ボン・クレー達の犠牲のおかげでルフィ達は海軍から逃げ切ることができた。
もうルフィ達の中ではボン・クレーは敵ではなく味方となっており、彼らの犠牲にルフィ、ウソップ、チョッパー、サンジは泣き崩れていた。
しかしいつまでも泣いていてビビとの約束を守れなかったら犠牲になってくれたボン・クレー達に申し訳けがたたず、ルフィ達は急いで約束の場所へと向かう。
しかし、約束の時間になってもビビは来ず…
海兵を撒き、目的の場所で未だ姿を現さないビビを待っていると、ビビのスピーチが聞こえてきていた。
アスカはそれを聞いてビビが来ないのだな、と冷静に分析する。
それはアスカだけではなく、サンジやゾロもそう思っているようで、船に縁に乗り出してチョッパーとビビを待つルフィに諦めるよう声をかける。
「聞こえたろ。今のスピーチ間違いなくビビの声だ。」
「アルバーナの式典の放送だぞ…もう来ねェと決めたのさ」
「……ビビの声に似てただけだ!」
どんなに諦めようと言ってもルフィは頑なに諦めようとはせず、船の縁に張り付いたままだった。
そんなルフィにサンジとゾロが溜息をつくの聞きながらアスカは静かに幼馴染の背を見上げ、
「ルフィ」
ただ、名を呼んだ。
アスカに名前を呼ばれても諦めていないルフィはこちらを見ようとはしない。
サンジの時も、ゾロの時も、ナミの時も、ウソップの時も、チョッパーの時も…ルフィはその頑固さで仲間にしたいと思った人たちを仲間にしてきた。
だがそんなルフィでも思い通りにはならない事もあるのだ。
それもビビは一国の王女である。
サンジ達との事情が違う。
多分背を向けているルフィもそれは理解しているのだろうが、如何せん、仲間に関したら我儘なルフィがそう簡単に諦めるわけでもなく、黙りこくって粘ろうとする幼馴染にアスカは内心ため息をつく。
「ルフィ、もう12時だよ…もう、ビビは来ないよ」
アスカはあえてルフィに現実を突きつけようとした。
ルフィが寂しいのと同じでアスカだってビビが来ないことは寂しいと思っている。
だが、ビビの事を思えば…王女という立場を思えば理解はできる。
それにアスカはどちらかと言えば冷めている性格であると自覚しているためいつかこの寂しさも忘れるだろうと思っているから諦めきれた。
しかしルフィはそれができない。
アスカの言葉にルフィはむっとさせながら振り返りアスカを睨む。
「来てねェわけねェだろ!下りて探そう!いるから!!」
「いい加減にしなよ、ルフィ…ビビにはビビの事情があるんだから…ゾロ達とは違うんだよ?」
「どこが違うってんだよ!!ビビはビビだろ!!?」
「でもビビは王女だ」
「だから王女だからってなんだよ!!関係ねェだろ!!」
「ある。」
「ねェ!!」
「お、おいおい!!喧嘩してる暇ねェぞ!!まずいことが起こった!!海軍がまた追ってきたぞ!!」
ルフィもアスカの言いたい事はわかっているのだろうが、やはり誰よりもビビを仲間にしたいと思っている気持ちが強いからかルフィも引くことはなかった。
それでもアスカはルフィを諦めさせようとし、若干言い合いになりつつあったのだが…後方を見張っていたウソップが割って入る。
海軍が追ってきたという情報に喧嘩は強制的に終え、アスカは舌打ちを打つ。
「一体何隻いるんだよ…!!」
ゾロの呟きに同意しながらアスカは船を出すため動き出す。
しかしそれでもルフィは動かず、アスカは『ほら、準備して』と全く岩のように動かないルフィの尻を叩き無理やり動かす。
海軍の追跡から逃れるため船が動いたその時―――
「みんなァ!!!!」
ビビの声がアスカの耳に届いた。
それはアスカだけではないようで全員がしていた事を止め、声のした方…船の後方…アラバスタへ振り替える。
そこには綺麗に着飾ったビビと、カルーがいた。
ビビの声に全員がビビとカルーを確認し、後方へと移動する。
諦めていたアスカもビビとカルーの姿に嬉しそうにしていた。
「ホラ来たァ!!」
「船を戻そう急げ!!」
「ビビちゃん!!」
「海軍もそこまで来てるぞ!!」
二人の姿に進んでいた船を戻そうとするのだが、ビビが何かを伝えようとする。
ビビの声は聞こえず、ビビは風の音で自分の声が届いてないと気づき隣のカルーの頭にある受話器を取る。
≪私…一緒には行けません!!今まで本当にありがとう!!!≫
「「「!!?」」」
≪冒険はまだしたいけど…私はやっぱりこの国を…―――愛してるから!!!だから行けません!!!≫
ビビが姿を見せたということはビビは戻ってきてくれたとばかり思っていた。
だが、ビビは別れるためにここに来たという。
最初こそ分かれを決めたビビに寂しさはあったが、ビビが決めたことだと全員諦めた。
本当はみんなビビを今か今かと待ちわびていたのだろう。
諦めろと言いつつ…来ないと思いつつ…心の中では期待していたのだろう。
それでもビビが決めたことだからとみんな諦めてくれた。
みんなビビがこの決断をするのにどれだけ辛く苦しい思いをしたのか分かっているから。
「……そうか!!」
ビビの言葉にルフィも笑顔を浮かべ、頷く。
アスカに言われても諦めきれなかったルフィでも、ビビから聞き、そしてビビの想いも聞き、観念したのだろう。
しかしその心は晴れ晴れとしていた。
≪私は…ッ!私はっ…ここに残るけど……!!いつかまた会えたら!!もう一度仲間と呼んでくれますか!!!?≫
ビビは話していると思い出がよみがえり彼らとの楽しい思い出に少しずつ声が震え、ビビの瞳からは涙があふれ出てくる。
それを止めようとはせずビビはルフィ達に語り掛ける。
「いつまでもナバ…!!」
「返事しちゃダメっ!!」
勿論、答えなど決まっている。
それを告げようと声を上げて返事を返そうとしたルフィだったが、それに気づいたナミが慌ててルフィの口を塞いだ。
返事を返そうにもナミに止められ返せずルフィは不満げにナミを見る。
「ふぁんふぇふぁふぉ!?」
「海軍がビビに気づいてる…私達とビビとの関わりを証拠づけたらビビは"罪人"になる」
「そう…だからこのまま黙って別れましょう」
ナミとアスカの言葉にルフィは納得し、全員もナミとアスカと同じことを思っていたのか、ルフィ達は後ろを向く。
ビビは何も返さず後ろを向くルフィ達に仲間ではないと言われたような気がした。
でもそれは仕方のないことだとも内心少しだけ納得した。
誘われたのに王女という座を降りずにいるのにそれでも仲間でいたいと思うのはきっと我儘すぎたのだろうと思っていたのだが、それでも涙はあふれてしまう。
だが…
「…!」
涙で歪む視界の中、ビビは彼らが認めてくれなくても、彼らの仲間として、彼らを見送ろうとした。
しかし…見送っていると彼らは突然腕をいっせいに上げた。
その上げられた7人の腕を見て、ビビはまた涙が溢れ、拭う事も出来なかった。
そのビビの視界の先には…
これから何が起こっても左腕のこれが―――…
―――仲間の印だ!
腕に描かれている×印だった。
それは変装の能力者対策であり…そして、仲間の印だった。
ビビは、カルーは彼らに習い、仲間の印がついている腕を上げた。
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