(129 / 293) ラビットガール (129)

なぜほふく前進なのか分からないが、近づいてくる怪しい集団にアスカはルフィと共に怪訝とさせる。
その集団はアスカ達の元へとつくと這っていた体を起こし、立ち上がって『へそ!』と一同声をそろえる。
どうやらそれがここの挨拶らしい。
コニスやパガヤに挨拶を終えたその集団の一人、コートを着ている男がアスカとルフィを睨むように見つめる。


「あなた達ですね!!"青海"からやって来られた不法入国者8名というのは!!」


男がそう言うとパガヤとコニスがギョッとしたようにルフィとアスカを見る。
しかし、心当たりのないアスカ達は首を傾げるしかなかった。


「ええっ!!?不法入国!?」

「ん?何だそれ」

「不法入国?なんで?」


男は庇ってくれるコニスとパガヤの言葉など聞く耳を持たず、首をかしげるアスカとルフィを見てしらばくれるつもりだと思ったらしく、弁解の余地なしと言いながら全員が写っている写真を取り出しアスカとルフィに見せた。
写真を見て思い出すのはあの門のおばあさん。
確かに入国1人10億エクストルを支払っていない。
だから不法入国にはなるのだろう。
でもそれはそれでアスカは不服だとむっとする。


「でもあのお婆さんが通っていいって言ってたけど?」

「言い訳はおやめ下さいまし。認めてください……"不法入国"これは"天の裁き"における第11級犯罪でしかありません。罰を受け入れればあなた方はその場で安全な観光者となれます。」

「それを早く言ってよ…心外なのには変わりないけど。」

「罰ってなんだ?」

「簡単なことです入国料の10倍払って下さいまし…一人100億エクストル…―つまり8人で800億エクストル…この場でお払いくださればあなた方の罪は帳消しにさせていただきます!」

「800億!?」

「だからそのエクストルってのはベリーで言うといくなんだ?」


入国時でも80億エクストル払えと言われてぎょっとしたのに、罰金で800億エクストルも払えと言われぎょっとするどころではない。
億という大金今までに見たこともないのだから余計に。
ウソップも驚きはしたが、"エクストル"という金銭は"ベリー"で換算したらいくらになるのか疑問視した。
ウソップの船からの問いに、男は船の方へ目をやる。


「ベリー……"青海"の通過ですね…ベリーだと"1万エクストル"で"1ベリー"になります。」

「…いくらだ?」

「だったら800億エクストルは800万ベリーね」

「高ェよ!!米何トン買える額だコラァ!何で命がけで空へ昇ってきて入国だけでそんなに払わなきゃならねェんだ!!!」


ベリーに換算すると1万エクストルは1ベリーらしいと聞いてロビンが計算してくれた。
その出された金額にアスカはサンジの言葉に力強く頷く。
億じゃない分まだましだが、それでも800万ベリーは大金である。


「何をおっしゃるのですか!ならば本来の入国時に80万ベリーお支払いくださればよかったのです」

「それでも高いんだけど…」


入国時、おばあさんは『80億エクストル』を要求した。
と、なるとベリーで言えば『80万ベリー』を支払わなければならないのだ。
入国するにも大金すぎるその額にアスカは眉を顰める。
いい加減堪忍袋の緒も切れるかと思ったとき…海雲からウェイバーの音が聞こえ、そちらに目をやるとナミの姿が見えた。


「ちょっと待って!!!」

「あぁっ!!ナミさん無事だったんだね〜!」

「ルフィ!アスカ!その人たちに逆らっちゃ駄目よ!!」


サンジは心配し今すぐ探し出したかったナミの姿にホッと胸を撫で下ろす。
サンジの安心した声に今耳を傾ける余裕はナミはなく、軍隊の姿を見て気の短いルフィに釘を打とうとした。
そんなナミに正直殴り飛ばす寸前だったアスカはむすっとさせながら男を指さしてナミに先ほどの事をチクる。


「だってナミ!こいつら800万ベリーの不法入国料払えって言ってくるんだよっ!!!」

「良かった…まだ罰金ですむのね…800万ベリーって…――――高すぎるわよ!!!」

「「オイ」」


チクるアスカの言葉に、ナミはまだ罰金で済むのかとホッとしたのだが…その金額に思わずウェイバーごと男にツッコミを入れた。
乗りツッコミだった。
因みにナミがウェイバーで男を吹き飛ばしたのを見て、アスカとルフィは同時に親指を立てており、その姿はまさに似たもの同士である。


「あ、おじさん!ウェスバーありがとう!楽しかったわ!!」

「いえいえどうもすみません…そんなことよりあなた方大変な事に…」


ウェイバーから降り、ナミはパガヤとコニスにお礼を言ってアスカとルフィの腕を掴んで船に戻ろうとする。


「さァ!逃げるのよ!!ルフィ、アスカ!」

「うん」

「わ!なんでだよ!お前がケンカを仕掛けたんじゃねェか!」

「"神"とかってのに関わるとヤバイのよ!ホントに!それに今のは事故よ!」

「事故って……」

「待てーい!!」


アスカは引っ張られながら事故だと言い張っているナミに何も反論もなく心の中で『流石ナミ』と零すだけで、罪悪感などなくスッキリとしていた。
事が更に大きくなる前にナミはさっさと引き返そうとするのだが、そんな3人を男は引き止める。
振り返るとナミにウェイバーで吹き飛ばされていた男だった。
男は鼻血を出しながら3人を睨みつける。


「…逃げ場などすでにありはしない!!我々に対する数々の暴言、それに今のは完全な公務執行妨害第5級犯罪に値している…!!!"神・エネル"の御名においてお前達を"雲流し"に処する!!!」

「雲流し!?そ、そんな…!」


神と言われても実物の神を見た事がない三人にとって、神がどれだけ恐ろしい存在下は知らない。
それに雲流しと言われてもやはりここの住人ではないので今一ピンとも来ない。
逆にルフィが呑気にも『気持ちよさそうだ』と思うだけだった。
そんな呑気なルフィの言葉とは反対にコニス達は顔を真っ青にさせていた。


「よくありません!逃げ場のない大きな島雲に船ごと乗せられ骨になるまで空を彷徨い続ける刑です!!」


コニスの言葉にアスカの脳裏に空から落ちてきたガレオン船を思い出す。


「ああ、なるほど…」

「えっ…な、なに?アスカ」

「ほら、空から降ってきたガレオン船、覚えてない?」

「覚えてるけど…それが何なの?」

「多分、あのガレオン船…"雲流し"っていう刑を受けてたんだと思って…コニスの言う事が本当ならガレオン船が200年もの間雲の上にいたんだなって…だから死体も白骨化したんだなって思って」

「……………」


1人納得するアスカにナミは首をかしげていたが、アスカの言葉にぞっとした。
アスカは淡々として語っているが、その罰を今、ナミ達は実刑寸前の立場なのだ…怯えるのも無理はない。


「引っ捕らえろ!!!」

「「「は!!」」」


青海からの犯罪者に男は部下たちに捕まえるよう命令する。
その命令にコニスが逃がし庇おうするも無駄に終わり、部下たちは弓を構え、放つ。


「ナミ、アスカ!邪魔だ!船に行ってろ!」

「きゃ!…うん!」

「分かった」


その弓はやはり青海のとは違った。
雲の道が出来、ルフィはナミとアスカを船に帰す。
アスカもナミも逆に自分たちは邪魔になると慌てて船へと走る。
アスカは海が人一倍弱いため、海雲に入った途端力が奪われダルさが襲う。
その為ナミとは少し遅れて船に戻った。
そして、ルフィを襲った男たちはやはりナミやアスカが心配するほどの力はなく…あっけなく倒れた仲間の後ろで弓を引いていた部下たちを倒したサンジとゾロと共に三人があっという間に蹴散らして終わった。


「ところでナミ…ウチの船の今の経済状況は?」

「残金5万ベリー」

「5万!?…そんなにねェのか?」

「そうよ!もってあと1日2日ね…」

「何でそんなにビンボーなんだ!船長として一言言わせてもらうがな!お前らもう少し金の使い方ってもんを…」

「「お前の食費だよ!!」」


コニス達は軍隊の者たちが倒され驚いていた。
青海の人間は空島では青海にいたときのような動きはできないはずなのに、彼らはそれをもろともしない動きで男たちを倒していったのだ。
ゾロの問いに答えるナミ。
残金がまさか5万ベリーだとは思っていなかったアスカもナミを驚いた顔で見た。
ナミは、はあ、と溜息をついて顔を覆う。


「ハ…ハハハ…馬鹿共め…」

「「「!」」」

「!」

「我々の言うことを大人しく聞いていればよかったものを…我々ホワイトベレー部隊はこの神の国の最も優しい法の番人だ!」

「…………」

「………」

「"彼らは"こう甘くはないぞ!…これでもはや第2級犯罪者!泣こうがわめこうが……"神の島"の神官達の手によってお前達は裁かれるのだ!!へそ!!!」


ボロボロになりながらも復活した男はルフィ達を指差し、去っていった。

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