(107 / 293) ラビットガール (107)

「ん待っっっっっっってたわよアンタ達っ!!おシサシブリねいっ!!」


カルガモ部隊に送ってもらい、アスカは船に着いた。
しかし無人だと思っていたサニー号には人が乗っており、見たくもないが見慣れた人影にアスカは軽いため息をつく。


「さァ着いたぞ……」

「よーーし荷物下ろせ!ありがとな!お前ら!」

「クエー」

「グエー」

「クエエ」

「お前達ともここでお別れだ…気ィつけて帰れよ!」

「王とかちくわのおっさん達によろしくなァ!!」

「クエ〜〜〜〜ッ!!」

「元気でなァ〜!!」

「また…!……またいつの日か必ず会おうなァ〜〜!!――ってちょっと待てやァ!!」


アスカ達はボン・クレーを無視しカルガモ部隊から降りて帰っていく彼らを見送る。
その別れに感激し涙を流して手すりから立ち上がったボン・クレーも手を振って見送ったのだが、ノリツッコミのように先ほどまで手すりの上で地団太を踏む。
突然怒り出すボン・クレーにサンジは低い声をこぼす。


「何だよ…」

「何だよじゃナ〜〜イわよーーう!!そーゆー態度ってヨクないんジャナ〜〜イ!?ダチに対して!」


ボン・クレーは頬を膨らませそっぽを向くも、ルフィは本気で迷惑そうに見上げた。
ダチと言っても先ほどまで敵同士で、サンジの傷は当時相手にしていたボン・クレーがつけた傷である。
それをどうしたらまだダチだと思っているのか…アスカは先ほどよりも深く重いため息をつく。


「ダチって何だよ。お前敵だったんじゃねェか!ダマしやがって!」

「ダマしてないわよーーう!!あちしも知らなかったのよーう!!――でもまァ…もういいジャナイそんな事…」

「B・W社は滅んだのあちし達はもう敵同士なんかじゃない…」

「敵同士じゃなくても何でお前おれ達の船に乗ってんだよ。」


ボン・クレーに構っている暇はないため、ルフィが話している間に荷物を船内に運ぶ。
しかし階段の部分にはボン・クレーが陣取っているため邪魔でしかなく、ゾロからは『オイ横にずれろ』と言われてしまい、ボン・クレーは『あゴメンねい』と返しながら少し横にズレ道を開ける。
ゾロが開けてくれた道にサンジやアスカ達も次々と荷物を運んでいく。
そんなクルー達が荷物を運んでいる横で、ボン・クレーはルフィの言葉に大袈裟に溜息を付く。


「はふーコノスットコドッコイ」

「何だと!?」

「いィい!?あちしが今この船に乗ってなかったら、この船はドゥーなってたと思ってんの!?」

「海軍に奪われてたかもね」

「かもねじゃないわ!確実にやられてた!今この島がドゥーいう状態にあるか知ってる!?海軍船による完全フーサよ!封鎖っ!!スワン一羽も逃げられない !」


溜息疲れたルフィは苛立たせたが、次にボン・クレーの問いに首を傾げ、代わりに答えたナミの言葉に目を丸くした。


「じゃあお前…海軍からゴーイングメリー号を守ってくれたのか…?」

「なぜだ!!」

「何で!?」

「それは―――友達、だからよう…!」

「やっぱりお前はイイ奴だったんだァ!!」

「「「ジョ〜〜ダンじゃなーいわよーう!!」」」

「…………つまりあんたらも海軍の"海岸包囲"によって島を出られなくなって…味方を増やそうと考えたわけ?」


あんなにも疑い警戒していたというのに『友情』と出た途端に警戒も疑いもポイ捨てしたルフィ、ウソップ、チョッパーの三馬鹿にアスカは半目になりながら呆れ、バレバレなボン・クレーの本心を代弁した。
そのアスカの言葉にボン・クレーはドキリとさせ勢いよくマストの柱まで後ずさる。


「そ、そうよ!?こんな時こそ!こんな時代だからこそ!つどえ!!友情の名の下に!!!力を合わせて戦いましょ〜〜う!!!」

「「「うおおおお!!!」」」

「呆れた…」

「「「よろしくお願いしまーす」」」

「いたのかよっ!!」


三馬鹿はどうやら友情などに弱いのか、アスカからしたら言い訳でしかないその言葉に心打たれていた。
ボン・クレーの言葉に続き、実はいたらしいボン・クレーの部下が後ろからボン・クレーの船に乗って現れ、ゾロが突っ込みを入れた。
用意周到な彼らにアスカは呆れたように溜息をつきながら荷物を運ぶのを再開する。







ビビを待ち朝日が昇り周りが少しずつ明るくなり太陽もすっかり天高く現れたころ…案の定、メリー号は海軍に見つかってしまい、囲まれてしまった。
しかも砲弾で来てくれればルフィやゾロ、サンジが跳ね返してやれるのに、それを計算に入れてか海軍は鉄の槍で攻撃してきた。


「くっそ〜!!砲弾で来い!!!はね返してやるのに!!」

「まったくジョ〜〜ダンじゃナーイわよーう!!」

「こんな鉄の槍を船底にくらい続けたら沈むのは時間の問題だぞ!!」


メリー号は砲弾ではなく鉄の槍で攻撃され、すでに数発当たって船はボロボロだった。
海賊のルフィ達からしたら卑怯だと言わんばかりの鉄の槍の攻撃にルフィがうがー、と怒る。
しかしその間にも海軍は再び鉄の槍を放ち、こちらを沈みにかかっていた。


「来たァ!!」

「にゃろ!!!」

「………く…!!」

「オラァ〜〜〜!!!」

「何とかなんねェのか!!」


飛んで来た5本の槍はルフィ、ゾロ、サンジ、ボン・クレーの御蔭で防がれ、何とか沈まず済んだのだが反対方向から槍を放たれてしまう。
しかも挟み撃ちにされた。
反対側はルフィ、ゾロ、サンジが担当し、その反対をアスカとボン・クレーが槍を跳ね返そうとする。
しかし数本逃れても次々に新しい槍を放たれ、せっかく防げたというのに新たに放たれた槍が船に刺さる。


「何とかしてよあんた達!!」

「おい!!もう穴塞ぎきれねぇよ!!」

「一度には一面を守るのがやっとだ!!!」

「8隻相手じゃ手数が違いすぎる!!白兵戦ならこっちに分があるってのに!!」

「追おうが逃げようが…コイツラ絶対にこの陣営をくずさねェ!!」


戦力的にどちらかと言えばルフィ達の方が上である。
向う(海軍)側にも張り合える人物は乗っているだろうが、人数からしたらまだルフィ達の方が分があるはずだ。
しかし上官が有能なのか、海兵たちはメリー号とボン・クレーの船を囲むように配置され、動いてもその配置のまま海兵たちも動くため崩すにも崩せなかった。
それに悔しがっているとルフィ達が守っている側から聞き慣れた声が響く。


「黒檻部隊名物"黒オリの陣"!」

「てめぇらごときに破れるかぁ!!アホーー!!ア〜〜〜ホ〜〜っ!!」


そこに来たのは以前敵で海賊のはずのジャンゴと、海上レストランの時ルフィが足止めされた原因のフルボディが居た。
フルボディは面識がないためアスカは関心はなかったが、ジャンゴは一度戦った事があるため驚いて見せた。
ジャンゴは海賊だったはずなのだ。
それなのに海軍になり、自分たちを追い込んでいる。
姉から海軍が海賊になる話はよく聞いていたが、その逆はありえないことだとも聞いていたため驚きが隠せなかった。
ジャンゴが何かしようとしているようだが、その間にウソップの砲撃に沈むと呆気なく隣のフルボディの船を巻き込み沈んでいく。


「ウソップお前かぁ!!スゲェな!!」

「よ…よぉし計算どおりだおれにかかりゃあんなモンああだぜ!!」

「鼻ちゃんスゴイわ!!やったわねい!!南の陣営が崩れたっ!!あそこを一気に突破よう!!」

「ボン・クレー様大変です!!」

「ナ〜〜〜ニよーーーう!!」


ウソップも当たるとは思ってみなかったらしく唖然としていたが、ルフィの声にハッと我に返り計算通りということにした。
ボン・クレーがウソップの手柄を褒めていると部下が慌てた様子で駆け込んできた。
忙しい時に来られ苛立ちもそのままぶつけると部下は死にそうな顔をしながら震える指をどこかへ差す。


「"黒檻"です!!」

「ウゲッ!!」


部下が指差した先にはこの部隊の頂点である、大佐のヒナがいた。
ヒナの名にボン・クレーだけが嫌そうに顔を歪め、ルフィ達は聞き覚えのない名前に首をかしげる。


「何なんだ?」

「"黒檻のヒナ"!!この海域をナワバリとする本部大佐よう!!厄介なやつが出てきたわ!!さっさとトンズラぶっコクわよう!!」

「ハッ!!Mr2ボン・クレー様!!」


ルフィが問えばボン・クレーは応えてくれた。
大佐と聞きまず思い浮かべるのはやはりスモーカーで、そのスモーカーと同じ地位にいるということはヒナという海軍大佐もそれ同様の力を持っているということである。
ボン・クレーも慌てふためくほどの大佐にボン・クレーもそしてその部下も逃げ出そうとした。
しかし、ボン・クレーが逃げ出そうとする中で、ルフィ達は動かず、逃げ出す気はないようだった。


「何やってんのアンタ達ィ!逃ィーゲルのよう!!!あの南の一点を抜ければ被害を最小限に逃げ出せるわ!!!このまま進めば必ずやられるわよう!!?」

「行きたきゃ行けよおれたちはダメだ」


ルフィ達が逃げ出す気配がないためボン・クレーは慌てた様子で再度逃げ出すよう忠告する。
だが、返ってきた答えはやはり拒否だった。
それが信じられずボン・クレーは思わず大声を出してしまう。


「ダメだってナニが!!?」

「"東の港"に12時…約束があるの。回り込んでる時間はないわ!突っ切らなきゃ…」


逃げ出さない理由…それは約束だからだった。
その約束のために命を懸けるルフィ達にボン・クレーは鼻で笑う。


「ハン!…バカバカしい!!命はるほどの宝でも港に転がってるっての!?勝手に死になサイ!」

「仲間を迎えに行くんだ!!」

「!!!」


ルフィの言葉にボン・クレーは息を止め、衝撃を受ける。
仲間と書きダチと読む友のため、大佐であるヒナが迫っても彼らは誰も逃げ出そうと言いださない…それがまたボン・クレーの心を射止めた。
そして、自分たちでも逃げようと言いだす部下にボン・クレーは手すりに背を向ける。


「「「ボン・クレー様…!?」」」

「…ここで逃げるはオカマに非ず!!」

「「?」」


部下たちは一向に自分たちの船に戻ってこないボン・クレーに焦りを積もらせていた。
そんな部下たちにボン・クレーは背を向け、ぽつりとつぶやく。
ポツリと呟くボン・クレーに部下たちの騒然とした声はやんだ。


「命を賭けて友達を迎えに行く友達を……見捨てておめぇら明日食う飯が美味ェかよ!!!」

「「「………!!」」」

「いいか野郎共および麦ちゃんチームあちしの言う事よォく聞きねい!!」


ボン・クレーは友のため、仲間のために危険を冒してでも信じて待つルフィ達に心を打たれた。
そして、部下はその言葉にハッとさせボン・クレーと同様感激したように目を輝かせた。
アスカの目に、今…ボン・クレーは輝いていた。

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