(121 / 293) ラビットガール (121)

行きたくない一心で悲鳴を上げるウソップ達。
そんな悲鳴が響く中…別の叫び声も響いていた。


「ギャオォオォァアア…」


その声へ目をやれば…そこにはメリーやマシラよりも巨大な大型の海王類がおり、その海王類は渦に飲み込まれ姿を消した。
それを見て騒がしかったナミとウソップ、そして危機感を覚えずのんきな想像をしていたチョッパーが静まり返る一瞬でもあった。


「「「………!!」」」

「……………」

「じゃあおめェら!!あとは自力で何とか頑張れよォ!!!」

「あぁ!送ってくれてありがとうな〜〜!!!」

「待て〜〜っ!!!」


ぶくぶくと沈んでいく海王類を見送っていると、いつの間にか安全な場所へと移動していたマシラとジョウジョウがルフィ達に手を振っていた。
ルフィはそれに手を振り返し、送ってくれたことにお礼を言うが、ウソップはこれでもかと声を上げる。


「も!!勘弁じでぐれぇ!!!恐ぇえっつうんだよ!!!帰らせてくれゴノヤロー!!!即死じゃねぇかごんなもん!!!」

「あぁあああ〜〜!!!」

「こんな大渦の話なんて聞いてないわよ!!!サギよサギ〜〜!!!」


麦わらのクルーの中で、怖がっているのはウソップ・チョッパー・ナミの3人だけだった。
他は平然としており、三人が騒いでいるのをスルーしている。
ナミ達が騒いでいる間に…辺りが突然暗くなった。


「うわぁあああ!!"夜"になったぁあああ!!渦にどんどん吸い寄せられるぞぉおおお!!!―――ッひ、引き返そうルフィ!!今ならまだ間に合う!見りゃわかるだろ!!?この渦だけで充分死んじまうんだよ!!〜〜アスカ!!お前も何か言ってくれよ!」

「なんで私が」

「お前あいつの幼馴染だろ!!?あいつお前に甘いしよォ!!」

「でもせっかくここまで来たのにやめるの?」

「おれは死にたくねェ!」

「無駄だと思うけど…」

「お願いよアスカ!!私もこんなむちゃくちゃな航海はもういやなの〜!」

「お、おれもおれも!!頼むよアスカ〜!!」


ウソップ・ナミ・チョッパーは自称一般人。
こんな死ぬしかない航海など嫌で、回避できるのならどんな手を使ってでも回避したいのだ。
三人ともこの船に乗っているのだから度胸はアスカやゾロ達と変わらずあるのだが、如何せん…自称非戦闘員なのだから仕方ない(と彼らは主張している)。
三人とも号泣しながらアスカに迫り、アスカは仲間の号泣と必死さに『三人が諦めた方が早いのに』と思いながら三人を無下にできず受けてしまう。


「……仕方ないなァ…―――ねえ、ルフィ、こんな方法じゃなくてもまだ他にも方法あるんじゃない?そもそも"空島"なんて本当にあるかもわからないのに確証もなくいくのは危険だと思うんだけど…」

「そ、そうだぞ!!"空島"なんて夢のまた夢だ!!」

「夢のまた夢・・・!!そうだよな…」

「そうよ!!ルフィ!!やっぱり私も無理だと思うわ!!」


ルフィはアスカに弱い。
それはこれまで一つ船の中ともにして分かっていることである。
だからアスカに弱いルフィならアスカの言葉なら聞き入れると思った。
ウソップ達三人はそう望みをかけるが…


「"夢のまた夢の島"!!!こんな大冒険逃したら一生後悔すんぞ!!!」

((た…!!楽しそ〜〜〜……!!))

「ほら、失敗した。」


アスカ達の言葉に背を向けていたルフィが振り返る。
その顔は未知なる冒険を楽しむ純粋な少年の笑顔をしていた。
その笑顔にウソップとナミは説得は無理だと涙を流し、そんなナミとウソップにアスカは『ね?』、と輝かしい笑顔をして振り返るルフィを指差す。


「ほら、おめェらが無駄な抵抗してる間に…」

「間に?何だ」




大渦にのまれる




「「あ"あ"っ!!!」」



三人のコントともいえるやり取りを黙って見ていたゾロがウソップに声をかける。
ウソップはゾロの指差す方を見ると―――既にメリー号が渦に飲まれる寸前だった。


「ぎゃあぁあああ!!!………あ?」


大渦に飲み込まれる寸前で宙に浮いていたはずだった。
アスカは来るであろう浮遊感に備えていたのだが…どういうわけか、あれほどまでに大きかった大渦は一瞬にしてなくなり、まだ暗くはあるが海は静かになっていた。


「あれ…渦は?」

「何!!?消えた!?何でだ!!?」

「あんなでっけぇ大渦の穴が!!?どういう事った!!?」


突然渦が無くなり静まり返り逆に不気味さを増す。
その静まり返るその海の中はゴゴゴ、と不気味な音をたてていた。
渦が消えたのを見てナミが顔を青くし、海を見つめる。


「違う!始まってるのよ…!もう…渦は海底からかき消されただけ・・・!!」


航海士であるナミの言葉に全員が首をかしげていると…


「待ぁてぇ〜〜!!!」


ナミが焦っているのを見てアスカも嫌な予感をよぎらせる。
ゴゴゴ、という音が大きくなっていくのを感じているとマシラやジョウジョウではない誰かの声がルフィ達のところにまで届いた。
その声の方へ見ると、アスカやサンジには面識のない男の姿があった。
男は大きなイカダのようなものに乗っており、人影も男以外に数人乗っていた。


「ゼハハハハ!!!追い付いたぞ 麦わらのルフィ!!」

「あれはモックタウンにいた…!!」

「誰だ?」

「さァ?」


男の顔に見覚えがないため、サンジの問いにアスカは首をかしげる。
しかしルフィとゾロ、そしてナミは知っているようで、どうやら三人が町へ行ったときに出会ったようである。


「てめェの一億の首を貰いにきた!!!観念しろやァ!!!」

「一億?」

「おれの首!!?"一億"って何だ?」

「やはり知らねぇのか…!!おめぇの首にゃ"一億ベリー"の賞金が懸かってんだよ!!そして"冷酷ウサギのアスカ"!!"海賊狩りのゾロ"!!てめぇらにゃ"8千万ベリー"と"6千万ベリー"だ!!!」


男はそう言いながら三枚の手配書を掲げる。
ウソップが双眼鏡で確認すれば、確かに男の言う通り…ルフィは『1億』、アスカは『8千万』、ゾロは『6千万』と書かれていた。
それを見てルフィとゾロは喜び、アスカは『うげ』と嫌そうな顔をする。


「本当だ!新しい手配書だ!ゾロ!!賞金首になってんぞ!!」

「何ィ!?おい待て!!おれのは!?おれのもあるだろ!?」

ねぇ

「よく見ろ!」

ねぇ

「聞いたか!おれ一億だ!!」

「6千万か、不満だぜ!」

「上がってる…っていうかついに名前まで…」

「…そうかアラバスタの件で額が上がったんだわ…!…一億だなんて………って喜ぶなそこ!!!」


ルフィは賞金が一億となり大喜びし、ゾロは不満と言っているが満更でもなさそうだった。
まだロビンは仲間になった事を知られていないため三枚の手配書の中にはロビンはいない。
手配書を出されているメンバーの中でアスカだけが嫌がっていた。
ルフィと違いアスカは別に名前を広げたいとも思っていないし賞金首になりたいとも思っていない。
海賊になったのだから賞金が少なからずいつかはなるとは思っていたが…正直アスカの予想より早かった。
しかも名前までバレており、まだ救いなのは写真ではなく黒く塗りつぶされているというところだろう。
暢気なルフィ達にマシラとジョウジョウが焦ったように声をかける。


「!!…おい おめぇら!!余所見するな!!!」

「来るぞ!"突き上げる海流"…!!!」


それと同時にメリー号を押し上げるように海面が上がっていく。


「アン?なんだ?」

「全員!!!船体にしがみつくか船室へ!!!」

「海が吹き飛ぶぞぉ〜〜!!!」


サンジの言葉に全員が船にしがみ付く。


「おぉ…!?」


盛り上がっていく海面を見てルフィは声を漏らし、そして…




ズドォ…ン!!!!




「「「ギャアアアア〜〜!!!!」」」





突然海が空へ吸い込まれるように立ち上がり、その勢いに乗ってメリー号も空へと続く海の柱へと乗る。
近くに居た男の船が粉々になり、壊れてしまう。



「「行けよ"空島"!!!」」


ショウジョウとマシラは大きく揺れる船に耐えながら素早く天まで上がっていくメリー号を見送った。

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