君の鼓動と僕の鼓動 - 春風



駄目。とにかく何か、何か言葉を繋がないと。

そう思って無理矢理喉の奥から紡ぎ出した声は、自分でも驚く程にまで掠れていた。


「…そ、そうでよね。沖田先輩は、その…蘭ちゃんが―」
「駄目だっ!言うな!」


すると、突然焦ったような表情をした沖田先輩が、私の口をガバッと塞いだ。瞬間に、フワッと香った先輩の香りが、私の胸を一杯に充たす。


「…僕、自信ないんだ。アハハ、本当に情けないよね」


そう言いながら、ゆっくりと私の口から手を離した先輩は、自嘲気味に笑った。


「…千鶴ちゃんになら…言ってもいいかな」
「………」


チラリ


沖田先輩はそう言うと、ゆっくりと切なげに私に伏せ気味な目線を向けた。その色っぽい仕草に、私の胸はやっぱりドキッと反応してしまうんだよね。


「…そうだよ。僕、蘭ちゃんが好きなんだ。それも、自分でもびっくりするぐらいに、大好き」


そう言って、沖田先輩は幸せそうに、でもどこか悲し気に笑った。それを見た私の胸はチクリと痛む。
それでも、この先輩にこんな顔をさせるなんて、挙げ句の果てにはその口から、大好き、なんて言わせる蘭ちゃんは、本当に凄いと思う。


でもやっぱり、私って汚ないな。
どうしてもどうしても、こんなにも沖田先輩に思われている蘭ちゃんが、羨ましいと思ってしまうの。

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春風