結局、(当事者以外)満員同意でアスカが副船長という事で落ち着き、アスカは認めたくなくて『仮だから!!副船長(仮)だからね!!決まりじゃないからね!!!』と抗う。
そうこうしているうちにチョッパーとロビンが見つけた滝のような雲の前に到着した。
しかし、滝の雲の前には滝の水煙のような雲が立ちはだかっており滝にはなかなか近づけなかった。
「"海の空"の上に浮いてんだから同じ"海の空"じゃねェだろ」
「じゃぁどんな海だ?」
「ただの雲ならそのまま進むんだけど…」
「触ってみたら分かるんじゃない?…ルフィ」
「おう!!」
行き止まりになってしまい、頭を悩ませているとアスカがルフィに言って能力で目の前にある雲に触れてもらう。
それを見たウソップとチョッパーが『おお、副船長っぽい』『すっげー!』という会話をしており、勿論それはアスカにも聞こえたが、あえてアスカは相手にすることはなく、ルフィの伸びる腕を見送る。
するとパフン、と音をさせて弾かれてしまった。
それを見たチョッパーが顔を輝かす。
「見ろ!乗れた!沈まねェぞ!ふかふかする綿みたいだ!」
腕を弾いた雲を見て、乗れると分かりルフィが真っ先に雲の上に乗りこんだ。
楽しそうに雲に乗ってピョンピョン跳ねるルフィを見てウソップとチョッパーが続く。
ナミ達は驚いており、ナミは先ほどの海のような雲を思い出し、『どういう原理なの?』と不思議に思い、人が乗れるのだから船で通るのは無理だと悩みだす。
アスカはきゃっきゃっと年相応に楽しそうに雲の上を跳ねる二人を手すりに肘をついてみていた。
「アスカ!お前も来いよ!!すっげェー楽しいぞ!!!」
「私はいい―――」
アスカは雲に乗るのには興味はなく、楽しそうなルフィを見ていただけだったのだが、アスカに気付いたルフィがアスカの意思関係なく腕を伸ばしてアスカの華奢な体に腕を巻き付けあっという間に雲の上に引き寄せる。
「な…っ!?ちょっとルフィ!!あんたアスカになにすんの!!危ないでしょ!!」
「だいじょーぶだって!!!な!アスカ!」
「びっくりしたわ!!」
「あがッ!」
さっきまで隣にいたアスカが突然雲の上へ引っ張られ、ナミはルフィを叱るもルフィからは反省の色がない。
ルフィは笑いながらアスカに問うもアスカも流石に驚いたのかまだ心臓がドキドキと鼓動を早くさせながら幼馴染の頭にゲンコツをくらわした。
幼馴染の拳を食らい、ルフィは雲の上に倒れる。
「まったく…これどう降りるのよ…」
「は〜〜〜!いい気持ちだ…!!なんか温けェしこのまま寝ちまいたい…アスカも寝てみろよ!」
「え?…わ、わっ!」
立ち上がり腰に手をやって雲の端まで歩み寄り船を見下ろしながらどうやって降りようかと思っていた時、再びルフィの腕がアスカの体に巻き付きアスカはそのままポスン、と音をさせて寝転ばされる。
二度目の突然の出来事にアスカは一瞬固まった。
「ちょっとルフィ!!」
「どうだ?気持ちいいだろ?」
「……まぁ…」
「だろう?干したてのフトンより気持ちいいよな〜〜!」
アスカに頭を殴られ雲の上に倒れたルフィだったが、どうやら倒れた際に雲の感触が気に入りアスカにもそれを伝えたかったようである。
アスカは船に戻るのを邪魔され苛立った声を零すが、目の前のルフィのふにゃ〜、と本当に気持ち良さそうに目を瞑るルフィに毒気を抜かれたアスカは困ったように笑い、本当に気持ちいいのもあり自分も目を瞑る。
すると、自然にアスカは夢の中へと誘われる。
微睡の中、アスカは夢を見ていた。
それは走っている夢。
何かを抱えて走っている夢。
夢を夢と理解してみるのはこれで二度目だな、と思っているとタタタ、と軽い足音を立てながら夢の中のアスカは走っていた。
そして夢の中のアスカはある部屋の扉を開け、背を向けている男性に駆け寄る。
「ねえ、『―――』!これ読んで!」
その男性は幼い夢の中のアスカの言葉に振り返る。
その男性はあの熱にうなされていたときにあらわれた男性だった。
でも、やっぱりあの時同様、男性の顔は分からなかった。
それでも感情は不思議と分かり、今男性はアスカに嬉しそうに優しく微笑みを浮かべている。
「またかい?"――"も好きだねェ」
アスカは腕に抱いていた本を男性に見せてせがみ、男性の言葉にアスカはむすっと頬を膨らませた。
「だって"――"、これ好きだもんっ!何度見ても飽きないんだよ!」
「そうだねェ…"――"は赤ん坊の頃から好きだったもんね」
「えっ!赤ちゃんの時から!?"――"、そんなの知らないよ!?」
「はは、赤ん坊の時の記憶があったら逆にすごいよ、"――"」
「そうかなァ?」
「そうだとも…ほら、読んであげるからおいで」
赤ん坊の頃から好きだったという男性に驚くアスカに男性はふと微笑みを浮かべ座っている膝を叩く。
それは膝の上に乗って読んでくれるという合図だった。
アスカはそれが嬉しくて拗ねていたのも忘れ満面の笑みを浮かべて男性に駆け寄った。
「むかしむかしのものがたり――…」
アスカは男性が大好きだった。
ずっと一緒に居てくれた男性が大好きだった。
アスカはいつの間にか眠っていたのか、目を覚ますとそこは見覚えのある女部屋だった。
「…あれ、誰なんだろう……」
そう呟きながらアスカは寝返りを打ち赤いペンキがついている手を見た。
指と指でこすりつけてもやはり落ちず、アスカは目を細め小さく笑う。
そして、手を見つめながら思うのはやはり夢の中の世界。
あの大好きだった彼の事を思い出そうとしても、靄が掛かったように思い出すことができなかった。
思い出せないことがアスカに苛立たせるが、どうにもならない事に怒りを爆発させるほどアスカはもう子供ではない。
それにアスカ自身、あの夢の中の女の子が本当に自分だとも思っていない。
夢は所詮夢なのだ。
だけど幸せそうな夢に、そう分かっていてもやはりアスカも機嫌を左右されてしまう。
ぼうっと思いに耽っていると外が騒がしいのに気づき、ベッドから降りて外に出る。
扉を開ければ滝に到着はしていたが、変な門のようなものが見えた。
「なにあれ…"天国の門"?」
「あら、おはよう。」
「おはよう、ロビン」
扉の前で唖然と門に書かれていた文字を読めば、その声に気付いたロビンが微笑みながら声をかけてくれた。
アスカもロビンに返事を返し、ロビンに歩み寄る。
「私眠ってた?」
「えぇ、船長さんの腕の中でぐっすりと…船医さんが言うには疲れも溜まってたみたいよ?」
「そっか…」
「あ!おはよ〜〜!!アスカちゃ〜ん!!」
「うん、おはよう、サンジ」
ロビンと話しているとサンジがアスカに気付き相変わらず女には弱いらしいデレデレした顔で声をかけた。
アスカも返事をするが、その時、老婆が現れる。
「観光かい?それとも戦争かい?」
出てきた老婆は髪を二つのダンゴにし…なんと羽が背中に生えていた。
出てきて写真を撮る老婆のその姿はそう、まさに天使だった。
アスカ達の写真を撮り終えたらしい老婆は淡々と述べる。
「どっちでも構わない。上層に行くんなら入国料一人10億エクストル置いていきなさい。それが『法律』」
「天使だ!!! 天使ってあんなんなのか…!梅干しみてェだ」
「なんかショック…天使はお姉さまには敵わないだろうけどお姉さまのような美しい人かと思った…
まぁお姉さまには敵わないだろうけど。」
「…どんだけそいつを美化してんだ」
「それおれも思ってた!」
「お前もかよ!!」
まさに天使の姿の老婆にアスカは眉を潜めて不快感をあらわにし、ぶつぶつ呟くアスカにゾロは呆れていた。
だが、ルフィもアスカの言葉に頷いたのを見て突っ込みをいれる。
「……あのお金…もし…もしなかったら…?」
「通っていいよ」
「いいのかよっ!!!」
エクストルがベリーではどのくらいの値段なのかは分からないが、10億なんて大金この海賊団にはない。
ルフィの首を売ってもまだ1億なのだ。
お金がないことを恐る恐るナミが聞けば、老婆は以外にもあっけなく答え、ウソップはつい反射条件で突っ込んだ。
「それに"通らなくても"いいよ。あたしは門番でもなければ衛兵でもない…お前達の意思を聞くだけ」
「じゃあ行くぞ!おれ達は空島に!!金はねぇけど通るぞ!ばあさん!!!」
「そうかい。8名でいいんだね?」
そう問われルフィは頷く。
そしてどうやって昇るのかと問おうとした時…船の左右から何かに突然挟まれてしまう。
「「「え!!?」」」
「!?」
「何だ!何か出てきた!!?」
「"白海"名物"特急エビ"…」
挟んでいたモノは特急エビのハサミだったようで、エビはそのままメリー号を持ち上げて滝を昇っていく。
その行き先は神がいる国、スカイピア。
ルフィ達は神の国へ足を踏み入れ、これからどんな試練が待っているのか、まだ知らない。
126 / 293
← | top | back | →
しおりを挟む