君の鼓動と僕の鼓動 - 春風



「ねぇ一君、東雲蘭ちゃんって知ってる?」


放課後、蘭ちゃんのことを知った僕は、一緒に部活に行きながら一君に聞いてみた。試しに、一年生の可愛い女の子なんだけど、と付け足すと、案の定しかめっ面になる。


「……何故それを俺に聞く」
「だって、蘭ちゃん有名だって聞いたから」


そう言うと、一君は押し黙ってしまった。どうやら、一君もちょっとやそっとぐらいなら色恋に興味はあるだろうと思った僕が馬鹿だったみたい。


「…総司、無駄口を叩くな。早く部活を始めるぞ、土方先生も見ていらっしゃるだろう」


ほらね。でも、もうちょっとだけ。
何故なら、今もあの子の顔が頭から離れてくれないから。


「答えてくれたっていいじゃない。別に減るものじゃないんだし」
「…総司」
「ハイハイ、分かったよ。……今は、五月蝿い鬼さんもいることだしね」
「オイ総司、誰が五月蝿い鬼だって?」
「嫌だなァ、土方先生。先生のことに決まってるじゃないですか」
「お前なぁ………」


五月蝿い土方先生を軽くあしらって、素早く道着と袴に身を包む。
一君はそういうのには疎いから、やっぱり失敗だったのかも。

その日は、そんな煩悩を振り払うかの如く、僕は後輩の平助に打ち込んだ。でも相変わらず、蘭ちゃんの姿は、僕の瞼の裏に焼き付いたままだった。

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春風