君の鼓動と僕の鼓動 - 春風



「千鶴、私勝ったよ。優勝だった」
『ホ、ホントに!?凄い、凄いよ蘭ちゃん!』
「あの、そんなに喜ばなくったって……」
『ううん、喜ばずにはいられないよ!またお祝いしようね!』
「いいよ、わざわざ悪いし」
『私がしたいの!ね?お祝いしよう!』


受話器の向こうで、まるで自分のことように喜んでくれる千鶴に頬が緩む。こんなに喜んでくれるんだもの、ホントに勝てて良かったと思う。


「じゃあね千鶴。また後でメールするから」
『ううん、蘭ちゃん疲れてるんだからいいよ!私、蘭ちゃんの声聞けて嬉しかった!とにかく、ホントにおめでとう!』
「ありがと。私も嬉しいよ」


千鶴にお礼を言って通話を切る。
やっぱり千鶴はいい子だ、一緒にいて疲れない。ぼうっとそんなことを考えながら、私はとにかく更衣室に向かおうとした。


「ねぇ」
「!?」


――誰?この声は…。


不意に聞こえた声に竹刀を片手に慌てて振り返ると、背後にはあの沖田が立っていた。
何で。薄桜鬼学園は今回の試合には出場していない筈なのに、何でこの男がここにいるんだ。


「やだな、そんなに怖い目しないでよ」
「……私、あなたに用はないから」
「悪いけど、僕にはあるの」


意味が分からない。

もしや千鶴に謝る気になったのかと思い問うが、どうやらその気は全くもってないらしい。嗚呼もう、ホントに、つくづく自分勝手で嫌な奴だと思う。
何で私に付き纏ってくるのかも分からない。もしかして…千鶴と寄りを戻そうとしているのかも。


「試合見てたよ。……君も、剣道やってたんだね」
「…そうだけど、悪い?」


冷たく睨み付けると、困ったように眉を下げて笑う沖田。

あぁ、千鶴はこの顔に捕まってしまったんだろうな、何て容易に予想が出来てしまう。この私の予想は大抵正しいものだから、更に質が悪いんだよね。


「…特に用がないんなら、私はこれで」
「っ、待ってよ」


足早に沖田の横を通り過ぎようとしたけど、掴まれてしまう二の腕。勿論、剣道をしているということを知られたことに腹が立つけど、無粋に掴まれたそれにも酷く腹が立つ。
私は反射的に、沖田の手を乱暴に振り払った。


「……っ…」


私によって振り払われた手に、沖田の顔が少し悲しそうに見えたのは、私の気のせいだろう。
だって、こんな血も涙も無い男に限って、そんなこと有り得ないもの。


「…私は、あなたが嫌い。千鶴を傷付けておきながら、そんなに飄々としてられるあなたが嫌いなの」


私がそう言うと、沖田の顔が少し歪められる。


そう、私のことを憎めばいいんだ。その代わりに、千鶴を愛しく思ってよ。
だってあの子は、まだあなたが大好きなんだから。

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春風