君の鼓動と僕の鼓動 - 春風



総司は鋭い。

だがアイツには、決定的な弱点がある。


「………あぁ。俺が自分の車で送った生徒は、蘭だ」


敢えて蘭を名前で呼ぶと、予想通りだ、かなり衝撃を受けた顔をする。

コイツの弱点は、これが人生で初めて真剣になった恋、初恋だということ。

何しろそれは脆く壊れやすくて、見ているこっちである俺は、扱いやすい。


「蘭、だなんて………。土方先生が女子生徒を呼び捨てにするなんて、珍しいですね。…兄妹、なんかじゃないですよね、苗字も違うし」
「………」


だが、何と答えるべきなのかは、正直迷う。


俺が好きなのは蘭でこの総司と同じだが、蘭の気持ちは俺は知らない。

まず、剣道一筋なアイツが、恋というものに目覚めるかどうかも分からない。

だから俺に対する感情は、今は兄妹止まりなんだろうと自覚している。
俺は一通り考えると、それらしく聞こえるように、総司の目を見つめて言った。


「………あぁ、そうだ。俺と蘭は、そーゆー関係だよ」
「!!!??」


すると総司は余程のショックでか、固まって俺を見つめた。


騙しているのは悪い気がするが、俺だって本気のこの恋だ。
蘭を女として意識し出して、何年経ったと思ってる。


「…そんなの、嘘に決まってる」
「…嘘じゃねーよ」


けれども、いつもの総司の様子じゃ考えられないぐらい、コイツも真剣だった。

悪いな、総司。俺だって余裕はねーんだ。
お前は蘭と同じ生徒って立場で障害は少ないが、俺は仮にも教師なんだ。

イカサマの一つぐらい、許せ。

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春風