(102 / 293) ラビットガール (102)

導火線はビビが消してくれた。
しかし、クロコダイルはMr.7が失敗するのも予測して時限爆弾を仕掛けていた。
解除するにも時間もなく、このままでは爆発するだけだと思たその時、ペルが現れた。
ペルは能力で鳥となりそのまま爆弾を掴んで空中に飛んで行った。
そして――――…







内戦は終わった。
あの後兵たちや反乱軍達は爆発音や衝撃を受けても手を止めることはなかった。
彼らを動かしているのは狂気や憎悪で、誰一人理性を保っているのはいなかっただろう。
ビビはそれでも人々を止めようとした。
時計塔から必死に叫んで、ペルが命を懸けて脱した危機を無駄にしないように。
しかし狂気に埋もれた戦場では一人の少女の声は誰一人の耳にも届かず、彼らの雄たけびに埋もれてしまう。
ナミ達もビビのためにと戦い続ける兵士や反乱軍を止めようとそれぞれ戦場を駆けた。
しかしそれでも狂気で理性を失った人間は中々我に返ってくれることはなく、だがそれでもビビもナミ達も必死になっていた。
その時、上空から一人の男が降って落ちてきた。
その男が降って落ちたことで、あれほど高まっていた興奮や狂気があっという間に治まったのだ。
それもそのはずである。
落ちてきたのはこの国の英雄とまで言われた男であり、そしてこの戦争のきっかけを作った男である―――クロコダイルだった。
ルフィがクロコダイルを倒し、そしてビビの声が降ってきた雨と共に戦場に届き…―――ようやく、戦争は終わった。







雨が降っている中、アスカ達は重い体を動かしルフィを探しに広間から姿を消した。


「おい、お前しっかり歩けよ!!」

「ああ…それが聞いてくれ…『これ以上歩いたら死んでしまう病』に…」

「じゃそこにいろ」

「待てったら!!!」


傍から見れば一番の重傷は包帯男と化しているウソップである。
チョッパーに続きウソップの足を引っ張ってやっていると、前方から一人の見知らぬ男が歩いてきており、その男の背中には探し人であるルフィが背負わされていた。


「お、いた。」


最初に声を発したのはサンジだった。
サンジとゾロの少し後ろで歩いていたアスカは男の背中にいるルフィを見て2人の隙間から男へ駆け寄る。
男はアスカを目で追う。
アスカは男を眼中に入れていないのか、男に背負われているためいつもより高い位置にあるルフィの顔を覗き込み心配そうに…否、泣きそうにルフィの頬へ恐る恐る手を伸ばす。
その手があまりにも小さくて、そしてあまりにも震えていて…男は警戒よりもアスカの不安を取り除きたいという感情が強くなる。


「大丈夫だ…気を失っているだけで命に別状はない」


アスカの身長は男の娘よりも低く、華奢で、まさに少女。
娘を持つ父親だからこそ、アスカを優しい声で宥めるようにルフィが無事だということを教えてやる。
アスカは男の言葉でようやくルフィしか見ていなかった金の瞳に男を写し、男の言葉を信じたのかあからさまに不安そうで泣きそうな表情をホッと安堵した表情へと変える。
まだ雨ではない雫に濡れ、揺れている瞳はそのままだが、ルフィが死んでいるわけではなく命の危機でもないと知って不安を消したアスカに男も安堵した。
そして男はこちらに手を伸ばすアスカの意を汲み、ルフィを背中から降ろした。
アスカはルフィの傍に座って荒れて雨で肌にくっつくルフィの髪を撫でるように直していた。
それを見下ろしていた男はサンジ達へと目をやる。


「君達は?」

「あァ、あんたそいつを運んでくれてありがとう。ウチのなんだ引き取るよ」

「…では君らかね…ビビをこの国まで連れてきてくれた海賊たちとは」

「あ?おっさん誰だ?」

「――――みんな!!…パパ!!?」

「!?―――パ、パパ!?ビビちゃんのお父様!?」


男とサンジ達は初対面である。
それがどうしてビビの事を知って、自分達が海賊だとも知っているのか、とサンジ達は警戒した。
今この国には国民達の他にもB・Wの社員たち、そして海軍がいる。
B・Wの残党が襲ってこないとも限らないし、海軍達が捕まえにこないとも限らない。
警戒しているサンジに男が口を開きかけた時、ビビがサンジ達に駆け寄ってきていた。
そのビビの言葉で、ルフィを背負ってここまで連れて来てくれた男がビビの父…アラバスタの国王だと知る。
ビビも父であるコブラがいるのに驚きながらも駆け足でサンジ達のもとへと到着した。


「一度は死ぬ覚悟をしたが彼に救われたのだ…クロコダイルと戦ったその体で人2人かかえて地上へ飛び出した…信じ難い力だ…」

「じゃあその"毒"ってのはもういいわけだ」

「ああ、中和されたハズだ…だがケガの手当てをせねば…君たちもな…」


コブラが何が起こったのか説明をしてくれた。
クロコダイルの武器に毒が仕込んであったのだと聞いたアスカは顔色を思いっきり青くさせるも、中和したと聞くと血の気が戻り安堵する。
ゾロは一応周りを警戒し、何もないと分かるとドサリとアスカとは反対のルフィの傍に壁を背もたれに腰を下ろす。


「それよりビビ早く行けよ」

「え?」

「広場へ戻れ」


刀を肩にかけながらゾロはビビに声をかけ、ビビはゾロの言葉に小首を傾げた。
ゾロの言葉にウソップも頷いて続ける。


「そりゃそうだ。せっかく止まった国の反乱に…王や王女の言葉もナシじゃ…シマらねェもんな」

「ええ…だったらみんなの事も…」

「ビビちゃん分かってんだろ?おれ達ァフダツキだよ…国なんてもんに関わる気はねェ…」

「おれはハラがへった」

「私、ふかふかのベッドで寝たい」

「勝手に宮殿へ行ってるわ…ヘトヘトなの」


ビビとしては海賊でも彼らのおかげでこの国を救えたのだから国民にもそれを伝えたいと思っていた。
しかし海賊は海賊。
ルフィ達がいくら王女と共に国を救った英雄だとしても、所詮は海賊なのだ。
それを理解しているのは海賊だからだろう。
ビビも海賊である彼らと共に行動し、それを理解しているのか、みんなの言葉にビビは頷き父と共に広場へと戻っていく。
2人の姿が小さくなっていったその時、ナミ達はその場に力尽きて倒れてしまう。
アスカもそのまま気を失い、ルフィの腹部あたりに頭を預ける形で倒れた。


「……………」


そんなナミ達のもとに一人の女性が現れ、ルフィとアスカを優しい目で見下ろしていた。

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