私が外の世界に出ようとしたのは母を探すのが理由だった。名前も姿もしらないその人を見つけ出してみたいという途方もないことを成してみたいといつからか思っていたから。その想いは今だって変わらない。
 けれど実際に島の外に出てみるとしたいことはもっと増えた。メドゥのお姉さんたちを探すことはもちろんだけど星トモの皆の探し物も見つけてあげたいと思った。とはいっても他の人たちが探したいものはまだわからない。でも知らないとしてもこんな私を受け入れてくれたみんなの力にはなりたいと思うのは自然だった。

 では、このよくわからない気持ちが生まれるのも自然なのだろうか。

「やってしまった…」

 先の事を考えて行動するのはどうも苦手だ。
 何も考えずに外へと飛び出した私は人通りが少なくなった街をただ歩くしかなかった。どうしよう、こういう時に行くべきところなんて知らない。宿に戻るのは流石にできないしまたバアルさんの元に戻るのだって嫌だ。戻ったところで合わせる顔もなければ話せることだってない。考えれば考えるほど私が行ける場所はほとんどなかった。

 どうしたのものか、と途方に暮れているとふっと脳裏にメドゥの顔がよぎる。明日の朝に出発をする、なんて話をしていたからもしかしたら港に居るかもしれない。私は一縷の望みを抱いて足を港へと向けることにした。



***



「ナマエ!どうしたの、アンタ」
「…メドゥ?」

 港に着いたはいいもののどの騎空挺にメドゥがいるかはわからなかったので虱潰しにメドゥの気配を探していると慌てた様子のメドゥが偶然にも私を見つけてくれた。安堵で泣きそうになる。「どうしているってわかったの」と訊ねればメドゥの知り合いには星晶獣の察知をできる人がいるらしい。その人が港に星晶獣があらわれたというのを感じ取ってメドゥがもしかして、と感じて降りてきてくれたそうだ。その人には感謝しかない。

「ってホントに何があったの!バアルの奴になんか酷いことされたの!?…アイツ!ナマエのこと泣かせて…許さないんだから!」
「あ、え、メドゥ!どこ行くの!」
「アタシに任せなさい!…アンタ達!この子はアタシの…その、友達だから!大事に扱いなさいよね!」

 メドゥが誰かに話しかけているのを見て私は彼女の視線の先を追う。そこには金髪の少女と蒼い髪の少女がメドゥを追いかけるように走ってきている。
 二人が私の元までやってきたのを見届けたメドゥは身体を浮かせてそのまま何処かへ飛んでいってしまった。え、ちょっと。私の為に動いてくれるのは有り難いし申し訳ないのだけど、流石に初対面の人間に助けを求めるほど私は人間慣れしてないんだけど。安堵から出ていた涙はもう引っ込んでしまっていた。