赤兎 - 春風
青天霹靂

「やぁっ!お侍様、止めて下さいっ!」
「良いじゃねーかァ。俺ら攘夷浪士様のお相手ぐらい、自ら進んでしてくれよ」
「オイ、そっちの脚押さえろ!」
「キャアッ!だ、誰か、誰か助けてぇ!!」


##NAME1##が大通りを歩いていると、何人かが揉め合う声が聞こえて来た##NAME1##はピタリと足を止め、声の聞こえた方へ視線を向ける。

その路地裏では、薄汚い格好をした男五人が、仕立ての良い着物を着た二十代ぐらいの若い女の体を寄って集って押さえ付けていた。
それを一瞥して顔を顰めた##NAME1##は軽く舌打ちすると、ゆっくりとそこに近付いて男らに声を掛けた。


「…お前ら、ここで一体何してやがる」
「あぁ、んだよ?…って、オイ、こっちにもっと上玉が来たぞ!」


##NAME1##が声を掛けると男は面倒臭そうに顔を顰めたものの、その頭から爪先まで好色な目で見ると、思わず歓声を上げた。下劣極りない。

しかし何しろ##NAME1##は、歩いていると思わず誰しもが振り返る程の美少女だ──その容姿の下に、平気で何トンものショベルカーを投げ飛ばして粉々にする程の恐ろしい力を持っているとは、誰もが想像もしないが。


「ククッ、お嬢ちゃん。俺らは今この女を気持ち良くしてやろうとしてるんだよ?」
「我等に声を掛けたのが運の尽きってもんさ…お嬢ちゃんも気持ち良くシてやるよ!!」


そんなことはいざ知らず##NAME1##の本当の姿を知らない浪士等は、##NAME1##を掴み押し倒そうと襲い掛かった。

しかし─……


「「「!?」」」


──刹那、##NAME1##の姿が消えた。


「消えた!」
「な、あ、あの女ど、どこにいった!?」
「ここだ」
「「「は!?」」」


##NAME1##はいつの間にか、浪士等の背後の女の傍に立っていた。
そして女を押さえ付けていた浪士を乱暴に引き剥がし、女の手を引いて耳元に口を寄せてで囁いた。


「さっさと行け。もう二度と捕ったりするなよ。路地裏なんて、女が一人で歩くもんじゃない」
「あ、ありがとうございます…!」


##NAME1##の一計により助かった女は、助かったことに目に涙を浮かべ、##NAME1##に向かって頭を何度も下げつつ走って路地裏から姿を消した。

女の背を横目で見送りつつもその場に残った##NAME1##は、余裕ある緩慢な様子で浪士等に向き直り嘲笑して言った。


「ハッ、攘夷浪士が聞いて呆れるな?女に飢えてるんなら遊郭にでも行って女買ってれば良いだろ」
「ど、どこでどんな女を抱こうが、お前等には関係ない!」
「それより貴様、女だろう?その口の聞き方はあまりだが…顔と身体は極上品じゃないか」


浪士五人は、顔を見合わせニヤリとした。
対する##NAME1##は、恐ろしいまでの無表情である。


「少し我々に奉仕をして貰おうか」
「邪魔して挙句に女を逃がしたんだ、罪は償って貰わないとなァ。…身体で、な!」


──そして、当初のこの有り様になっていたのだ。


##NAME1##は瞬く間に、その浪士三人を瞬殺した。心臓を、手で突き刺して。



**********


とある川原にて。爽やかな風が頬を撫でる心地良い気候の中、武装警察真選組一番隊隊長沖田総悟は、アイマスクを付けて昼寝と言う名のサボりの真っ最中であった。


「お、沖田隊長!」

しかしそこに、山崎が血相を変えて走って来た。けれども沖田はアイマスクをしているため、山崎の表情は見えない。アイマスクを浮かせるだけで、外そうともしなかった。


「……うっせーや、何でィ」
「大通りの路地裏に、攘夷浪士五人の目撃情報がありまして―」
「は?五人ぐらい、俺なしでも何とかしやがれ。俺は眠てェんでさァ」


しかし沖田は自分勝手な理由で山崎を振り払い、再び寝る体制に入ってしまう。


「お、沖田隊長、違うんです!大切なのはそれじゃなくて……」


しかし山崎は、何かを言い掛けたものの黙り込んだ。
沖田はそれを不審に思い、アイマスクを取って体を起こして山崎を見た。


「…何でさァ、ウジウジと。はっきり言いやがれ」
「それが……」


山崎は顔に冷や汗を浮かべて、ゆっくりと言った。


「…その浪士等を、物ともせず殺している少女がいるそうなんです」
「………」


となると、話が違って来る。
そう判断した沖田は、傍らの刀を掴んだ。


「…急いで近藤さんらに連絡しろ。一番隊出動する」
「はい!」


待機していた一番隊士に声を掛けて、山崎に言ったのであった。


「そこへ案内しろィ」

──彼、沖田総悟はこの後に、衝撃的な再会を果たすなど、予想だにもしていなかった。

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春風