とある訓練兵Aについての周囲の考察 - 春風
胸中の疑問と立ち込める暗雲

すると、二人の会話が耳に入って来た。と言うよりも、僕が勝手に耳をそばだてた。


「アルミン。昨日教官から返却されたレポート、見せて欲しい」
「うん、勿論良いよ。…でもどうしてだい?ランはあのレポート、凄く良い評価を貰っていたよね」
「点数は良かったけれど…後から見直すと、もう少し付け加えることが出来た箇所があって。…アルミンならそれを書いているだろうから、答え合わせ」
「そっか。それなら僕も隣でそれを見せて貰っても良いかな?ランの答案にも興味があるし」
「いいよ」


何とも仲良さ気なそんな会話に、どす黒い何かが自分の腹の中を渦を巻いているのが分かる。決して綺麗だとは言えない感情が、腹の底を蠢く。
すると、遠くのグループからこんな声が聞こえて来た。


「…おい、あれ見ろよ」
「嫌われ者のランが、まさかアルミンと過ごしているなんてなぁ?」
「アルミンの奴だって、お情けで声掛けてやってんだろうよ。じゃねーとあんな奴の相手なんて、態々しねーっての」


しかしそんな悪意満載の会話に対しても、二人はまず聞こえていないのか、何処吹く風だ。


「………」


自分の気持ちさえもはっきりとしない僕自身を、僕は心底嫌悪するのであった。

その後も彼等の下らない会話に気を取られてしまっていた僕は、いつの間にかいなくなっていたランの存在に気が付かず、それに気付いてまた落ち込んだ。

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春風