とある訓練兵Aについての周囲の考察 - 春風
偶然知ってしまった素顔

「(訳分かんねェッ!何で、何で…!)」


何でだ、何でなんだ。
俺は、廊下を疾走していた。途中擦れ違い様に何人かが声を掛けて来た気がするが、悪いが今はそれ所じゃねぇ。今は、この混乱状態にある俺の脳内を整理することが、何よりの最優先事項だ。


「何だよ…!アイツ、あんな顔してんのかよ…!」

不気味だ?気持ち悪い?誰だ、んな出鱈目なこと言った奴!


「くっそ…ッ…」


嗚呼、絶対に見てはいけないものを見てしまった気がする。
ただの、女の顔じゃねーか。ただそれが…想像以上に無邪気で、想像以上に、可愛かっただけだ。そう、ただそれだけの話だ。…だが、納得が行かない。

図書館からは大分離れた人の気配のない場所に辿り着いたことを確認して、壁に背を預けて、そのままズルズルと座り込む。


「ハッ…ハッ、意味分かんねぇ……」


さっき顔を覗き込んでしまった俺も。こんなにみっともないぐらいに息が切れ切れになるまで、全速力で走ってあそこから逃げ出した俺も。こんなにも動揺している俺も。こんなにも後悔している俺も。こんなにも顔に熱が昇っている俺も。
ホント、どうしたんだよ、俺。


「ホント、何なんだよ…」


頭を抱え込んで、ガリガリと掻き毟る。

課題を終わらせる気なんて、当の前に失せてしまっていた。

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春風