「そっかぁ、じゃあナマエちゃんはしばらくバアルくんと一緒にいるってことなんだね」
「はい、お世話になる予定です」
「やっぱり優しいね〜バアルくん。クールなのに世話焼きさんってもう素敵すぎ!」
「ただ茶化しに来たならさっさと帰れ」

 私がバアルさんと一緒に居る経緯をサテュロスちゃん(堅苦しいのはなしで呼んでほしい、とのことなので)に話すと頬を緩ませてバアルくんを肘でつついていた。サテュロスちゃんにからかわれてジト目になるバアルさん。この二人もなんだかんだで仲がいい、というやつなのかな。

「そういえばサテュロスちゃんが言ってた”ほしとも”というのは何ですか?」
「ん?星晶獣のお友達だから星トモ!私達よく会うからね。ね、バアルくん」
「そう呼んでるのはお前くらいだ。それに俺は仲良しごっこをしているつもりは、」
「でも会いに来てるのは少なからず同意の気持ちがあるからじゃ…」
「お前も煩いぞ。余計な詮索だ」
「ナマエちゃんわかってる!そう、バアルくんはツンデレさんだからね。素直じゃないんだ〜。でもこういうところがカワイイポイントなんだよ」

 私とサテュロスちゃんで意見を合わせるものだからバアルさんは少し面白くなさそうだった。かっこいいとかかわいいとかそういうのを直接的に言うのは恥ずかしくてできないが概ねサテュロスちゃんが言っていることは納得できる。何時間かしか話していないのでわかった口をきくのもどうかと思うが、そういうのがきっとバアルさんの良い所だ。
 それからもサテュロスちゃんのマシンガントークは続き、日も暮れそうになる頃。サテュロスちゃんは話すことを話せて満足したのかそろそろお暇するということになった。

「ホントは一緒に行きたいところなんだけど…ごめんね。私も調べてることがあるから、次の島に移動しなくちゃいけないの…」
「いえ、また皆さんで集まる時にお話しましょう」
「うん!ありがとう、ナマエちゃん。優しいナマエちゃん、私すぐ好きになったよ!あ、バアルくん、ナマエちゃんにヘンなことしちゃだめだよ〜!」
「余計な心配だ。さっさと行け」

 ぴしゃりと言い放ったバアルさんだったがサテュロスちゃんは慣れっこのようで特に突っかかる様子もなくそのまま受け流して去っていってしまった。天真爛漫ではあるがそういう意味ではメドゥよりも大人、なのかもしれない。
 ふわり、と力を使って浮遊してその場を去るサテュロスちゃんの背中をぼんやりと眺めながらちらり、とバアルさんを見る。表情は無に近いものだから、何を考えているかはいまいちわからなかった。

「行っちゃいましたね」
「ようやく静かになる…。アレがずっといるのは俺のメロディーが乱される」
「ふふ、でも大切な星トモ、なんでしょう?」
「くだらないな。…行くぞ」

 バアルさんはそんなことを言ってるがサテュロスちゃんの姿が見えなくなるまでしっかりと見送ったのを見れば彼も彼なりに仲間を大切にしている、というのがわかる。
 不器用な一面に小さく笑いながら私は彼の言葉に従って数歩後ろをついていった。