設定C


※人理新宿アガルタ下総セイレム修復済みマスターが書きます
※少なくとも以下は人理修復済み後のカルデアです
※終章クリアしてないマスターはそこまでのネタバレありきです
※亜種特異点の鯖の真名以外にも、意図しないネタバレがあるやもしれません
※ご注意ください〜〜










−アバンタイトル−




魔法とは、魔術とは異なる神秘である。

魔術師達が目指す最終到達地点である「根源の渦」から引き出された力の発現。
その時代の文明の力では、いかに資金や時間を注ぎ込もうとも絶対に実現不可能な「結果」をもたらすものを指して魔法、と呼ぶ。
対して魔術は、一見ありえない奇跡に見えても、「結果」という一点においては、別の方法で代用ができる。

たとえば、魔術を用いて何もない虚空に火炎を出現させ、敵を攻撃して燃やすことは、一見してありえない奇跡に見えるが、「火で燃やす」という結果を問うなら、火打ち石でもマッチでもライターでも、火炎放射器でも代用ができる。
魔術では再現できない直視の真眼ですら、過程ではない、もたらされる「結果」を問えば単純に「死」であるため、魔法の域にはない。

人類が未熟な時代には数多くの魔法があったが、それらは文明の発達にともなって、ほとんどが魔術へと格下げされた。

現代においてなお魔術協会が魔法と認定している大儀礼は五つで、使い手は五人だとか四人だとか言われている。
その内容はたとえ教会の魔術師であろうと末端の人物や、そもそも教会に属してさえいない部外者には知らされていない。また、中でも第三魔法は教会でも秘密にされていた禁忌中の禁忌である。



「勘違いしないでほしいのは」

メディアはくるりと体を反転させると、分かっているのだかいないのだか、目を閉じて聞き入っているマスターを見下ろした。

「『その時代の文明の力では、いかに資金や時間と絶対に実現不可能なもの』──が魔法なのだけれど、『実現不可能なもの』が五つしかない、というわけではないのよ」
「はい。『現代の文明の力では実現不可能なもの』は、五つと言わず、それこそ幾つもあります」

マスターの隣で同じく机を並べていたマシュが頷く。

「その無数の『実現不可能なもの』の中にあって、さらにそれを『可能にした奇跡』が魔法であり、現在は五つしかない。というのが、正解ですよね?メディアさん」
「その通りよマシュ。ところで…」

いらり、と顔をしかめてみせると、メディアは身をかがめた。

「あなたの隣でで微動だにせず目を閉じているマスターは、どういうことなの?」
「…レムレムしていらっしゃるみたいです…」

双方ため息をついた。今日の講義はこれまでということらしい。
その十分後、マスター改め藤丸立香は首を傾げながら至極真面目な顔で頷いた。

「ダメだ。ぜんっぜん覚えてない」
「先輩ったら、メディアさんの工房で講義を受けられるなんて、滅多にないんです。集中していただかないと」
「はは、ごめんごめん。ちなみに今日の講義ってどんな内容だったっけ?」
「もう…。今日は、魔法と魔術の相違点についてです」

マシュはメディアの言葉の内容を思い出しながら、かいつまんで説明した。

「なら、いつか──遠い未来で」

立香は瞬きした。

「科学がものすごく発達して、今は奇跡だって言われてることも実現できるようになったら、魔術や神秘が失われてしまうのかな」
「その価値をなくさないために、魔術は秘匿されるべきものである、ということでしたね」
「ふうん…」
「あ、マスター。いたいた」

緑のローブが揺れる。フードを脱いだ皐月の王がひらりと手を振った。

「ロビン」
「ダ・ヴィンチ女史が呼んでたっすよ。なんでも、新たな特異点?とかなんとか」
「警報は鳴っていませんが…」
「特異点未満?ってやつですかね…ま、詳しい事は分かんねえわ」

本当に警報が鳴る前に行った方がいいんじゃないっすか?そう促すロビンに連れられて、立香とマシュは管制室へ向かった。扉が開くと、やはりいつもの──特異点が発生したような慌ただしさはない。ロビンの言っていた『特異点未満』という表現がしっくりくるような気がした。

「ああ二人とも、来たね」

モニターの動きを追っていたらしい妙齢の美女、ダ・ヴィンチが顔を上げる。立香とマシュはその傍へと駆け寄って、同じくモニターを見つめた。

「特異点未満って、どいういうこと?」
「ロビン・フットがそう言ったのかい?まあ、そういう表現が打倒かもしれないね…」

ダ・ヴィンチは画面を見下ろした。

「ゲーティアの企みを阻止し人理修復を成し遂げて以後も、特異点と呼ぶべきものは発生してきたね?」
「はい。新宿にアガルタ…それに下総国ですね」
「正解だ。だが、あれらと並べるにしてはいやに反応が小さい…」

ダ・ヴィンチの細い指が連続してモニターをタップする。世界地図を表示していた画面は拡大され、ヨーロッパの一部をズームアップした。

「異変の兆候が見られたのはヨーロッパのイギリスだ。特異点を潰して回った大きな時間の揺らぎが、ここに波及しているのかもしれない」
「…時代は?」
「1999年。座標は、イギリスの…スコットランド…いや、これは国境沿いか?特異点として確立していないからか、座標がはっきりしていなくてね。すまない」

海の間に浮かんでいる大陸をじっと見つめる。いつもの警報音もなく、不穏な雰囲気も、脂汗の滲むような緊迫感もない──まだ。

「さて、情報が絞りきれないせいか分からない事だらけだ」

それでも、行くかい?
促してきた天才をじっと見つめ返す。答えは決まっていた。

「はい!」
「よしきた!実はもうコフィンの準備はできてる。いつでもレイシフトできるようにね」
「ダ・ヴィンチちゃん、さすが!」



…そして、目を閉じる。

《アナライズ・ロスト・オーダー》
《人理補正作業 検証を 開始 します》

青白い光の渦の中に吸い込まれるような感覚。
少なくともこの時までは、今まで亜種特異点となんら変わりの無いはずだった。









瞼を開く。
日差しの届かない、黒く冷たい土。どうやらそこに寝転がっていたらしいので、起き上がる。

「(…寒い)」

鬱蒼と、森が生い茂っていた。生きものの鳴き声ひとつ聞こえない、前後不覚の不安を煽るような光景だ。なんとなく寒くなって、立香はぶるりと肩を震わせた。
レイシフトについてきてくれていたサーヴァント達の名前を呼ぶ。返事はひとつとして返ってこなかった。

「──?」

何かの気配を感じて、振り返る。
ぱきぱきと、手のひらをついていた草が凍りつき始めていた。それを見て初めて、気温が急激に下がりつつあるのを感じ取る。寒さは感覚を鈍らせると、これまでの旅で痛感していた。立ち上がろうとして、失敗する。足が動かないのだ。

「(何、だ?)」

鬱蒼として、何一つ見えてこないと思っていた森の奥に暗闇があった。冷気はそこから来ていた。
歯がひとりでに音をたてる。ひどく寒くて、震えが止まらなくて。指先を擦り合わせてもいっこうに温まらない。もう一度立ち上がろうとして、今度こそ地面に逆戻りした。
暗闇からずるりと、黒い布が浮き出るように顔を出す。竜牙兵のような手が布の下から伸びている。どうみても、救いの手には見えない。
ぬかるみに手が滑る。それでも這いずって逃げようとして、顔を上げると、すぐ頭上に『それ』はやって来ていた。
布の奥、落ち窪んだ暗闇の向こう側に見たものを見て悲鳴をあげようとした。できなかった。悲鳴をあげる力さえ寒さに奪われていたからだ。吐息だけが無様に吐き出されて、今度こそ地面に頭を沈める。起き上がる気力は無かった。
駄目だと思うのに、体が動かない。

バシッと、強烈な音がした。
じわじわと寒さが遠ざかっていく。森独特の湿った空気が戻ってきているのを感じたが、起き上がることは難しそうだ。

「起きろ」

…難しかったはずだ。
背中に強烈な痛みを覚えた立香は勢いのまま、慌てて起き上がった。振り返る。黒いローブを纏った誰かが、己を見下ろしていた。

「さっさとしろ。マグルの若造如きが、煩わせるな」

ぱちり、と瞬きをひとつ。立香の脳裏にウルク王だかファラオだかが思いきりちらつく。ローブの奥で赤い目がぎらりと光った。ああこれは、英雄王の方だな。本人が聞いたら怒りそうな感想を抱きながら、なんとか立ち上がった。手のひらについた泥を払い落とす頃には男が歩き始めていて、慌てて追いかける。
男は英語で話しかけた。ならば、返す言葉は英語が正解だろう。

「さっきのあれ…は?」
「吸魂鬼だ」

男は短く答えた。歩くスピードは変わらず、うっそうとした森の中は相変わらず暗いのに、迷う素ぶりなく歩き続ける。

「おおかた、お前の臭いにつられたのだろう…善性の臭いは奴らのいい餌だ」

結局吸魂鬼──ディメンターがなんだか分からないまま、立香は男の後を歩き続けた。
数分ほど歩き続けた頃、野営のテントが見えてきた。男はまっすぐに入って行くので、それに従う。暗い中がいきなり明るくなったので、立香は瞬きをくり返し、絶句した。

「ええ!?」

目の前に、一家庭のリビングが広がっていた。
暖かそうなソファ、キッチンも見える。なぜか暖炉まで燃えていた。自分は幻覚でも見ているのだろうか。まったくわけが分からない。
目を白黒させている間に、男はローブを脱いで暖炉の前で寛ぎ始めた。

とんでもない美形だと、立香は思った。
真っ黒の髪は艶々としていて、スッと通った鼻筋、整ったまなじりに唇。どこをどう切り取ってもまるで芸術品のよう──レオナルド・ダ・ヴィンチ(正しくは彼の姿ではない)や、人と神の間に生まれたウルクの王に匹敵する美しさではないだろうか。長い足をこれでもかとおしげもなく晒しながら足を組み、男は暖炉の前のソファに腰掛けた。

「…助けてくれて、ありがとうございました」

立香はようやく声を発して、落ち着きなく辺りを見渡した。

「あの、ここはどこですか?」
「………」
「あなたは誰?」
「………」

男は微動だにしなかった。しかし、ここに自分を連れてきたのは彼なのだから、存在を無視されているわけではないだろう。
連れて来られた理由に見当なんて、つくはずもない。まったく意味が分からず、立香は途方に暮れた。

「(助けてもらった、けど)」

ここにいるべきではない。
森で目が覚めてから、カルデアとの連絡が取れていない。サーヴァントとの合流すら果たせていない。最悪、令呪でここに呼ぶことも出来るが、右も左も分からないこの状況で使ってしまうのは悪策と言える。
唇を噛んだ。

「絶対命令権の行使は無意味だ」

唐突な低い声に、いつの間にか俯かせていた顔を上げる。

「…え?」
「お前の使い魔は全員弾き飛ばされ霊基消滅し、かの天文台へ強制送還されている。編成値超過のためだろう。お前の使い魔はここへ来る事はできない。至れるはずもない」

どうしてカルデアのことを知っている。どうして、考えていたことに返事が出来る。
霊基消滅、強制送還、編成値超過。聞き取りづらい単語がいくつも並んだが、皆に危険が差し迫っていることは理解できた。

「皆は無事なのか!?」
「騒ぐなマグル風情が。ああ忌々しい。神代の魔術師ならまだしも、この俺様が、魔力も十分に持ち合わせていない穢れた血の世話などと」

音もなく男が席を立った。ごくりと唾を飲み込む。立香の思う以上に、男の背は高かった。

「身の程を知れ、凡庸。あれがしつこく言うから捨て置いてやっているのだ。その命、俺様の手の上と教える必要があるか?従順さは徳だと、死ぬ前に分からせてやろうか?」

男の手がするりと懐に伸びる。白く、鋭利な棒は刃のひとつもついてはいなかったが、脅迫されている立香の目にはナイフよりも鋭い何かに見えた。







++++++++++++
亜種特異点□
人理定礎値:??
A.D. 1999
不死魍魎魔城 ホグワーツ
−すべてが平和になるその前に−

※特殊ギミック
魔力の膨張
世界に満ちた魔力の影響を受け、すべてが2倍となるギミック。
サーヴァントのレベル値はそのままに、HP値、ATK値、スキル使用におけるバフ値、ステータス値がすべて2倍となる。獲得経験値や獲得絆レベル値も2倍となるため、ある意味恩恵ともいえる。

ただし、デメリットもすべて2倍。
スキル使用におけるターン間隔、制限、魅了やスタン等における行動不能ターン間隔、エネミーからの攻撃値、デバフ値など。
耐久戦よりも迅速な撃破が求められる。

最も大きなデメリットは編成のコストにある。
編成最大値はそのままに、レアリティによるサーヴァント、概念礼装のコスト値がすべて2倍となる。
レアリティの低いサーヴァントを育てておけば僥倖。そうでなければ、おおよそ全ての戦闘における編成を再考させられることとなるだろう。



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