赤兎 - 春風
竜闘虎争

破壊された壁から、二人は建物外へと飛び出した。


「おおおおお」


目にも止まらぬスピードで、ズガガガガガまるでドリルが強硬な岩肌を抉るような音を立てて、連続して激突し合う拳と拳。そして遂には、ガゴっという物凄い音と共にお互いの拳がお互いの顔にめり込んだ。しかし二人はそんなことを気に掛けもしない。


ガシャァァァ


一旦両者は飛び下がって後退し、再び戦闘を再開させようとしていた。

しかし―……


「団長、やめろ!!俺達の目的を忘れたか」
「よせ!!云業」


――そんな中、云業が乱闘を停止させようという無茶なことをしようと試みた。阿伏兎が制止の声を掛けるが、云業は耳を貸そうとしない。


「団…」


云業は神威へと手を延ばした。

しかし―……


「!!」


めこ パラパラ


――神威は、邪魔だとばかりに、云業を足で蹴り下へめり込ませた。


「ひっこんでてよ。今、楽しいところなんだ。邪魔すると、殺しちゃうぞ」


すると神威は、顔に笑みを張り付けて云業を見た。その笑顔は、溢れんばかりの殺意に満ちている。


「団長ォォ!!」


云業は叫んだが、神威は振り向きもしなかった。


「言わんこっちゃねェ。あーまた始まっちゃったよ、団長の悪いクセが」


その様子を見ていた阿伏兎は、呆れた声を発した。


ゴゴゴゴ ドウ


神威は、尚も戦闘を続けた。神威は土煙の中から姿を現し、鳳仙に蹴りを仕掛ける。


「ああなるともう誰にも止められねェ」


――いや、いる。まだ可能性を持っている人物は、神威、阿伏兎自身の身近にいる。


しかし―……


「あーあ。##NAME1##の奴、一体どこに行ったんだ……」


――##NAME1##なら、止めることが出来るかもしれない。


その人物とは、まさに##NAME1##だった。
その実力で神威の補佐という立場にのし上がり、普段から神威との喧嘩を繰り返している##NAME1##。この騒音を聞けば間違いなく異変に気が付き、この場に駆け付ける筈だというのにも拘わらず。

しかし何故か、##NAME1##はこの乱闘の場にはいなかった。



- 続 -

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春風