黒髪のウィーズリー成長記 - 春風
仲直り

あの後ランは、梟小屋からまるでスキップでもしそうな勢いで階段を駆け降りて、艶やかな黒髪を風に靡かせて大広間へと走った。

「…ッ、パドマ!アマンダ!」
大広間に全速力で飛び込むと、パドマとアマンダのみならず、そこにいたたくさんの生徒をランは驚かせた。いつも冷静で物静かなラン・ウィーズリーが、色白の頬をほんのりと紅潮をさせて満面の笑みを浮かべているのである。目を引くのも当然であった──尤も、物静かというのは完全にその見目に騙されていて、本人は実はかなり好戦的の性格であることは、親しい間柄の人間にしか知られていないことである。

「あのね…私、ロンたちと仲直りできたわ!」
「!!」
興奮して叫ぶランに、パドマとアマンダが目を見合わせる。

──やっと、だ。
ランの報告に、二人はにっこりと笑った。

「本当に良かったわね」
「もう、これで私も安心できるわ…」
心底ほっとしたように肩を撫で下ろす二人に、ランは改めてお礼を言った。
パドマはランに座るように促すと、アマンダはランへとライスプディングを山盛り大皿によそって渡した。

「ちょっとアマンダ、私こんなに食べられないわよ…」
「今日くらいちゃんと食べなさいよ!あなたデザート食べないんだから、これくらい食べたって太りやしないわ!」
アマンダにそう諭されてランは渋々とスプーンで掬って口へと運んだ。

「今晩はランにも私の話に付き合ってもらうわよ!私、ちょっと気になる人ができたの」
「えっ!そんな話私聞いてないわよ!」
「でも私、恋愛について何もアドバイスなんてできないけど…」
「「そんなこと分かってるわよ」」

声を揃えてそう言った二人はどうにも理不尽であったが、今日くらいはいいかと思ったランはそっと頬を綻ばせた。心配と迷惑を掛けていた自覚は充分にあったからだ。

*****
コンッ
「?」

爽やかでかなり肌寒い朝のことである。日課であるホットチョコレートを飲んで一息を付いていたルーピンが窓を叩く微かな音に気が付いて外を見やると、見覚えのあるワシミミズクがそこにいた。橙色の大きな瞳でルーピンの方を見据えており、ホッホッと鳴いている。
ルーピンがカーテンを寄せて窓を開けると、薄茶色に濃い茶褐色が混じった羽色が特徴的な大柄な梟が、バサバサと大きく羽ばたいて部屋へと入ってその肩に留まる。
その顎下を撫でて梟が咥えていた手紙を受け取ると、梟は羽繕いを始めた。

「…久し振り。大きくなったね」
その手触りの良い頭を撫でると、梟は気持ち良さそうに目を細める。ルーピンは手紙を丁寧に開封した。

親愛なるリーマス・ルーピン様


こんにちは。お変わりありませんか?お元気であることをお祈りしております。
あれからあなたの顔色は良くなったかしら…?私、今でも度々気になっているの。体は大切にしてね。

そして、たくさん何度も相談に乗ってくれて、本当にありがとう。
ご報告させて貰います──私、ロン達と仲直りができたの。つい先程のことよ。

あのね、彼等は本当に凄いわ。私が色々と情けなく悩んでいる間に、私を探して梟小屋まで全力疾走をしてきたの。
友達から聞いたんだけれど、レイブンクローの寮の前で随分と待ち惚けを食らわせちゃったみたい。悪いことをしちゃったわ…。
色々と相談に乗ってくれて、本当にありがとう。

授業は、実技をする機会が徐々に増えてきて、とても楽しいわ。
けれど、ビンズ先生の授業は相変わらずなの。私、この前の授業で五百頁もある本を読み終えちゃった。
『通常の呪いとその逆呪い概論』は最高に面白かったわ!またお薦めの本を教えてくれるかしら…?

ちゃんとお食事と睡眠は取ってね。お身体には本当に!本当に気を付けて過ごしてね。

ラン・ウィーズリー

P.S.その子の名前はフェルナンド、フェルって呼んでいるわ。これから宜しくね!


「フェルナンド…勇敢な冒険家、だったかな」

ルーピンが皿に水を入れて机に置くと、フェルは嘴で突っついて飲み始めた。
頬杖を付いて、少し癖のある筆記体が並ぶ手紙を眺める。──フェル、立派な名前だ。
ルーピンは手紙を大切そうに丁寧に折り畳み、封筒へとそっと戻した。早速ランへの返信を書くために、羊皮紙と羽根ペンを取り出して、本棚へと足を運んだ──知識に関して貪欲な年下の友人へ、お薦めの本を選別する為に。

- 4 / 5 -
春風