(111 / 293) ラビットガール (111)

ロビンは空島に記憶を上書きされたといった。
最初ナミはそれを信じ切れず記録指針が壊れたと言っていた。
しかし、ロビンが言うには疑うのは記録指針ではなく、その頭にある常識らしい。
ロビン曰く、記録指針が指す方向には必ず島がある、ということらしい。
納得はできないが、指針が上に向いている以上、どうにもならなかった。
ロビンは落ちてきた船から棺桶を持ってきて、中にあった割れていた頭蓋骨を繋ぎはじめる。


「なにしてるの?」

「頭蓋骨を修復しているのよ」

「死者と美女と美少女ってのもまたオツなもんだな〜!」


人の死に恐怖感のないアスカはロビンのやろうとしている事に少し興味深そうに、ロビンの邪魔にならに程度のそばに寄って覗き込む。
そんな2人をサンジは悦っていたがそうしている間に頭蓋骨は修復されていき、ロビンは復元した頭蓋骨をコトリ、と床に置き頭蓋骨に空いている穴を指さす。


「ここに開いている穴は人為的なもの」

「…ははーん。そこを突かれて殺されたってわけか、コイツは」

「いいえ、これは治療の跡よ…"穿頭術"でしょ?船医さん」

「…うん、昔脳腫瘍をおさえる時頭蓋骨に穴を開けたんだ。でもずっと昔の医術だぞ…」

「…そう彼が死んでからすでに200年は経過しているわ。年は30代前半…航海中病に倒れて死亡。他の骨に比べて歯がしっかり残っているのはタールが塗りこんでいるせい。」


ロビンは部屋から持ってきた本を取り出しページを捲る。
すると様々な船のから降って落ちてきた船と同じ船のイラストを発見する。


「…あった"南の海"の王国プリスの船"セントブリス号"208年前に出航している」

「落ちてきたのと一緒…骨だけでそんな事まで割り出せるんだ」

「遺体は話さない分、情報は持っているのよ」

「へー…」

「探検隊の船なら色々な証拠や記憶が残っているはずだけど…」

「えぇ、でももう船は海に沈んで……」

「ルフィ!しっかりしろー!!」

「ぶわっぶっばばすべて〜〜〜!」

「あんたたち何やってんのよ!!!」


ナミが沈んでいく船を見ようとするもそこにはすでに大半が沈んでいる船と、ウソップと探検に向かっていたルフィも一緒に沈んでいく姿が見えた。


「おい!みんな!!」


なんとか救出されたルフィは反省の色もなく、水浸しになりながらも嬉しそうに船から取ってきた地図を広げてみんなに見せる。
それに書かれていたのは、空島の地図だった。


「空島の地図?」

「スカイピア…」

「な!!な!!」

「本当に空に島があるっていうの!?」


目を疑いたくても地図が存在するのなら信じるしかない。
そう素人のアスカは思った。
しかし、航海士でもあるナミは騒ぐルフィ・チョッパー・ウソップに溜息をつく。


「騒ぎすぎよ…これはただの"可能性"に過ぎないわ。世の中には嘘の地図なんていっぱいあるんだから!」


ナミが言うには本物の地図があるのは当然だが、その中に偽物も存在しているという。
アスカ的に偽物を作ってどうするのだろうかと思うのだが、偽物があるならそれなりの理由があるということなのだろうとなんとなく納得する。
三人はナミの言葉にショックを受けた表情をし、落ち込む。
それをナミは謝るが行き方が分からないと逆切れをし、ルフィも航海士だからなんとかしろと二人は言い合いし始める。
アスカはナミから地図を貰いジッと見つめていた。


「ラチがあかないわ!とにかくこれじゃ船の進めようがない…!だって指針は上を向いてるんだもん。今必要なのはロビンの言うとおり情報よ!あんなでっかい船が本当に空へ行ってたんなら、この船が行く方法だって必ずある!!何とかしてさっきの船に残ってるハズの記録を引き出しましょう!!」

「でも船は完全に沈んじまったぞ?」

「沈んだんならサルベージよっ!!」

「「よっしゃあああ!!」」

「できるかぁ!!」


ナミの言葉にウソップとルフィはやる気満々だが、ゾロに突っ込まれてしまう。
アスカはチョッパーを抱き上げ傍に居た階段で座っているロビンに聞く。


「サルベージって?」

「沈没船の引上げ作業よ…あの船はムリね、大きすぎるわ」

「「へー」」


海に関しては素人の二人はロビンの説明に関心したような声を零し、準備をするルフィ達を見つめる。







数十分後、ルフィ、ゾロ、サンジはタルで作った簡易の潜水服を着て海に入っていった。
ブレーキのレバーはチョッパーが握り、酸素を送るのはウソップの役目となる。


「こちらチョッパー。みんな返事して」

≪こちらルフィ。怪物がいっぱいです、どうぞ≫

≪ここは巨大海ヘビの巣か!?≫

≪こちらサンジ。うわっ!!こっち見た!!≫

OK

「OKか!?」


ウソップは3人の報告を聞き、頷くナミに突っ込みを入れる。
その報告はどう見ても異常ありなのに相変わらずのナミは頷き異常なしと見た。


「なんとかなるわよ。くよくよしないの!チョッパーブレーキしっかりね!」

「うん」

「いやぁ…おれ、行かなくてよかった…」


ルフィ達の報告を聞き、心底思ったウソップは、ふぅー、と額を拭う仕草をする。
するとどこからか、変な歌が聞こえてきてナミ達は周りを見渡す。


「なんだありゃ…」

「…さる?」


現れたのはサルを強く主張する船だった。
メリー号より大きな船が近くで止まり、その船の大きさにアスカは口を大きく開けて見上げていた。
その船には遠目でも分かるほど乗組員はサル顔しか乗っておらず、園長(ボス)と呼ばれた大男はまさにサル。
また個性的なのが現れナミ達は警戒をしつつも面倒臭そうにサル顔達を見た。


「また妙なのが出てきたわ…こんな時に…」

「カッコいい…」

「「「え゙…」」」


船から園長と呼ばれながら出てきたサル似の男に、ナミは頭を抱えるが横に居たアスカの呟きにナミだけでなくウソップとチョッパーが見上げるアスカを凝視する。
アスカはうっとりとサル顔の大男を見上げており、その頬は愛らしく赤く染まっていた。
それに一番に反応したのナミだった。


「あら、ああいうのがあなたのタイプの男性?」

「タイプっていうか…私動物系の顔に弱くて…」

「駄目よアスカっ!!私は絶対に認めないわよ!!あなたは誠実で芯がしっかりしてて誰にも負けない信念を持ってて顔が良くて優しくて浮気しなくて海賊に理解力のあるお金持ちの人じゃないと駄目よ!!」

そんな男いないだろ。


ちょっと頬を染めて見上げるアスカはいつもの表情が乏しいものではなく、まさに恋する乙女だった。
そんな年相応の恋する乙女と化したアスカにロビンが微笑みながら聞くが、ナミが悲鳴に似た声を上げる。
アスカからしたら確かに惹かれるタイプと言えばタイプだが、どちらかと言えば恋愛というよりは憧れるタイプの男性である。
こんな人と親しくなりたいな、できれば深い仲になってみたいな、とテレビに出るイケメン俳優のような存在なのだ……アスカからしたら、だが。
それでもナミは聞く耳持たず『駄目よ!駄目!』と叫んでいるだけだった。
聞く耳持たないナミに『もうどうでもいいや』、とアスカはナミを放ってサル顔ばかりが乗っているマシラ海賊団へと目をやる。
その目はやはりうっとりとしていた。


「おい!お前ら!そこで何をしている?ここはおれのナワバリだ!」

「ナワバリ?」

「そうとも…この海域に沈んだ船は全ておれのものだ!てめェら手を出しちゃいねェだろうな…!!んん!?」

「あの人…サルベージするつもりらしいわよ?」

「あ、あぁ…そんなこと言ってたなァ…」

「じゃぁ、何?これってチャンスなの?」

「そうっぽい。」

「ゴチャゴチャ言ってんじゃねー!おれ様の質問に答えやがれウキーーーーっ!」

「すみません質問していいですか?」

「おめェがすんのかよっ!!!」


離れていて話が聞こえないが、園長は己の話を無視するナミ達に声を上げるが、逆に質問されてしまい驚く。
人の話を聞かず、逆に質問するナミの質問を聞く園長にアスカはぼっと更に熱くなった頬を手で抑え『優しいとか反則…』と呟いたのをナミが聞いてしまい園長を睨むが園長は気付いていない。


「…これから船をサルベージなさるんですか」

「な"サル"!!?」

「?」


ついついナミの機嫌が悪くなり声も低くなるが、まさか自分に惚れてる少女がおり、嫉妬されているとは思ってもいない園長は変なところに反応し、なぜか照れる。


「おい、そんなにおれは"サルあがり"か?」

「サルあがり?」

「"男前"っていう意味だ!!そう思うか?」

「うん、そう思う。」

「アスカ、ちょっと…」


園長の意味分からない造語にアスカは力強く頷きその隣のナミは直視できないほど恐ろしいことになっていた。
背後に鬼をも召喚する勢いのナミにウソップはこれ以上はヤバイと思い、アスカの背中を押しながら船の中へ押し込む。
因みにチョッパーは怖すぎて息を吸うのも辛そうだ。


「え?なに?なんなの?」

「ちょっと、終わるまでここで待っててくれ!」

「何で?」

「おれ達のためだ!すまん!」

「あっ!!」


ウソップに突然船内に押し込まれてしまい、原因に気付いていないアスカからしたら理由もなく船内に押し込まれているのと同じだった。
理由を聞いても意味の分からないことばかり言うウソップにアスカは言い返そうとする。
しかしアスカが言い返す前に扉が閉められてしまい、結局アスカは船の中で終わるまでお茶を飲んだり、ウサギで遊んだりで暇をつぶしていた。

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