れていけば機嫌も直る。それにこれ位やらなきゃ死ぬ奴じゃないんでね」
「知り合いでもいたか?」


そこで神威はちらりと##NAME1##を見た。##NAME1##は、さっきのことはなかったかのように平然としている。


「いや、もう関係ないや」


その言葉を聞いても、##NAME1##に反応は見られなかった。

まるで、無関心であるかのように。自分には関係が無い、どうでもいいと言うが如くに、##NAME1##は無反応であった。

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春風