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どうしてこんなに長くなるかってやっぱり描写に文字数割きすぎだからだと思う。
とにかく前回の続きから。
お兄ちゃん視点。
あらゆるものを捕喰する、アラガミという天敵がいる世界。この世界での俺は、というかこの世界での俺も、それこそ生まれた時から、相変わらず“俺”という自己認識と記憶を持っていた。
そして──魂は違えど、俺が生まれる度に傍に在る、血を分けたたった一人の弟。なぜか弟として生まれ落ちた事は無い。ともかく、この世界での弟であるジュリウスと俺は、ヴィスコンティ家という子爵を持った家で育った。
貴族としての教養を身に着けつつ10年と少し生きた頃。俺と両親はアラガミに襲われた。それが出先であり、まだ幼いからと家にジュリウスが残されていたのは不幸中の幸いだったのかもしれない。結果天涯孤独の身となってしまったジュリウスには悪い事をしたと思っている。でも、申し訳ないのだけど、やっぱり人間生きててなんぼだとも思うわけで。
両親も俺も満身創痍だったけれど、この世界での父親は息絶える前、肌身離さず持っていた家宝の懐中時計を俺に預けた。俺が、どんな場所でも、どんな時でも、どこにでも行ける事を彼は知っていたから。
「──生きてくれ。そいつが父さんの遺言だった」
あの時は血にまみれていた時計をちゃりちゃりと弄びながら、俺は呟いた。
「今にして思えば、父さんはたぶん、自分が助からないんだろうって悟ってた。だからガキだった俺に、代々受け継がれてきたこの家宝を俺の手に押し付けた」
俺が普通じゃないって知ってたのは家族だけ。ジュリウスは小さい頃から賢かったから、きっと親戚に言い触らしたりはしていないだろうと思う。たぶん、マグノリア=コンパスの人間にも言っていない。
あいつにとって、俺が普通じゃなかったって事すら、数少ない家族の思い出になってるのかもしれない。
「それから、俺はとにかくアラガミのいない場所に逃げた。自分が生きてるってバレたら、次男からくりあがって嫡男に落ち着いてるジュリウスの立場がややこしい事になるだろうなとは思ってた──親戚の奴らは、ガキ目線から見ても人間できてるとは言い難かったしな」
この地球のどこかで、アラガミの脅威に晒されない場所で、幸せに生きていてくれればそれでよかった。生きているって思ってた。
なのに、あいつは。ゴッドイーターになってるわ、ブラッド抜けたと思ったら神機兵率いてクーデター起こそうとしているわ…一体どうしてこうなった。
「──ま、そんな感じだ。俺は、ヴィスコンティ家の当主として、弟を引き渡してもらおうと思ってる」
親族の言う事なら──あとついでに貴族なのだから、多少の発言力はあるだろう。
証拠?時計でどうだコラ。あと見た目。
「見た目、って…」
俺がそうどや顏でのたまうと、ナナがパチパチと瞬きしながら、俺を頭の先から踵の先まで見下ろした。確かに、今はジュリウスと俺が兄弟だって思える要素は少ないだろう。俺はナナから目を離して、ちらりとサカキ博士を見た。
「今ここにある精密機械の電源はシャットダウンしてるから、大丈夫だよ」
「さすが、準備が早い」
言うが早いか、俺はぱちんと指を鳴らした。俺からは分からないけど、目の前にいる全員が目を見開いてこちらを凝視している。主に俺の頭を。
うん、一瞬で黒髪が金髪になったらそりゃそうなるわな。
「えっ…えっ、え、え?」
「ふわあ、すごい…!」
正直だらだら汗を垂らしてこちらを指差しているコウタの反応が一番面白い。ナナのきらきらした目が突き刺さる。後は無言か、なるほど分かった。
「そうだなー、これをこうすると…」
「ジュリウスだ!」
髪の分け目を変えると、ナナが立ち上がりながら叫ぶものだから、俺は思わず苦笑した。こういう天真爛漫な反応は、いつになっても嬉しいからな。
ぱちぱちと瞬きをするシエルは、今しがたの光景に信じられない様子だ。
「信じられません…今のケニーさんは、まるで…」
「ガキの頃のジュリウスにそっくりー、だろ?」
ニヤリと笑って、当時の思い出に思いを馳せる。
あいつは昔っから長い髪をポニーテールにしていて、所見殺しもいいところだった。だって正面から見たら長髪だなんて思わないもんな、うん。
「………今のはなんなんだ」
「お、ようやく現実的なツッコミ入った」
ギルの一言で、俺はニヤニヤ笑いを引っ込めた。また指を鳴らして、髪を黒に戻す。ナナが残念そうな声をあげたから、あとでもう一回金にしてもいいかもしれない。
ま、それは置いておいて。
「俺は昔っから…っていうか、生まれつきこういうのが得意でな。魔法って言えばいいのかね」
「魔法…」
「だいたいなんでもできるぜ。まあでも、オラクル細胞は関係ないから、アラガミを殺すってのはできないけど」
ぱちん、ぱちん。指を鳴らすたびに、炎やら氷やらが出たり、机の上のペンがでかくなったり小さくなったりする。まるで手品だけど、手品じゃない。文字通り種も仕掛けもないからな。
「でも、不思議能力だからか知らないけど、こいつを使うと機械が壊れちまうんだ。ショートしてるわけじゃないのに、モーターが回らなくなったり…まあ、平たく言うと、動かなくなる」
「動かなくなる?」
「今まで色々試してきたけど、精密機械はほぼ全滅かな。無線、PC、エレベーターや自販機…当然、リッカが開発したリンクサポートシステムもアウトだ。謎なんだけど、腕輪は平気なんだよな」
腕輪は肉体と融合してるから、知らずと魔力に慣れたのかもしれない。生き物みたいで変な話だけども。
「コウタとアリサは覚えてねえかな、ほら、初めてハンニバル倒した時にさ、俺が吹っ飛ばされたの」
「…ああ、そういやそんな事もあったな」
「あれの原因ってコアの制御機構に不具合が出たからだって事になったんだけど、ただ単に俺がこの力を使ったからなんだよねえ」
「では、その力を使うと」
「当然、神機も壊れる」
ニコリを笑顔で告げると、ナナが「意外と不便なんだねえ」と素直な感想を漏らした。…ド直球投げられると意外に傷つくな、これ。
「いろいろと便利だけど、ゴッドイーターとしては使うべきじゃねえかな」
戒めを込めて向かいに座っていたレグルスをちらりと見てから、俺は話を戻す事にした。
「まあ、色々言ったけど、俺がついていくのにはちゃんと理由があるんだ。納得してもらうぞ」
「………」
「異見が無いのであれば、話はこれで終わりにしようか。ブラッドはブラッドで、極東支部は極東支部で、各自ブリーフィングを行ってくれ」
長い( *ω* )
つまりはこういう感じで、お兄ちゃんも黒蛛病患者の救出のためフライアの突入作戦に参加。一応神機も持って行きます。体力がゼロに近いので神機使いとしてはあまり役にたたないけどな。
クレイドルの上衣に久々に袖を通しながら「これが最後のミッションになったらやだなあ」とかちょっぴり不穏な事を考えるお兄ちゃん。やめて。
フライアに乗り込むと、ユノに「私の事はいいから、ジュリウスの元へいってあげてください」と言われ、早々に重い神機を放り出して走り出すお兄ちゃん。なんで持ってきたのお前。
目の前には神機兵だけど、懐に入って魔力流して一発KO。相手が機械だからできる戦法である。
「ボンバーダ・マキシマ!!」
で、固い扉もぶっとばすお兄ちゃん。サポートなどいらぬ。無線付けてたけど魔法で以下略。
周辺の機械が壊れたらまずいなあとは思いつつも魔法連発。後悔などない。
地面から上までぶち抜いたところで辿り着いたのはラケル博士の研究室。驚いた風もなく微笑を浮かべながら振り返ったラケルにちょっぴり悪寒が走るお兄ちゃん。
この姉ちゃんやばい、的な危機感は覚える。
「ようこそいらっしゃいました」
「あんた頭大丈夫か?」
「わざわざヴィスコンティ家の当主にご足労いただいたんですもの。礼を尽くさないわけがありませんわ」
「…そこまで分かってんなら話が早いわ」
溜息を吐いて軽く身なりを正し、お兄ちゃんは威風堂々と交渉開始。
「ヴィスコンティ家の当主として──養護施設マグノリア=コンパスの設立者であり、ジュリウスの保護者であるラケル・クラウディウス博士にお願い申し上げる」
「………」
「我が弟、ジュリウス・ヴィスコンティを…渡してもらおう」
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