「バーアールーくーん!」
「サ、サテュロス!?お前なんでっ」

 休憩もほどよく済ませて次は森を抜けた荒地で共鳴反応を探ってみようという算段がついた私達は飛んで移動することなく徒歩で森を進んでいた。おそらく私の体力が戻りきっていないのをバアルさんが配慮してくれているのだろう。そんな彼の善意を有難く感じながらのんびりと進んでいると突如バアルさんの横の草むらから何かが飛び出してきてがばり、とバアルさんに飛びついた。
 身の危険を察知したのか反射的にハンニバルさんがバアルさんの肩から逃げるように飛び跳ねて私の肩に着地する。どうやら思っていたよりも私に懐いてくれているようだ。ハンニバルさんの気を落ち着かせるために数回撫でてあげるとごろごろと喉を鳴らす。猫ではないらしいけれどこういう反応は猫そのものだ。

「急いでいつものお店行ったらおばさんたちがもう解散しちゃったーっていうから探したんだよ。でもすぐに見つかってよかったよ〜」
「知らん。何故お前に見つかるように行動をしなければならないんだ」
「それはね、私が星トモ新メンバーちゃんに挨拶するためだよっ!」

 距離を取りたそうに若干乱暴そうに飛びついている女の子(おそらくサテュロスさん)を押し避けているバアルさん。その姿をみるとなんというかいつも気苦労してるんだなあ、とちょっと同情してしまった。
 バアルさんとの絡みが満足したのか女の子は次に私に目を向ける。きらきらとしたその瞳が私を捕らえて離さない。じりじりと詰め寄られているのを感じて私は思わず一歩後ろに下がってしまった。その瞬間の逃すまいとがばり、と彼女がバアルさんから離れて私に飛び掛かる。ハンニバルさんが次なる安全を求めて私から飛び降りたのは同時のことだった。

「かっわいー!貴女が新メンバーさん?ねえねえお名前は?なんて言うの?」
「え、ええと。ナマエです。よろしく、」
「ナマエちゃん?そっかそっか!とーっても可愛いんだね。メドゥちゃんってばナイス人選!こんな子とお友達になれるなんて嬉しいなあ」
「…サテュロス。騒々しい。もう少し静かに話せ」
「えー!こんなにうれしい気持ちを静かに表現なんてできないな〜。たくさん伝えることはできるんだけどね」
「…はあ」

 サテュロスさんは私に抱き着きながら頬を膨らませてバアルくんに抗議をする。そんなもの知るかと言いたげにバアルさんは大きなため息をついた。ハンニバルさんはどこへいったんだろう、と抱きつかれながらも見回せばいつの間にかバアルさんの肩の上に戻っていたようだ。ちゃっかりしているなぁ。

「あのね、ナマエちゃん。ようこそ星トモへ!挨拶が遅れてごめんなさい。私はサテュロスだよ!よろしくね」

 ふにゃりと笑うサテュロスさんは可愛らしい笑顔を振りまくが意外にぐいぐいとくる。力の強さに思わずバアルさんに助けを求めようとするが目を逸らされてしまった。あれは絶対面倒くさいって思ったし助けてくれないやつだ。観念するしかなさそう、と私は彼女の笑顔に応えるために精一杯で笑みを浮かべた。若干引きつってしまっているのは許してほしい。