Chocolate kiss


 最近お仕事が忙しい彼に何かしてあげられることはないかなと思い、少し高級なチョコレートを買ってあげることにした。
 デパートへ赴き、キラキラと宝石のように輝くチョコレートのショーケースを前にして私の胸は弾む。上品な色の包装紙に真っ赤なリボンが施されていて、満足しながらデパートを出た。彼がどんな反応をするのか楽しみだ。


 
 夜ご飯を食べ終わった後、私がキッチンで食器を洗っていると彼がソファで本を読んでいた。
 片付けが終わって彼に例のチョコレートを渡そうと思い、後ろに隠しながら彼の隣に座る。
すると、私が何か隠していることに気づいたのか、首を傾げていた。

「実は凪砂くんにプレゼントがあるの。これ」

 彼の前に出して「チョコレートだよ」と言うとパァッと音がするかのように喜んでいた。
 包装紙を開いて中身を見ると目をキラキラと輝かせていた。一粒口にしたと思えばまたすぐに取っていた。

「美味しい?」
「うん、とても」

 嬉しそうに食べる彼に、疲れも少しはとれたかなと思うと私も嬉しい。

「……君は食べないの?」
「私は良いよ。凪砂くんのために買ったものだから」

 やんわりと断ると彼は少しの間黙ってしまう。悲しませちゃったかなと思い、話しかけようとすると口の中にいきなりチョコ入れられて驚く。

「美味しいから、君と共有したかったんだ」

 ふふと笑う彼に、私はまんまと嵌められたとわかる。やられた。でも悪戯に笑う彼が可愛くて、幸せを感じながらありがとうと伝える。

「美味しい?」

 微笑みながら尋ねる彼は何だか楽しそうで、嬉しい。

 チョコレートの箱を片付けようとすると不意に名前を呼ばれる。返事をしようとすると顔が近づいてきて軽くキスを落とされた。チョコレートが仄かに香る甘いキスだ。

「い、いきなり、どうしたの?」
「共に食べることができて嬉しかったから。……いつもありがとう」

 微笑んだ彼を見て私の心も満たされる。チョコレートよりは私で疲れを癒してくれたみたいで、彼女冥利に尽きる。愛されてるなという気持ちになり、だらしなくなる顔を抑えられない。

「どうかしたの?」
「何でもないよ。私もキス、していい?」

 何も言わずに微笑む彼を同意と捉える。彼の胸板に手を当てて、彼の身長に合わせるために背伸びをして、ちゅっと軽くキスをすれば満たされた顔をしてくれる。

 恥ずかしくて彼の目を見れないが、そのまま彼の腕の中に入り「好き」と零せば、「好き」と返される。優しく包み込んでくれる彼に、私の疲れた心も体もチョコレートのように溶けていった。

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