設定C−2


「ストップ」

ぱしん。渇いた音が響いて、おそるおそる目を開ける。男の手が、誰かの手に捉えられていた。

「脅しはダメつったろ」
「………貴様」
「ドスの効いた声で唸ってガンくれたって痛くもかゆくもねえよ。ほら少年、大丈夫か?」

男の背後からくるりと回り込んで立香に手を差し伸べたのは、また違う男だった。
目深に被っているローブから見えたのは、赤い髪に赤い目。黒い髪の青年とは対照的に、なんだか口が悪い。ぽん、と頭を撫でてくる手に安心して、少しだけ息を吐き出した。いつのまにか、息を止めていたようだ。

「あーあー、怯え切っちゃってまあ。ちょっと脅しすぎじゃない?この子が俺達の要求呑んでくんなかったらどうしてくれんの?お前ひとりが座に還ってくれんの?」
「黙れ。俺様の魔力の貯蔵はまだ十分にある。無様に消え去るのは貴様だけだ」
「いや一緒だろ。単独行動スキル持ってないくせに見栄張ってんなよ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」

視線をかち合わせてから二言三言で剣呑な雰囲気を纏わせ始めた男二人に、立香は慌てて手を挙げた。挙げてから、特に続く言葉を思いついていないことを自覚する。
えっと、と言葉を続けながら、二人の言い合いを思い出した。得体のしれない二人だが、彼らは立香にも覚えのある言葉を口にしていたのだ。もしかして。

「二人は、サーヴァントなの?」
「──ほう」

黒い髪の男の目がスッと細くなった。ごくり、と唾を飲みこむ。
出会ってから今までの短い間だけでも、この男に地雷原が多そうだというのはなんとなく、理解していた。どうやらまたしても地雷を踏んでしまったらしい。

「俺様を。この俺様を、使い魔と称するか。貴様の傍に侍る万夫と同列だと?身の程を弁え──ふぐっ」
「はいはいはい黙れーこれ以上脅すなー」

黒髪の男が顎に掌底を当てられ、思いきり仰け反った。

「話が進まねえよ。交渉する気がないんだったら引っ込んでろ」
「………」

睨み合うこと数秒。チッと思いきり舌打ちを零した男は踵を返し、再び暖炉の前を陣取った。曰く、『交渉』は立香の前の青年に一任するらしい。

「ごめんな。アレでもまだ会話してくれてる方なんだ」
「(アレで!?)」
「──さて少年。まずは掛けて」

暖炉の前のソファよりも、やや固そうな椅子を案内される。それでもふかふかだったので、立香の気は少し休まった。

「君はカルデアから来たマスターってことで、間違いないんだな?」
「あ、はい」
「一緒にレイシフトして来たサーヴァントは何騎いた?」
「…えっと」

立香は言い淀んだ。
英霊は、顕界する時にある程度の知識を聖杯から与えられるらしい。それは分かる。だが、彼らはこちらの事情に精通しすぎではないだろうか。一緒にレイシフトしてきたサーヴァントが強制退去させられたと断言した青年をちらりと振り返る。
目の前の青年は困ったように微笑んだ。

「できれば、素直に喋ってほしいんだけど」
「…オレが言わなくても、あの人はよく知ってるみたいでした」
「あいつがいくらソレっぽく語ったって、推測に過ぎないよ。俺達は事実が知りたいんだ。そうでなきゃ、今後の方針が決まらないからね」
「………」

青年がひとつため息をついたので、立香はびく、と肩を揺らした。

「じゃ、俺達から話そう」
「おい」
「外野は文句言わない」

ぴしゃりと撥ねつけた赤い髪の青年はまず初めに、と言葉をきった。

「君の推測通り、俺達はサーヴァントだ。でも、この時代の誰かに召喚されたわけじゃない。気付いたら俺達はここにいて、でも幽霊になったわけでもなくて、英霊という、生きた頃の影を映している存在なんだって漠然と理解してた」
「影…」
「俺は生来、魔術師だのや聖杯だのに関わらず生きていてね。感覚的に、『それ』に近いなって思っただけ」

ざあざあ、と雑音が遠くに聞こえた。雨が降り始めたらしい。

「君は、この時代や世界のことをどこまで理解してる?」
「…1999年のイギリス、としか」
「時代と国だけ?それじゃ話が早い」

青年はポケットから木製の棒のようなものを取り出した。下の方を握り、慣れた手つきで棒の先をくるりと向きを変える。
次の瞬間、部屋に満ちていた灯りが消えた。

「え!?」
「──この世界は、君の知る世界とは少しばかり常識が違う。魔術や聖杯よりもうひとつ、ことわりを飛び越えていると考えてくれ」

棒の先から、ふわふわとした形の光源がつくり出されていく。

「ここにはふたつの世界が共存している。ひとつは、ごく普通の人間の世界。もうひとつは、魔法を操る人間の世界」
「ま、ほう」
「生まれつき魔法の力を持って生まれた子どもは、一般的に魔法を学ぶために学校へ通い、魔法使いや魔女がつくった魔法界で生きていくことになる。君が今座っているのは、イギリスの魔法学校がある場所から100キロ離れた森だ」
「…魔法、は」

魔法は、たった五つしかこの世に存在しないのだと、稀代の魔女が言っていた。けれど目の前の彼は、生まれつき魔法の力を持って生まれた子どもがいるという。彼らは学校通い、彼らが独自に形成してきた社会で生きるのだという。
理解が追いつかないまま、つっかえつっかえ、立香は質問した。

「魔術とは、違うの?」
「まったくの別物だと思ってくれ。魔法使いが魔術を使うことはできないし、魔術師が魔法を使うことはできない」
「…でも、」
「そう。本来交わるはずのない世界が繋がった。生前魔法使いだった俺達がサーヴァントとなり、魔術師である君は魔法界へやって来た」

立香は、脳裏に魔術王ソロモンの作った概念術式、魔神王ゲーティアのことを思い浮かべていた。
彼の、神に至る大偉業はこの手で阻止した。けれど、彼の残した魔神柱のうちの何柱は未だ健在であり、歴史を狂わせる特異点として聖杯を所有している。

「──聖杯」
「え?」
「もしかすると、魔神柱が聖杯を使ったのかもしれない」

曰く、交わるはずのない世界を交錯させることだって、万能の願望器なら可能だろう。そう願いさえすれば。
立香はカルデアが今まで行ってきたことと、そして自らの推測を語った。

「なるほどね」

青年はうーん、と声に出して悩んでみせると組んでいた腕をほどいた。

「魔術と魔法を繋げるなんて願望を持ちそうな人に心あたりはないけど、とにかく、魔神柱ってのは協力者がいないと動けないんだな?」
「うん。今までも、魔神柱が表に出てくるようなことはなかった。魔神柱は聖杯を与えて持ち主に混乱を引き起こさせるんだ」
「…混乱」

青年はよし、と頷いた。

「君は頼れるサーヴァントがいない。ついでに、カルデアとの連絡もとれない」
「…はい」
「俺達はマスターのいない、魔力の枯渇を待つだけのサーヴァント。ここはひとつ仮契約を結んで、状況の打破といかないか?」

結果として、立香は承諾した。
もともと聖杯探索は、自分ひとりではどうにもならなかったものだ。相手側にどんな意図があるにせよ、協力者がいるのは心強かった。

「契約結んでって言っといてなんだけど、真名明かせないんだよな。悪い」
「それは、構わないです」

契約当初はそれぞれ事情があって真名を明かせなかったサーヴァントがいたことを明かすと、青年は目をきらきらさせた。

「マジで?やったなおい!」
「叩くな。殺すぞ」
「なあ、その英霊達はどんな感じで真名をごまかしてたんだ?」

射殺すような目で睨まれているのをガン無視しているのが気になりすぎる。立香はごくりと、幾度目になるか分からないほど唾を飲み込んだ。

「えっと、新宿のアーチャーとか、不夜城のアサシンとか…」
「へえ。それじゃ」

赤い目の青年はにやっと笑って、立香に手を差し伸べた。

「騎士団のキャスターだ。ま、仲良くしてくれな。マスター」

おそるおそる手を握り返すと、ブンブンと振られたあげく頭をわしゃわしゃにされた。いつのまにか、テントの中の灯りはもとに戻されていた。こんな内装のテントを『テント』と言っていいのか怪しいけれど。
騎士団のキャスターが、そっぽを向いていたもうひとりの青年を小突く。

「俺様は俺様の名以外を名乗るつもりはない。クラスはアヴェンジャーだ。言っておくが、お前をマスターなどと呼ぶ気はない」
「こいつはザリンでいいよ」
「貴様そんなに殺されたいのか?」

ああ、マシュが恋しい。
立香は目の前の毒舌合戦を仲裁しながら、ため息をついた。










・マテリアルが更新されました。




騎士団のキャスター

・キャラクター詳細
飄々とした口調、面白いものを見るような眼差しはふとした時に姿を消す。
騎士団を名乗るにはいささか軽薄が過ぎる。真面目に何かを考えているようで、実際は考えていないのかもしれない。
「失礼な!マーリンの髭!俺は昔からたった一人のための騎士だよ。ずっとずっと、前からね」

・ステータス
筋力C、耐久B
敏腕D、魔力A
幸運D、宝具B

・保有スキル
 治癒の心得B
 …味方全体の弱体解除

 指揮の真似事C
 …味方全体の攻撃力アップ

 不屈の精神B
 …自身にガッツ状態を付与

・クラススキル
 大魔力B
 …自身の弱体耐性をアップ

・宝具
???(Quick)(対軍宝具)
全体に強力な攻撃+敵全体の弱体耐性を大ダウン(1ターン)



死のアヴェンジャー

・キャラクター詳細
かつて、彼は死へと羽ばたいた。死を貶めるために。死を克服せんがために。
誰より死を厭い、誰より死を憎み、誰より──死を求めた。

・ステータス
筋力D、耐久C
敏腕C、魔力A+
幸運E、宝具A

・保有スキル
 自己改造EX
 …自身のスター発生率をアップ+自身の攻撃力をアップ(2ターン)

 開心術A
 …自身に弱体無効状態を付与(3ターン) 

 深淵にてB
 …敵単体の即死耐性をダウン+自身のBusterカード性能をアップ

・クラススキル
 復讐者A
 …自身の被ダメージ時のNP獲得量をアップ+自身を除く味方全体(控え含む)弱体耐性をダウン

 忘却補正B
 …自身のクリティカル威力をアップ
 
 自己回復A+
 …自身に毎ターンNP獲得状態を付与
 
・宝具
???(Buster)(対人宝具)
敵単体の強化状態を解除&敵単体に超強力な攻撃&高確率で即死効果(オーバーチャージで効果アップ)




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