Agapanthus
レッドスピネルのような .3
「こっち来て」
寝室に移動して、彼にプレゼントがあると言って隣に座るように言った。
「改めまして、お誕生日おめでとう」
黒い包装紙に真っ赤なリボンがあしらわれた小さなプレゼントを彼に渡した。お花が見えそうなほどほわほわとした彼のオーラは嬉しくてたまらない、と言っているようだった。
中身は赤い宝石が施されたリングネックレスだ。
「これは……『レッドスピネル』だね。とても希少な石」
「さすが凪砂くん、わかるんだね」
早速つけたいと言った彼に首元を抱きしめるようにつけた。満足そうに目を細めてじっと宝石を見つめていた。
「石言葉もあるんだ」
赤は彼の色であり彼にピッタリな色。そして、その石言葉も彼を表しているようだったから選んだ。
「ふふ、知ってる。私の中の凪砂くんはね、この宝石と同じなの」
「同じ?」
「凪砂くんはいつも探究心を持って自身の糧にしているでしょう? 石言葉である『探求心と好奇心』が凪砂くんらしくて選んだの。それに、レッドスピネルはパワーストーンらしいから、凪砂くんが目指すみんなに愛されるアイドルにも近づく支えになるかなって」
凪砂くんがいつも教えてくれるから、事前にたくさん調べたんだよ。と言っていると不意にかかった彼からの重みにバランスを崩しそうになった。力強い彼の力で引き戻される。先程まで静かに私の話を聞いていた彼が私を抱きしめていた。
「……私は幸せだね。君がこんなにも私のことを想って選んでくれる、なんて」
心なしか震える声が耳元に響いた。
「凪砂くん、もしかして泣いてるの……?
「……そうみたい」
嬉しくて泣く、という感覚が彼にもあったようで何だか嬉しい。これを彼に伝えたら「私を何だと思っているの?」と不機嫌になってしまうだろうから言わないけれど。優しく頭を撫でるとふふと嬉しそうに微笑んでくれる。
「……こんなにも夢のような時間が流れるなんて思ってもいなかった」
心の底から喜ぶ彼に温かい気持ちになる。わあたしも彼のお仕事と立場を理解したうえでお付き合いをしているが、たまには普通のカップルがするようなことも彼はしたいんだろう。
静かに彼の手を取ってさすっていると、落ち着いたのか離れた彼が再び口を開いた。
「これには恋愛成就って意味もあるみたい」
恋愛に関する意味は考えていなかった、そういう意味も持ち合わせているらしい。
「……君と幸せな時間を過ごしている私には無縁だと思っていたけど、手に入ると心強いね。これから何があってもいつまでも君と共にいられるようなお守りのようなもの。君から貰ったものだから尚更」
再びプレゼントを見ると壊れ物を扱うように持ち上げてはもう片方の手で一撫でした。その姿はどんな宝石よりも美しいだろうと私は思ってしまう。
「君と共に明るく輝かしい未来が、この石から見える気がするよ」
「ふふ、大袈裟じゃない?」
「……少し誇張するぐらいがちょうどいいよ。今の私はどんなものにも打ち拉がれることはないだろうから」
いつもより口数が多い彼を見ると喜びを目一杯感じているんだなと思えて嬉しい。緩む頬を抑えられずに再び抱きしめ彼の首元に頭を擦り寄せる。
「ねえ、今とても君に口づけたい」
「うん。私も」
彼が私の右頬を包んで親指ですりと優しく撫でる。精一杯愛でるように触れる彼の体温に心地よさを覚えて目を瞑る。
これからも彼の大切な誕生日を祝っては幸福感に浸る。そんな一生を彼と送ることができますように。そんな願いを胸に彼とのキスに酔いしれた。