(114 / 293) ラビットガール (114)

ルフィ達はモンブラン・クリケットを会うために船を出すのだが、その途中に会ったオラウータン似の男に船を更に破壊されつつ何とか目的地へ向かう。
その際やはりアスカがオラウータン似の男を見上げ、『なんか危険な男の香りがする…』と頬を染めながらナミの前で呟いてしまったためにその場は一瞬にして氷点下になった。
あのサンジでさえ騒ぐのをやめたほどだった。

まぁ、なんかかんかでナミの機嫌も良くなり一行は目的地へと着いた。


「着いたわ地図の場所。ここに例の…誰だっけ?」

「モンブラン・クリケット」

「――その夢を語る男が住んでるのね?」


見上げる先にはドーン、とでかく立派な家が建っていた。


「す…」

「すげェ!!!」

「あれがそいつの家なのか!?」

「スッゲー!金持ちなんじゃねェのか!?」

「バーカよく見ろよ」

「夢見る男、ねぇ…」

「少なくとも見栄っ張りではある様だな」

「なにが??」


目の前には大きなお屋敷のような家が聳え立ち、それに驚いていたチョッパーだったが、ゾロ、サンジ、アスカの言葉に首をかしげる。
船が少し先へと進むと、三人の言葉が分かった。
後ろへ回って見てみるとその大きな家はハリボテで、後ろにはちょこんと小さな半分だけの家にそのハリボテが引っ付けているだけだった。


「げ!!ただの板!?」

「なにーっ!?」

「当の家は半分だけ…あとはベニヤ造りだ」

「ずいぶんとケチな男らしいな…」

「一体どんな夢を語って町を追われたの?」

「くわしくはわからないけど…このジャヤという島には莫大な黄金が眠っていると言ってるらしいわ」

「「「黄金!!?」」」


ロビンの"黄金"という言葉にいち早く反応したのは、やはりナミだった。
ナミはさっそく地面をチョッパーに掘らせ、ルフィは遠慮なくズケズケと人の家に無断で入っていく。


「これ…」


遠慮なく人の家に入っていく幼馴染を見送っていると、外に置かれている机の上に置かれている本に目が留まった。
その本を手に取って表紙をじっと見ていると、アスカに気付いたナミもそれに気づきアスカの手元を覗き込む。


「あら絵本?ずいぶん年期の入った本ね…"うそつきノーランド"だって。」


その本はナミの言う通り年期が入っており、新品では味わえない手にしっくりきていた。
そして、ナミの言う題名にアスカは首をかしげる。


「うそつき、ノーランド…」


題名を見てアスカは懐かしさを感じた。
なぜ、題名を見て懐かしさを感じるのかアスカには分からない。
アスカは覚えている限りこの本を見た事なんて一度もなかったからだ。
そう思っているとナミの言った題名にサンジが反応する。


「"うそつきノーランド"!?へー!懐かしいな…ガキの頃よく読んだよ!」

「知ってんの?サンジ君…でもこれ"北の海"の発行って書いてあるわよ?」


サンジの声にビクッと反応し、アスカはハッと我に返った。
いつの間にか絵本はナミの手元にあり、裏を捲れば北の海発行と書かれていた。
しかしサンジと出会ったのは東の海である。
ナミの言葉にサンジはまだ出身を話していない事を思い出す。


「ああ、おれは生まれは“北の海”だからな…みんなにゃ言った事なかったか?」

「初耳。」

「あぁ。お前も"東"だと思ってたよ」

「育ちはな、まァ…どうでもいいさ。こいつは"北"では有名な話なんだ。童話とは言ってもこのノーランドって奴は昔実在したって話を聞いたことがある。」


サンジはどうやら過去に色々あるが出身は北の海らしく、色々ありあのレストランのコック長と出会って東の海であのレストランを経営することになったという。
アスカも仲間に言いたくない過去もあるため、サンジが言いたくないかは別として深く聞こうと思わなかった。
それはナミも同じなのか何も追及もせず本をめくり読む。


むかしむかしのものがたり

それは今から400年も昔のお話――

北の海のある国に

モンブラン・ノーランドという男がいました

たんけんかのノーランドの話はいつもウソのような大ぼうけんの話

だけど村の人たちにはそれがホントかウソかもわかりませんでした

あるときノーランドは旅から帰って王様にほうこくをしました

『私は偉大なる海のある島で山のような黄金をみました』

ゆうきある王様はそれをたしかめるため2000人の兵士をつれて偉大なる海へと船をだしました

大きな嵐やかいじゅう達との戦いをのりこえその島にやっとたどりついたのは

王様とノーランド

そして100人の兵士達

しかしそこで王様達が見たものは何もないジャングル

ノーランドはうそつきの罪でついに死刑になりました

ノーランドのさいごの言葉はこうです

『そうだ!山のような黄金は海にしずんだんだ!!!』

王様たちはあきれてしまいました

もう誰もノーランドをしんじたりはしません

ノーランドは死ぬときまでうそをつくことをやめなかったのです





「―――あわれ…ウソつきは死んでしまいました…"勇敢なる海の戦士"に…なれも…せずに…」

「おれを見んなァ!!!切ない文章勝手にたすなァ!!」


語ってアスカ達に聞かせていたナミだったが、最後にウソップを見ながら切なげな文章を追加する。
憐れんだ目でこちらを見てくるナミにウソップがツッコミを入れる。


「…ねえ、ナミ…それちょっと見せて」

「え?ええ、いいわよ?」


ウソップとぎゃあぎゃあ何かやっているナミにアスカは絵本が見たいと手を出す。
その差し出された手にナミは本をアスカに渡す。
アスカは本の表紙をすっと撫でる。


(なんだろう…なんか、懐かしいような…そうでもないような……)


本の表紙を触っていてもやはり何にも思い出すことはないが、どこか暖かな想いになる。
ペラペラと捲っていると既視感のようなものも感じ、アスカはこの本を知らないのに見たことがあるような気がした。
それも何度も何度も読んだような…何回か思い出そうとしてもやはりアスカは思い出すことはなかった。


(私って…北の海出身だったのかな…)


アスカは東の海にある村で育った。
しかしそれ以前の記憶がないため、自分がどの海出身なのかもわからない。
この見たことのない本を懐かしく思っているということは、もしかしたら自分は北の海の出身なのかもしれない、とアスカは考えていたその時…


「ルフィが海に落ちた!!」


ザパン、と何かが海に落ちた音がしたと思えばナミの驚いた声がし、アスカは思考の海から這い上がる。
ハッとさせ顔を上げれば誰かが海から上がっているのが見えた。
勿論、能力者であるルフィが一人で上がれるわけでもなく…出てきたのはがたいのいい男性だった。


「てめェら誰だ!!!」

海に落ちたルフィと入れ替わるように出てきたのは、がたいのいい男…その男は頭の天辺に栗のようなものが乗っており、その頭にある栗を見たアスカは手にある絵本へ目を落とす。
その絵本に乗っているノーランドというキャラクターも頭に栗が乗っていた。
男はサンジ達に構えながら低く声を零す。


「人の家で勝手におくつろぎとはいい度胸…ここらの海はおれのナワバリだ。狙いは"金"だな?死ぬがいい!」


黄金があるかは分からないが、人の家で勝手にくつろいでいたのは確かにアスカ達が悪い。
留守とはいえズカズカと入りのんびり寛ぐなんて常識外れにも等しいのだ。
それでも問答無用で襲われる云われはないとアスカは若干逆切れで思った。


「おいウソップ!ルフィを拾っとけ!!」


サンジはルフィをウソップに任せ、こちらを睨みつけて構える男と対峙する。
ウソップはそんなサンジに頷きながら海に飛び込み、男はウソップを追うことも阻止する事もなく、サンジに蹴りを見舞いする。
その蹴りをギリギリに交わしたサンジも交戦し、銃まで取り出した男だったが……ゾロも参戦しようと刀に手をかけた時、男が突然倒れた。







「タオルをもっと冷やしてきて!窓は全開に!」


倒れた男をアスカ達は慌てて家に運んだ。
船医であるチョッパーの指示でナミはタオルを、アスカは窓を全開し、ナミを手伝っていた。


「潜水病?」

「このおっさん病人なのか…」

「うん、ダイバーがたまにかかる病気さ。本当は持病になったりする様なものじゃないんだけど…海底から海上へ上がるとき減圧が原因で体中のある元素が溶解状態を保てずにその場で気泡になるんだ気泡は血管や血管外で膨張するから血流や筋肉・関節に障害を与える…」

あぁ、怪奇現象ってわけか

「分からないなら頷くな。」


チョッパーが診断し、出した結果は、『潜水病』と言われる病気だった。
その病状を聞くも全然理解できていないルフィにアスカはチョップを当てる。


「この人はきっとその気泡が体から消える間もないくらい、毎日毎日無茶なもぐり方を続けてきたんだ」

「一体何の為に…」

「わからないけど……危険だよ。場合によっては"潜水病"は死に至る病気だ」


ナミの問いにチョッパーは首を振って心配そうに男を見つめる。
アスカは死ぬかもしれないと言われた男をただ見つめていた。

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