赤兎 - 春風
煩悩具足

晴太は、内心ずっと月詠や万事屋一行のことを気にしていた。##NAME1##は、そんな晴太の心を読み取ったのか、握り飯を口に頬張る晴太の横で呟いた。


「…大丈夫だ。お前の仲間のあの四人、アイツらは生きている」
「ふぉ、ふぉんふぉひ!?(ホ、ホントに!?)」
「馬鹿、口の中をなくしてから喋れ。米粒を飛ばすな、汚いだろ」

敵味方の隔たりも一切関係ない何とも微笑ましいやり取りをした後、##NAME1##は続けた。


「あぁ。月詠とかいうあの花魁が、なかなか機転を効きかせてな。流石は百華頭領だ」


##NAME1##は素直に褒めた。晴太は手にお握りを持ちながら、思い切って##NAME1##に問いかけた。


「あのさ……」
「ん?」


その後された質問は、##NAME1##にとって相当難しいものだった。


「…お姉ちゃんは、なんでアイツらと一緒にいるの?」
「………。成り行き」
「どんな成り行きィ!?」


晴太は、何とも適当過ぎる##NAME1##の返答につっこんだ。すると##NAME1##は、真剣な目をして晴太を見つめ、問いを反転させた。


「何でそんなことを聞く?」
「いや。お姉ちゃんは、あの、その……」


晴太は暫く迷った後、小さく呟いた。


──気を悪くしちゃうかな……。


「アイツらと違って、や、優しいから……」
「ッ!!」


──優しい。


##NAME1##は、思わず目を見開いた。そんな形容詞が、長い間自分に使われたことなどはなかったのだ。


「私が、優しい?……私はこの手で、たくさん人を殺して来てるんだ。お前たちが憎むべき、ただの人殺しさ」
「でも、優しくなきゃオイラにお握りなんてくれないよ。…オイラ、分かるよ。お姉ちゃんは、優しいよ」
「………」


##NAME1##は再び口を閉ざした。
そして、沈黙に耐えられなくなったのか、冗談めかして言った。


「……それはお前の作った飯なんてもうこれ以上食えるかってゆー無言の抵抗か?」
「いや今のどこをどう取ったらそんな解釈になるんだよ!!?」
「でも、まぁ──」


──ありがとう。優しいなんて言われたの、もうここ最近なかったから。


##NAME1##はそう言い、優しく晴太を見つめ小さく微笑んだ。


「っ///!」


晴太が初めて見る、##NAME1##の微笑だった。


―――やっぱり………綺麗だ。


そしてそれと同時に、再び晴太は思ったのだった。


──この人は、笑顔が似合うのに。ずっと笑っていたらきっと、今以上にもっともっと、綺麗なのに。

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春風