とある訓練兵Aについての周囲の考察 - 春風
胸中の疑問と立ち込める暗雲

「ラン、おはよう。相変わらず早いね」
「…おはよう、アルミン。…私は別に、特に何も意識してない」
「そうか。早起きはもうランの習慣になっているもんね」


図書館で座学のレポートの本を探していると、そう会話する声が聞こえた。すると、さっきまで僕の頭はレポートの構成で頭がいっぱいだったと言うのに、それが全て吹っ飛んでしまった。そして、そんな動揺している自分にまた焦って、手に持っていた分厚い2冊の本を床へぶち撒けてしまう。終いには、“ベルトルト・フーバー”と自分の名前の書かれたレポートの表紙を、力任せにぐしゃりと握り締めてしまった。
…嗚呼。一体僕は何故、こうなってしまうんだろうか。

好きだ。好きなんだ…あの子の、声が。さらりとした質感でいてベタつかない、キンキンとした高さを持たない声。こんな表現を声という無形の物質に当て嵌めるなんて可笑しいのかなって少し思うけれど、それでも僕はこれが何よりも的を射ていると思う。
日溜まりの中の膝枕で、あの声で子守歌なんて歌って貰えた日には…もう、本当に、最高なんだろうなぁ…。


「…ッ!!」


そこでハッと我に返り、思わず自分の口元を抑える。
ちょっと待て。一体全体、何てことを考えているんだ、僕。


「……ハァ…」


好きなのが声だけではないのかは、僕自身にも分からないのだ。
ライナーがクリスタのことを天使というのとは少し違う気がする…と言うよりも一緒にして欲しくはない。断じて僕はあんなのではない、筈なのだ…。

彼女の眼鏡の下の顔を見てみたい。本当に何となく、ただぼんやりとそう思った。

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春風