二人との顔合わせ、そしてわたしとナタクさんとの手合わせをした場所から少し離れた所には人々で賑わっている街があった。ナタクさんはどうやらそこにあるお店で食事会を開いてくれるらしい。
 星晶獣が人間の街をうろつくのはどうなのだろう。したことのない体験に期待と不安がよぎる。流石に星晶獣が堂々と街中を闊歩していたら大騒ぎになってしまうので普段であれば人間が着ている服や自身の姿を少し変えて人に扮して街に潜るらしい。
 これから行く街中は予めナタクさんが人数分用意してくれていた大きめのローブを羽織って移動することになった。人の街に降りたことのない私にとっては有難い配慮である。

 街に到着すると思っていた以上に活気があり驚く。ナタクさん曰くそこそこ大きな街でさまざまな人がいるらしい。旅をする人なども立ち寄るような場所なのでローブを着たままでも特段怪しまれることもないそうだ。
 右も左も人だらけ。人間のいるところをうろついたことがなかったので物珍しくてきょりきょろとしてしまう。「迷子になるからちゃんとついてきなさい!」とメドゥに声をかけられて私は自分が置いていかれかけていることに気付き、人混みをかき分けながらなんとか前を歩くナタクさんたちについていった。

「鈍いし危なっかしいな。お前は」
「だ、だってこういうところ来たことないんです!仕方ない、じゃないですか…」
「ちっ」

 なんとか二人を見失わないように歩いていたが時折人混みに足をとられかけてしまう。そんな私の姿を見かねた最後尾のバアルさんは小さく舌打ちをしたと思えば私の手をとって少し速いペースで歩き始めた。人の波に逆らって歩いているのでこけないようになんとか踏ん張ってそれに着いていく。

「バ、バアルさん、」
「世話の焼ける奴だ」
「ひゃ!?」

 私のペースが気に食わないのかバアルさんは最終的にわたしを横に抱えてすたすたと歩いていく。私は荷物か何かか!と突っ込みたくなるが私のペースが遅いものだったのは否定できないしこのままでは最悪二人を見失う可能性もある気がしたので結局大人しく彼に担がれることに。

「ナタク。いつもの場所か」
「あぁ。そのつもりだが」
「先に行く」

 あっさりと二人に追いついたバアルさんはナタクさんに場所の確認をした後に再び足のペースを速めて抜き去った。どうやら道はしっかりと把握しているらしく物の数分で人通りの少ない道に辿り着き、その一角にあるお店の中にさっさと連れていかれてしまう。

「なんかアイツすっごい張り切ってるわね」
「元々世話焼きだからな、バアルは。放っておけないのだろう」
「ま、仲良くやってくれてるならいいのかしらね。乱暴に扱うのはちょっと文句言ってやりたいところだけど」

 担がれた私を見てメドゥとナタクさんがそんな話をしていたなんてことは私は知る由もなかったのだった。