黒髪のウィーズリー成長記 - 春風
仲直り

ランと仲直りをしたハリーとロン、ハーマイオニーは、幾分か気分が楽になった。

ハーマイオニーは、野生トロールから助けて貰って以来規則を破ることに少しは寛大になり、お陰で随分と優しくなっていた。ハリーのデビュー戦の前日のこと、三人は休み時間に凍り付くような中庭に出ていた。ハーマイオニーは魔法で鮮やかな青の火を出してくれた。ジャムの空き瓶に入れて持ち運びができる火であった。火を背中にあてて温まっていると、スネイプがやって来た。
──片脚を引き摺っていることにハリーは直ぐに気が付いた。火は禁止されているに違いないと思い、三人は火がスネイプから見えないようにピッタリとくっ付いた。だが不覚にも、さも悪さをしているような顔付きが、スネイプの目に留まってしまった。スネイプが脚を引き摺りながら近付いてきた。火は見つからなかったが、何か小言を言う口実を探しているようであった。

「ポッター、そこに持っているものは何かね?」
ハリーは、ハーマイオニーが貸してくれた『クィディッチ今昔』を渋々と差し出した。

「図書館の本は郊外に持ち出してはならん。寄越しなさい、グリフィンフォール五点減点」
スネイプが行ってしまうと、「規則をでっち上げたんだ」とハリーは怒ってブツブツ文句を言った。

「だけど、あの脚はどうしたんだろう?」
「知るもんか。でも、物凄く痛いといいよな」
ハリーと同じように、ロンも顔を歪めて悔しがった。

*****
その夜、グリフィンドールの談話室は騒々しかった。ハリー、ロン、ハーマイオニーは一緒に窓際に座って、ハーマイオニーがハリーとロンの呪文の宿題をチェックしていた。「それじゃ覚えないでしょ?」と答えを丸写しさせてくれはしなかったが、宿題に目を通してくれるように頼めば、結局は正しい答えを教えて貰うことになった。
ハリーは落ち着かなかった。クィディッチ今昔を返して貰い、試合のことで昂る神経を本を読んで紛らわしたかった。

──何で、スネイプをそんなに怖がらなくちゃいけないんだ?
そう息巻いたハリーは立ち上がり、本を返して貰ってくると二人に宣言した。

「一人で大丈夫?」
二人は口を揃えて心配そうに言った。けれど、ハリーには勝算があった。他の先生が傍にいたら、スネイプも断れないだろう。

談話室から廊下を早足で歩いて行って、ハリーは職員室の扉をノックした。…答えがない。もう一度ノックする。しかし、やはり反応がない。
スネイプが中に本を置きっ放しにしているかもしれないと、ハリーは覗いてみる価値があると考えた。扉を開けて中を窺うと、とんでもない光景が目に飛び込んできた。
中には、スネイプとフィルチだけしかいない。スネイプはガウンを膝までたくし上げている──片方の脚がズタズタになって血だらけだ。フィルチがスネイプに包帯を渡していた。

「忌々しい奴だ…。三つの頭に同時に注意するなんて…」
スネイプがそう言うのが微かに聞こえた。ハリーは自分の心臓が、今にも破裂せんばかりにドクドクと鼓動していることが分かった。
ハリーはそっと扉を閉めようとした。しかし……。

「ポッター!!」
スネイプは怒りに顔を歪め、急いでガウンを降ろして脚を隠した。
「ほ、本を返して貰えたらと思って」
ハリーはゴクリと唾を飲んだ。

「出て行け、失せろ!!」
スネイプがグリフィンドールを減点しないうちに、ハリーは寮までを全速力で駆け戻った。

「返して貰った?…どうかしたのかい?」
戻って来たハリーにロンが声を掛けた。ハリーは今見て来たことをヒソヒソ声で二人に話した。

「分かるだろう、どういう意味か」
ハリーは息も吐かずに興奮気味に話した。

「スネイプはきっとハロウィーンの日、三頭犬の裏を掻こうとしたんだ。僕たちが見たのはそこへ行く途中だったんだよ──あの犬が守っているものを狙っているんだ。トロールは絶対あいつが入れたんだ。皆の注目を逸らすために……箒を賭けてもいい」
「違う。そんなはずないわ」
ハーマイオニーは目を見開いて言った。

「確かに意地悪だけど、ダンブルドアが守っているものを盗もうとする人ではないわ」
「おめでたいよ、君は。先生は皆聖人だとでも思っているんだろう?」
ロンはピシャリと手厳しく言った。

「僕はハリーと同じ考えだな。スネイプなら遣りかねないよ。だけど、何を狙っているんだろう?あの犬、何を守っているんだろう?」

その夜、ハリーはベッドに入ってもロンと同じ疑問が頭の中でグルグル回っていた。ネビルは大鼾を掻いていたが、ハリーは眠れなかった。何も考えないようにしよう──眠らなきゃ。後数時間でクィディッチの初試合なんだから──しかし、ハリーに脚を見られた時のスネイプのあの表情は、そう簡単には忘れられはしなかった。


- 続 -

- 5 / 5 -
春風