エンドE
どこへ行こうか
選択……メインフロア『アトランティス』/ リストランテ・アクアリオ
→ メインフロア・アトランティス
深海に沈んだ古代帝国、『アトランティス』の名を冠するメインフロアは四方八方を水槽に囲まれており、その名の通り楽園の遺跡に迷い込んでしまったかの様に錯覚してしまう。特に、フロアの中央を陣取る円形型アクリル水槽は巨大な万華鏡にも見え、薄暗い照明の光を浴びる万華鏡の中では悠々自適に水中を浮遊する数十種のクラゲを観察できる。
ここに住めたらどれだけ素敵だろう。そう考えてしまうくらいには、不思議な魅力に溢れていた。
「零魔ちゃん、やっぱりここが一番お気に入り?」
ぱしゃ、と水しぶきにしてはどこか無機質な音が響く。
水槽を漂うアカクラゲの影から顔を覗かせたのは、愛用のカメラを構えたぶるーくさんだった。
「ぇへ、可愛い顔してたから撮っちゃった!僕もね、ここが一番お気に入り。クラゲってふわふわしてて、抱き枕にしたら気持ち良く寝ちゃえそうだよね」
ぶるーくさんにぎゅうぎゅう抱き締められたかと思えば、パッと離されて水槽の前まで背中を押される。
「零魔ちゃん、ここでならゆっくりお休みできるよ」
先程までぶるーくさんを隠していたアカクラゲが、こちらに手を差し出す。
選択……まだ眠る時間じゃない/手を伸ばすのは少し怖い。
…手を伸ばすのは少し怖い
「怖い?大丈夫だよ、僕と二人で夢の中に行こうね」
背後からぶるーくさんに手を取られ、アクリル板という隔たりが無くなったアカクラゲのカサの縁から伸びる触手が腕へと絡まる。獲物を決して逃さないよう返しの付いた刺胞が肌を刺すが、不思議と多幸感に襲われた。
リボン状の口腕の中央に位置する口ががぱりと広がり、梅雨時の霧雨の様な心地よい冷たさの中へと取り込まれる。底冷えするような海から私達を守る揺籠のように、ゆらゆらふあふあと揺れるこの子の中は酷く私を落ち着かせた。段々と霞が掛かる思考と視界に抗っていると、ぶるーくさんの手がそっと私の瞼を下ろす。
「よしよし、何にも怖いことなんてないからね。悪い夢を見ないように、僕がずっと側にいてあげる」
夢の中で何しよっか。何でも僕の思い通りにできちゃうから、やりたいこと全部やっちゃおうね。現実も『この夢』も全部忘れさせてあげるし、その代わりに新しい素敵な夢を見せてあげる。なかむ達には怒られちゃうかもしれないけど、零魔ちゃんは僕を選んだもん。えへへ、ウチらってやっぱ運命だねぇ。
「おやすみ零魔ちゃん、また夢の中で」
エンドE 胃袋の揺籠