とある訓練兵Aについての周囲の考察 - 春風
無意識に気になる例のあの子

あれから僕は、無意識の内に例のあの子を視界の中で探すようになっていた。そして彼女をひっそりと観察している内に、彼女が常に一人で過ごしていることや、彼女が座学の成績に秀でていること等が分かって来た。人よりもかなり劣る僕の観察眼を以ってしても、彼女のことを知ることは不可能ではなかったのだ。それがあくまでも、表面上の彼女であったとしても。
僕の知る彼女は、(この僕が言うのも何だけど)少し地味で物静かな、優しい女の子だ。そうでなければ、あんなに優しくて穏やかな声をしている筈がない。


「(そんなに警戒すべき子には、どうしても思えないんだけどな…)」


多分ライナーには、僕には見えていないことが見えているのだと思う。
これ以上考えた所で答えは出やしないだろうと判断して、読んでいた本を置いて布団に潜り込む。

ゴソゴソという物音の後に、ガチャリと扉を開く音がする。誰かが部屋を出て行ったのが分かった。その記憶を最後に、深い闇へと意識を飛ばしたのだった。


「(…嗚呼)」


――僕が闇にいるのは、元からか。

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春風