ナタクさんが連れてきてくれた店は食事のとれる店だった。そこのご飯はどれも美味しくてほっぺたが落ちるとはこういうことを言うのだろうな、と思いながら私たちは美味しい食事にありついていく。
 何でも先日食材の採取の為に森に出かけていたここのご夫婦をナタクさんが助けたことがあったらしく、それ以来この夫婦はナタクさんや友人であるメドゥたちが此処に訪れるとこうしてご飯を振舞ってくれるらしい。星晶獣と人間がこうして助け合ったりすることもあるんだな、と私は少し驚きながらも事の顛末を聞いて感心をもった。

「そういえば結局サテュロス、来なかったわね」
「今日は所用があると言っていた。次回必ず行くからナマエは参加するように、と言伝を預かっている」
「さてゅろす、さん?」
「ホントはアンタにもう一人紹介したい子がいたんだけどね。それがサテュロスよ」
「メドゥーサ以上に煩い奴だ」

 どうやらメドゥと仲良しの子がもう一人いるようだ。会えないのは残念だが仕方がない。次回の開催がいつになるのかはわからないが私はナタクさんの言伝に頷くと「アイツも喜ぶだろう」と言ってくれる。どういう人なんだろうなあ。メドゥがいう感じだと女の子、なのかな。バアルさんが煩い奴、というからきっと元気な感じの人であるのは想像できる。

「次回の開催はいつと決めているのか?」
「まだ決めてないわ。近いうちに、とは思うけどアタシもちょっとやることあるし」
「あの騎空団に結局身を寄せているのか」
「まあね」

 どうやらメドゥは最近騎空士と仲良くしているらしい。とある騎空団と行動をして依頼や討伐などを手伝っているそうだ。メドゥが人間に心を開くなんて意外だ、なんて思って私は驚きのあまりフォークにさしていた唐揚げを落っことしそうになった。未遂なのでセーフである。

「まあアタシの力が必要っていうから仕方なく、よ!」
「メドゥは優しいんだね」
「そう言っておだてられてるだけじゃないのか?」
「そんなことないわよ!アンタと違ってアタシは心が広いの!」
「フン」
「てか…ナマエ、アンタ今後はどうするのよ」

 メドゥの言葉に私はううん、と唸る。たまたま私のいた島にメドゥが来て事情を聞いて島を飛び出してきたからこれといってどうするかを考えてなかった。また自分のいた島に戻るというのも手だがせっかく出て来たのだからちゃんとステンノさんたちを見つけ出してから戻りたい。やりたいことだってある。

「メドゥがその依頼?とかをしている間は私が代わりにステンノさんたちを探します。何かわかったら連絡します」
「…いいの?」
「メドゥは勿論だけどお二人にはたくさんご恩があるので返したいの。それにせっかく外に出たんでいろいろと見て回りたいのもあります」

 私の言葉にメドゥはうるうると瞳を潤ませる。もう、泣き虫なんだからなあ、と私は頭をぽんぽんと撫でてやった。いつも慌てる私を引っ張ってくれるメドゥだがこういう時は立場が逆転してしまう。

「それならバアルと同行するのはどうだろうか」
「…なんで俺になる」
「探すことに長けているのは俺よりお前だろう。属性が異なる星晶獣を探すというのは困難だ。それに星晶獣とはいえあまり外の世界を知らないのなら誰かといる方が安全だ」
「それは確かにそうね…」

 ナタクさんの言葉にメドゥも「まあバアルなら安心かも、」とすごい小さい声でだが納得をしていた。ちゃんと聞こえるように言えばいいのに素直じゃないなあ、なんて思う。
 二人の納得にバアルさんがすごい嫌そうな顔をする。なんかそこまで嫌がられると本当申し訳ないので全然自分でやります、って思ってしまい「一人でも大丈夫ですよ」なんて思わず強がりを言ってしまった。それを聞いたメドゥは少し複雑そうな表情をしていたが、何かを決心したような顔になりバアルさんに話しかける。

「…ナマエのこと、お願い。…こういうの頼めるの、此処にいるアンタ達だけくらいなんだから」
「メドゥ、」
「…と言ってるが、どうする?バアル」

 あのつんけんなメドゥがお願いをするところなんて初めて見た。そこまで私の事を心配してくれていると思うとひとのことが言えないくらいに私も目頭が熱くなる。
 素直じゃないメドゥが素直にしたお願いを聞いたナタクさんが改めてバアルさんに問えば彼はもう嫌そうな顔をすることはなかった。

「…もたもたしていくと置いていくからな」
「だ、そうだ。良かったな。ナマエ」
「あ、ありがとうです。よろしくお願いします。…メドゥもありがとう、」
「べ、別にどうってことないわ!もう、こんなことで泣かないでよっ」

 メドゥは恥ずかしそうに頬を赤らめる。やっぱりメドゥはいい子だしいつまでも私の恩人だ。嬉し涙がぽろりと落ちたのが自分でもわかって私も結局のところ泣き虫だった。