君の鼓動と僕の鼓動 - 春風



「あ……」


いた。
我ながらつくづく見つけるのが早いと思うよ。これも恋の力ってやつなのかも。


「来たんだ…」


運動場のテニスコート。因みに僕はその隣のグラウンドで、授業の合間の休憩も兼ねて、他のチームのサッカーの試合を観戦している。

テニスコートでは、女の子の甲高い歓声が上がっている。どうやら女子二クラス対抗でのダブルスをしているらしい。


「いけっ、蘭ちゃん!」
「蘭、頑張れー!」


その注目を浴びている張本人を見つめた。白くて細い手足が、コートの緑色に映える。


パァンッ!!


すると、蘭ちゃんの勢いの良いスマッシュが決まる。相手の子二人は何も手出し出来ないで、ゲームセットだった。
ほんと、あの子の多才さには舌を巻くよ。


「流石蘭ちゃん!おめでと!」
「最後のスマッシュ、早過ぎて見えなかったよね〜!カッコイイ〜!」


次々に上がる称賛の声に微笑んだ蘭ちゃんは、漆黒の長い髪を掻き上げた。
上気するその頬も含めて、やっぱり蘭ちゃんは動作の一つ一つまで色っぽいと思う。


「総司ぃ、次試合だぜー」
「分かった、行くよ」


返事をしたけども、それでも何故か蘭ちゃんから目が離せなくって。テニスコートを見つめたまま動こうとしない僕に、やけにニヤニヤしたクラスの友達が僕の肩に腕を回して来た。


「何だ何だぁ、総司が見惚れるくらいな良い娘がいんのかよ!?」
「オーイ皆ぁ!遂にあの総司にも本気の春が来たらしいぜ〜」
「ちょっと、何言ってんの。あの総司、だなんて失礼極まりないね」


僕はその腕を半強制的に振り払った。暑苦しい男に触れたって、正直こっちが余計に熱くなるだけだし。

触れたのが蘭ちゃんなら良かったんだけどな、なんて考えている僕って、もしかするとかなりの重症なのかもしれない。


**********
*******
***


ヤバい、かなりヤバい。

朝よりも頭がガンガンとしていて、熱が上がって来ているのが自分でも分かる。あぁ、さっきのテニスで頑張りすぎたのかも。


「あ……」


…駄目だ、倒れる。
そう思った刹那、視界は反転していた。


「蘭ちゃん!?」


慌てたような声で誰かが名前を呼んだ気がしたけど、その声を最後に、私はその僅かな意識をも手放したのだった。

- 3 / 4 -
春風