(112 / 293) ラビットガール (112)

アスカはうつらうつらと夢の中でまどろんでいた。
夢は見ていない。
いや、見ていたのだろうが、覚えていなかった。


「な、なにーーーーー!!!?あのサル野郎にアスカちゃんが一目惚れだとおおおおおおおおおおお!!!!!??」

「!?―――ッ、わ!な、なに!?」


暇すぎて寝ていたアスカはサンジの怒号で目を覚まし、クッションにしていたウサギたちの寝床から落ちてしまう。
腰を打ったようで、腰を擦りながら周りを見渡すとキッチンにいたのに今は女部屋にいた。
ウサギたちの寝床だと思っていたが、どうやら誰かが眠っているアスカを女部屋のベッドへと運んでくれたらしい。
アスカは少しずつ痛みが引いていくのを感じながらサンジの声のした方を睨む。


「ゆ〜る〜さ〜ん〜ぞ〜〜〜っ!!!クソサル野郎おおおおおおお!!!くおらーーー!!!どこだゴルァ!!!!」

「もういねェよ」

「サンジうるさい!!!」

「あだ!!」


外に出てみれば、サンジはゴオオと何故か燃えていた。
どうやらウソップになぜアスカが寝ているのかを聞き、それを何故かアスカがサル顔に一目惚れしたと勘違いしたためらしい。
嫉妬の炎を燃やすサンジにウソップは呆れ顔をするがその瞬間アスカが投げた物がサンジの頭に当たる。


「全く…ゆっくり眠れないじゃない」


サンジがなぜ怒っているのか…それは寝起きで眠たいアスカにとって些細なことで、サンジの怒号は雑音にしかならなかった。
プンプン怒りながら大きな音を立てて怒りを表しながら女部屋に続く扉を乱暴に閉める。
ウソップとチョッパーはそんなアスカを見送った後、たんこぶを作り沈みながらも物を投げたのがアスカだったからか、どこか幸せそうなサンジを見る。


「あいつ容赦ねぇな…」


ポツリとウソップがそう本音を呟いた時、戻ってきたアスカがまた扉を開け、ウソップはビクリとし身構え、チョッパーは物陰に隠れるが相変わらず隠れ方が逆だった。


「うお!?な、なんだ!!?」

「ルフィ達は?」

「ルフィ達?あいつらなら…」


戻ってきた理由は船にルフィ達がいないからだったらしく、周りを見渡しながらウソップに問う。
ウソップはその言葉にルフィ達が向かった町の方へ指さし振り返ったのだが…


「殺しだァァ!!!」


町の方から不吉な言葉が叫ばれた。
ウソップとチョッパーはまた誰かが殺されたと知らせる声にお互い抱き合い涙を流し震えていた。
アスカもその声に町の方を見ていたのだが、表情をピクリとも変えず町に向けていた顔をチョッパーとウソップに戻した。


「で、ルフィ達は?」

「うぇえええ!!?」

「お前あれを聞いてそれ聞くのかよ!!!」

「うん」

「「うんって…」」

「ッハ!!アスカちゃーーん!!!!あのサルにほれあぶしッ!!!!」

「「サンジーーーー!!!!」」

「うるさい」

「「鬼だーーー!!!」」


アスカからしたら人殺しがどうのというのは興味がない。
散々人が物のように死んでいくのを見てきたし……そして、己も罪もない人の命を無理矢理とはいえ奪ったことがあるのだから慣れていた。
それをウソップ達に言う義理はなく、そして言いたくもなく、アスカはケロっとした顔でもう一度ルフィ達ぼ居場所を問う。
相変わらず無反応なアスカに呆れたような、こんな町でもいつもの調子を保てるアスカに感服するような…微妙な気持ちに二人はなった。
すると気絶していたサンジが目を覚まし、アスカの姿をロックオンするや否や飛びつこうとしたのでアスカは腕をウサギにし殴り飛ばした。
しかし一応仲間なため手加減はしているのか、血が出るような大けがはないがサンジは再び気絶してしまう。







「アスカちゃ〜ん!おれ特性のオレンジジュースだよ〜〜っ!!」


ルフィの居場所は分かり、アスカは折り畳み式の椅子を取り出して優雅にくつろいでいた。
そんなアスカにサンジが飲み物を持ってきてくれて、アスカはそれを素直に受け取る。


「ありがとう…ところで、わかってるよね?」

「勿論さ!アスカちゃんはおれが好きなんだよねェ〜〜〜!!!」

「…………」


アスカがルフィ達が行った町を見ながら受け取ったシュースを一口飲み『美味しい』と零せば作ったサンジはデレデレと鼻の下を更に伸ばす。
そして確認のため問いかければアスカは出てきた回答に無言で拳を握る。


「ずびばぜんでびば…アスカちゃんはあのクソサルに対して恋愛感情はこれっぽっちもミジンコ程もありません!」

「はい、よろしい。」


グッと握った拳は見事にサンジの顔面にめり込んだ。
サンジはちゅー、とストローでオレンジジュースを飲むアスカのそばで正座し、顔をボッコボコにされながらも先ほどの己の回答を訂正する。
ルフィ達が中々戻ってこないため、町を見るのも飽きたアスカは次にトントンと船を修理するウソップとその手伝いをするチョッパーを観察する。


「板」

「ヘイ」

「くぎ」

「ヘイ」

「痛っ」

「ヘイ」

「…まったくよォ…何度も言う様だがおれァ船大工じゃねェんだぞってんだ!!」

「だけどウソップは器用だな!」

「だろ!!?」

「そこなんだよおれ様のスゲェ所は!」

「いっそ買いなおしたらいいんだよ」

「そうかもね。」


ウソップとチョッパーの会話を聞いていると、同じく会話が聞こえていたサンジの言葉にアスカは同意した。
サンジと、サンジの言葉に頷くアスカにウソップは作業の手を止め、2人の言葉に講義する。


「バカ言え!お前この船が一体どういう経緯で手に入ったのか…!アスカ!お前一緒に居ただろう!!」

「はいはい、そうでしたね」

「あーあー、聞いたよ何べんも。おめェの村の麗しい少女から貰ったんだろ?かと言ってこんな状態で航海を続けるのは危険だぜ」

「だから修理してんだろ!お前らも手伝え!」

「これが修理?ツギハギだろ」

「うるへーっ!!!」


アスカはカヤの顔を思い浮かべながらも半分は買い替えることに賛成する。
しかしその半分はウソップの出身の村から出てからの付き合いのこの船に少しだけ愛着があったから、少しだけ…ほんの少しだけ反対でもあった。
でもこうボロボロだといつ沈むのか怖くもある。
特にアスカは能力者だから余計に。


「わっ!それおもしろいぞ!ウソップ」

「こうか?うるへーっ!!!」

「あっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」

「そうだお前ら今日の晩メシ…」

「「うるへーっ!!!」」

いらねェんだな。

「いるぞー!!いるぞーサンジ君ー!」

「食わせてくれ―――っ!!!」

「…さて"カモメスープ"の煮込みの具合はいかがかねェ…アスカちゃんは何が食べたい?」

「ステーキ」

「おっけー!おれ頑張っちゃうぞ〜〜!!」


もうすぐ夕飯のため、サンジはアスカにメニューを聞くもやる気のないあたかも適当な言葉が返ってくる。
正直寝起きだし、もともと小食のためそれほど食べ物に執着はないアスカは本当に頭に浮かんだメニューを述べただけで食べたいとは思っていない。
それでも相手が女の子でアスカだからか、サンジのやる気はいつもより倍増していた。
そんな時、聞き覚えのある歌が4人の耳に届いた。


≪サールーベージー サルベージー サールーベージーーー≫

「ん?」

「ア!?」

「お?」

「何だ…あの船は……!!」

「……!!この歌は………!!!」


目の前を通り過ぎる船に一同口をあんぐりと開けた。

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