黒髪のウィーズリー成長記 - 春風
新しい友人

「ラン、あなたさっきからずっと何悩んでいるのよ。せっかくの休日くらい、少しは頭を休めたら?」

朝食を食べ終わるなり、羽根ペンを片手に羊皮紙に向かい出したランに、パドマは呆れたように言った。朝に弱いアマンダは、休日にまで早起きをするだなんてとんでもないということで、まだベッドの中で惰眠を貪っている。

「…両親に書く手紙の内容が決まらないの」

丁度その時、郵便が届いた。何百羽というふくろうが突然窓から大広間へ雪崩れ込んで来て、テーブルの上を旋回し、飼い主や届け主を見つけると手紙や小包をその膝に落としていく。
ランが手紙に云々と頭を悩ませていると、その羊皮紙の上にパサッと封筒が落とされ、ぱちくりと瞬きをした。そんなランの右肩に、薄茶色に濃い茶褐色が混じった羽色をした大柄な梟が留まる。

「…あなたが届けてくれたのね。ありがとう」
そう言ってランが梟の顎下を撫でると、梟はホッホッと気持ち良さそうに鳴いた。立派な羽角と鮮明な橙色の目が特徴的だ。

ランが封筒の宛名を見ると、見覚えのある字体でランの名前が書かれていた。差出人に心当たりがあるランが封筒を開封すると、そこには羊皮紙が入っていた。

親愛なるラン・ウィーズリー様


ラン、ホグワーツ入学おめでとう。元気にしているかい?

授業は、君なら上手くこなしているだろうね。きっと、今頃あのややこしい階段に嫌気が指してきたころかな。私が一年生だった頃、授業開始から三十分経っても教室に到着できなかったことを今でも鮮明に思い出すよ。

レイブンクローはとても良い寮だよ。個性派で自己中心的という人もいるけれど、それは知識に貪欲だからこそだと私は思う。“機知と叡智に優れた者が集う寮”なのだから、もしかすると、聡明な君がレイブンクローへ入るのは当然のことだったのかもしれないね。私は君ほどに勉強熱心な魔女を知らない。

だから、モリーとアーサーの二人の元へも、早くふくろう便を送ってあげるといい。二人はランのことを誇りに思うさ、私が保証するよ。私の予想が正しければ、きっと今頃、君からの手紙を今か今かと首を長くして楽しみに待っていることだろう。

リーマス・ルーピン

P.S.その梟は私からの入学祝いだよ。ユーラシアワシミミズクという、とても大きく成長するワシミミズクで、まだ子どもで人懐っこい性格だ。可愛がってあげてくれ。


「まあ!」
驚きの余り思わず大きな声を上げたランに、パドマがびくりと肩を揺らした。

「ビックリするじゃない!どうしたの?」
「驚かせてごめんなさい。…予期せぬ可愛いプレゼントを貰っちゃったの」

ランが右肩のユーラシアワシミミズクの頭を撫でると、ワシミミズクは気持ち良さそうにその掌に頬擦りをした。

ルーピンからの激励の手紙に少し勇気が出たランは、そこからすらすらと羽根ペンを進めることができたのであった。

*****

長旅をしてきたこのユーラシアワシミミズクを休ませてあげようと、ランは上級生に場所を尋ねて、梟小屋へと足を運んだ。学校の郵便配達用ふくろうと、生徒のふくろうが飼われている、ホグワーツ西塔のてっぺんにある円筒型の石造りの小屋らしい。
ランはホグワーツに来てから一度ルーピンに手紙を送ったが、ふくろう小屋に行くのは初めてであった。出来上がった三つの手紙を送るのにも丁度いいと思った。


「あなたの名前、どうしようか…」
ランがワシミミズクの名前を考えながら階段を上っていると、石畳の広場に辿り着いた。

「!!」
──そこには、既に先客がいた。

「あれ…?君は、確か新入生だよね」

青年がランを振り返って、目を丸くする。灰色の穏やかな瞳に茶色の髪、背が高く非常にハンサムな青年であった。

「…はい。手紙を、出そうと思って」
「そうなんだね。僕もちょうど両親に手紙を送ったところなんだ」
そう言って微笑んだ彼に、ランも自然と笑い返した。ネクタイの色から察するに、ハッフルパフ生であろう。
ランは彼に手を差し出した。

「私、ラン・ウィーズリー。あなたは?」
「僕はセドリック・ディゴリー。ハッフルパフの三年生だよ、宜しく。……というと、君、あのウィーズリー家の子かい?」
「…ええ、そうよ」

赤毛ではなく、そばかすもない──ウィーズリー家の特徴が何一つとしてない自分は、どう見てもそうは思えないのであろうと、ランは内心溜め息を吐いた。

「驚いたな。──こんなに可愛らしい子が、あの双子のウィーズリーの妹だなんて」
「!!」

そう言って微笑んだセドリックに、ランはパッと顔を上げて、彼の顔をマジマジと見つめた。


「……ありがとう」

ランはそう言って、嬉しそうにちょっとだけ微笑んだ。その頬は少しだけ赤く染まっていた。

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春風