(101 / 293) ラビットガール (101)

アスカは今…何故かサンジと時計台を登っていた。
それは途中にあったウソップからの伝言で『時計台』と書かれていたからであるのだが…


(別に時計台を登るって意味じゃないと思うんだけど…)


アスカは階段をのぼりながらそう心の中で呟く。
口に出さないのはアスカも確証はないからである。
ウソップのメッセージではただ『時計台』とだけしか書かれていなかったため、アスカもはっきりとは言えなかった。
しかし時計台を上ってもウソップとビビどころかナミ達もおらず、女性限定での地獄耳のサンジがビビとナミの声を聞き分け『ナミさんとビビちゃんの声がする…!』と時計台から顔を覗かせる。
それを見てアスカは…


(サンジって、たまに人間離れしてるよね…)


と真面目に思ってしまった。
しかし女絡みではハズレた事はなく、サンジの真似をするようにアスカも時計台の下を覗き込むように顔を出す。
そこには小さいが見慣れた顔ぶれがちらほらおり、アスカは『ナミさーん!ビビちゃーーん!』と整った顔をデレデレと台無しにしながら2人だけに手を振るサンジを見て『……やっぱり、サンジって、人間離れしてる…』と心の底から思った。


「お〜いっ!ナミさーん!ビビちゃーん!」

「って何でお前がそこにいるんだーーっ!!」


女性陣だけに手を振るサンジに下からウソップの突っ込みが上がり、サンジはそこでようやく男性陣にも気づく。
サンジはウソップの突っ込みに首を傾げて答えた。


「何でって…てめェが煙の下にメッセージ残してたろ。"時計台"って書いてあったから登ってきたんじゃねェか」

「ねェ!私達どうすればいい!?砲撃手ってどこにいるの!?」

「てっぺんだてっぺん!そのまま登ってブッ飛ばして…」


呆れたように呟くサンジの横からアスカはウソップ達に聞こえるよう大声で指示をm止める。
ウソップはアスカの言葉に上を指さしかけたその時…


「よォ!!探したぞお前ら!!!」

「ゾロお前もかァ!!!」

「っていうかあんたまた迷子なの!?」

「うっせェ!!迷子じゃねェよ!!海軍の奴が北へ行け北へ行けって言うからひとまずここに登ったんだ!」

「それ普通に迷子だよ!!っていうかさ!"北"と"上"は全然違うからね!?」


サンジ達よりも更に上にゾロの姿が見えた。
サンジとアスカに続きゾロまでもが時計塔を登っていたようで、迷子を迷子と認めないゾロにアスカは頭を抱えかける。
しかも海軍の手助けがありながらも迷子というトリプル奇跡である。


「とにかくでかした!!そっから上へ行って…」

「ダメ…」


迷子か迷子ではないかはここはまず置いといて…ウソップはゾロ達に上へと登ってもらおうとした。
だがウソップの言葉にビビが首を振る。


「3人の位置からじゃ時計台の内部へは入れない…!あそこへ行くには一階の奥にある階段が唯一の到達手段なの…!!」

「でも…ゾロならあの塔の壁を壊して…」

「そんな衝撃に耐えられる砲弾とは限らないわ!!やっぱり階段から行くしか……!!」

「待ってビビ!!いい考えがある!!!」


構造はビビが詳しく、ビビが言うのだから間違いはないだろう。
アスカはビビの言葉を聞きながら内心『えっ…じゃあ登り損じゃん…』と思ったが、体力を使ったのはサンジとゾロとウサギなわけで…アスカはただウサギに乗っていただけである。
3人の位置では間に合わないとビビが中に入ろうとしたのだが、ナミが声をかけて止める。
その瞬間、戦場に不似合いな明るい笑い声が響く。
その声に顔をあげると、時計の部分が開き中から男女一組が現れた。


「ねー聞いてMr.7!あたし知ってんの!これってあたし達の最終任務なの!」

「オホホホホ!そういうスンポーだね!オホホホホ!!」

「なにあれ!!」

「うわっ…変な格好…カエルと貴族?」

「Mr.7!?」


時計の部分から姿を現した男女…それはMr.7とその相棒、ミス・ファーザーズデーだった。


「そろそろよっ!Mr.7!!」

「点火の準備よ〜〜〜〜し!!オホホホホ!」


ミス・ファーザーズデーの合図にMr.7は手に持っていたマッチに火をつけ、導火線に点火する。
それを見たナミは大雑把に思いついた作戦を説明をし、急いでウソップにチョッパーとビビを乗せ、時計台の前に立たせる。


「おい!ナミ一体何しようってんだ!?本当に時間がねェんだぞ!?しくじったら死ぬんだぞ!!」

「わかってるわよそんな事!大人しくそこに立ってて!今計算中なのっ!」

「大人しくってこの体勢も意味わかんねェぞ!!何する気なんだてめェは一体!?」

「やればわかるからっ!!いくわよ!!」


時間がないために大雑把な説明に不安がるウソップの喚く。
ナミはそんなウソップを無視し頭の回転をフルに使い計算をし終えた後、ウソップに『サイクロン=テンポ』を放った。


「天候は…"台風"!!"サイクロン=テンポ"」


ナミの武器は偶然か計算済みか…なぜかウソップの股間に当たり、ウソップが激痛に耐えていたその瞬間爆発し、上に飛ぶ。


「何だ!?登ってきた!?」

「チョッパー!サンジ君のとこまでジャンプ!!」

「ええ!?」

「まさか…この作戦って…!このまま飛んで上まで登れって事!?」


ここでビビがナミが立てた作戦に気付く。
本当にこれで上へあがれるかは分からないが、とにかくやったからにはナミを信じるしかなく、ビビは決意を固める。
ナミは見上げてまだ説明しきれていないサンジに叫んだ。


「サンジ君!後はわかるでしょ!?時間がないの!!」

「だいたい見当はつくものの…!おし!まァやるしかねェか!」


下にいるビビ達には大雑把だが説明は出来た。
しかし時計台を登っていたアスカ達には説明する時間も余裕もなく、無理難題だと分かりつつもサンジ達に任せてしまう。
こちらに向かって上がってくるビビとチョッパーに何となく読めたサンジはうだうだ言っても仕方ないと空中へとダイブする。
アスカはそれを見て手首に巻き付いているシュラハテンに触れる。


「考えてるヒマないみたい!お願いトニー君!」

「よーし!!しっかり捕まって!ビビ!!」


ビビ達もやりだしてしまったのは仕方ないと、ナミの作戦通りウソップを踏み台により高くジャンプする。
ウソップはあまりの事に悲鳴一つ上げず踏み台にされ地面へと落ちていく。


「チャッパー!右足に乗れ!」

「うんっ!!」


サンジは空中で身動きが取れにくい中、チョッパーを足に乗せ高く上げる。


「そら行ったぞゾロォ!!」

「よしっ!さすが!アスカ!あとはよろしく!」

「分かった!」


アスカは役目を終えたサンジをシュラハテンを使って落ちるのを阻止し、サンジはビビ達を見送りながら時計台に戻っていく。


「あ、ありがとう…アスカちゃん…」

「どういたしまして。」


足をシュラハテンが絡みついて引っ張る形だったため、勢い余ってサンジは戻ってきた際壁にぶつかってしまった。
とりあえず助けてくれたものは変わりないとフェミニストな彼はアスカにお礼を言った。
サンジのお礼に返しながら、アスカは次に落ちるであろうゾロに備えて覗き込む。


「あのてっぺんへ吹き飛ばしゃあいいんだな…よし任せろ!」

「刀ァ!?」

「馬鹿、ビビんな。"峰"で行く!しっかり乗れ!!」


ゾロもなんとなくナミのしたいことを察し、刀を抜く。
刀を抜いたゾロにチョッパーが慌てるが、ゾロは刃から峰の部分に変え、チョッパーを乗せる。


「気ィつけろビビ!!上に変なのがいるぜ!」

「…ええ、顔馴染!」

「…ん?オホホ!ミス・ウェ〜〜ンズデイ!!」

「ゲロゲロ!あたし知ってんの!アイツ我が社の裏切り者よ!!」

「うそ…気づかれたっ!!」

「何ィ!?」

「ちょっと待てよ!ここはもう空中だぞ狙い撃ちでもされたら!!」

「ゾロ!!そのままチョッパーを投げて!!!あとは私がなんとかするから!!」

「!?――わかった!!」


Mr.7達に気づかれゾロはそのまま自分の身を犠牲にビビ達を上へと持っていこうとした。
しかしその前に下から顔を覗かせるアスカの言葉にゾロは考えるよりも頷き、計画通りビビを乗せたチョッパーを投げる。


「「"レディスマッシュ"!!」」


今更何をするのかと嘲笑いながらMr.7達は持っていた銃をゾロに向けて放つ。
銃声を聞いたのと同時にアスカは指を鳴らし、ウサギを召喚した。
アスカが指を鳴らした瞬間、ポンポンとゾロの前にウサギが現れる。


「ねー!聞いてあたし達の銃弾は…」

「衝突し破裂するスンポー!!!」

「あっそう!だったらゾロ達に衝突させなければいいことでしょ!!」


ウサギが浮いているわけではない。
ゾロと同じく落ちているのだ。
その何羽ものウサギが盾となりゾロの代わりに衝突したら破裂するという弾を受けドドーン!と音をさせ煙が立ち上がり、ゾロの目の前に浮いていたウサギ達は散っていく。


「ゲロゲロゲロ!やったわね!」

「オホホホ!!」


ウサギが現れたのは一瞬の出来事で、敵側からしたらゾロを討ち取ったと思ったらしく、二人は特徴ある笑い声で笑うが、煙の中からチョッパーが現れるがチョッパーは大男になりビビの姿はなかった。
それに驚きながらも二人はチョッパーに向けて再び銃を撃つがチョッパーは小さくになり回避する。


「ミス・ウェンズデーはっ!?」

「どうなったスンポーだ!?」


いるはずのビビがおらず周りを見渡すがビビの姿はない。
しかし…


「!!」

「上か!!」


チョッパーに投げられ、ビビはいた。
ビビは小指に武器をつけ"孔雀ー連スラッシャー"で2人を時計台から落とし、点火した導火線を切って止める。
敵が落ちていくのを目で追いながらアスカは再び顔を上げて上の様子を見る。


「静かになった…そろそろ降りようか」

「あ、あぁ…」


ゾロとチョッパーをサンジと同じ方法で救出した後、アスカはゼーハーと息を荒くする男陣を振り返る。
どうやら敵は倒されたし導火線も消したと読んだアスカはとりあえず下へ戻ろうと提案し、その提案に男達は頷く。
その頷いた男達を見たアスカは一匹のウサギを取り出す。


「"ラビット・トランポリン"」

「きゅっ!」


そしてなんとアスカはそのウサギを手に下を覗き込んだ後、ポイッと投げ捨てた。
動物を投げ捨てたアスカにチョッパーは大の字になっていた体をガバリと起き上がらせ慌てて下を覗き込む。


「アスカーー!!!?何してるんだよ!死んじゃうだろ!!」


チョッパーは慌てて下を覗き込むアスカの隣で同じく下を覗く。
本来なら、こんな高いところで落とされればあんな小さな命散ってしまうか大怪我をするか、なのだが…チョッパーの目線の先には円状形の白いものが見た。
円状形の白い物は見えたが普通サイズのウサギの姿がどこにもなく、チョッパーはあちこち目線をやった後、どこにもない白い塊に首を傾げる。
そんな不思議そうなチョッパーの疑問をアスカは察し教えてやるため円状形の白い物を指さす。


「あ、あれ?ウサギは?」

「ああ、"ラビット・マット"はクッションみたいに変わるの」

「え?」


本人は説明しているつもりなのだろう。
が、説明が説明になっていなかった。
首を更に傾げるチョッパーにアスカはそれ以上説明せず『ということで…』とアスカは倒れているサンジの足を手をウサギにして掴み、先ほどのウサギのように軽々と外へと投げる。
アスカの行動にチョッパーは先ほどよりもギョッとさせた。


「サンジーーー!!?」


落とされるサンジに手を伸ばしても短い手では届かず、ああああああ…と叫びながら落ちていくサンジを見送るしかなかった。
アスカに『何してるんだよ!!アスカ!!仲間だろ!?』と訴えようとした矢先、落とされたはずのサンジは地面にめり込むこともなく、更には怪我をするでもなく…あの謎の白い円状のモノの上に着地し、ポフン、と柔らかそうな音をさせて数回弾み怪我無く下へ着地する。
チョッパーは驚きながらサンジの無事を見てホッと息をつく。


「じゃ、次ゾロね。」

「ちょ、ま…まて!おれはいい!!階段で降りる!!だから!!だから…ッ!!待ってって言ってんだろオオオオオ!!!!」

「ゾローーーッ!!!!」


ゾロもサンジが落とされ唖然としていたが、しかし、息つく間もなく続いてゾロがサンジ同じく足を掴まれズルズルと引きずられていく。
ゾロはサンジと同じ道を歩むことになると察し慌てて地面に爪を立てたが、能力を使えば一味で一番の力持ちのアスカには勝てず、ゾロの叫びなど無視しアスカは容赦なくポイッとゾロの体重などを感じさせない投げ方でゾロを投げた。
そして、ゾロも叫びながら落ちていく。


「よし!」

「うぇええええ!!?」


下を覗き込み、ゾロの着地を見てアスカはチョッパーを抱いて戸惑うなく飛び降りた。
チョッパーは恐怖からアスカに抱きつき目を瞑るが、やはり痛みはなく、ポヨンと柔らかい音が耳に入るだけだった。


「ご苦労様」

「きゅ!」


アスカは平気そうにしているが、落とされたチョッパーは恐怖に涙を流して気絶し、ナミ達に降ろされたが、突然心の準備もなく落とされたため、サンジとゾロは息を荒くして跪いていた。
ナミもウソップも最初こそ驚いたが、次から次へと落とされるため驚く暇さえなかった。
ただ落ちてきてウサギを戻すアスカに『お前…鬼か』と零しただけに終える。

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