シャンクスの出航も見送り、ルフィとアスカは自宅でジュースを飲んでいた。
父が戻ってこないというのは前日に聞いており、アスカは父の説明にただ何の反応もなく『そう。』と言うだけで寂しいとは言わなかった。
否、素っ気なく見えるその反応こそが、寂しがっている証拠だろう。
しょんぼりとさせるアスカにシャンクスは申し訳ない気持ちで一杯で、その日の夜は一緒に眠った。
ただ、気になるのが…次の日の朝、アスカはケロッとしていた事だろうか…
強がっているように見えるだろうが、アスカは本当に気にしていないと言わんばかりのいつもの娘へと戻っており、逆にシャンクスが寂しく思ってしまう。
『アスカ〜もうシャンクスもどってこねえんだってよー』と零すルフィにアスカはジュースを呑みながら『ふーん』と何度目かの返事を返す。
そんなアスカにルフィは不思議そうな顔をし、アスカを見る。
「何だよ、アスカは寂しくねぇのか?」
父親がもうここには戻ってこないと言っているのにアスカはそっけない態度を取る。
それがまだ幼いルフィにとって不思議でならなかった。
不思議そうに見つめるルフィにアスカは飲んでいたジュースを一気に胃の中に収納し、コトンと乱暴にコップを置いた。
「寂しいよ!!お姉さまもいなくなるなんて!!」
「いや、おれはシャンクスの事を言ってんだけど…っていうか姉ちゃんは休みには戻ってくるって言ってたじゃねェか。」
「休みって言ったって海軍でしかも今は新兵でしょ!?その休みはいつ貰えるの!?」
「おれに聞くなよー」
乱暴にコップを置くその姿はまるで酔っぱらったサラリーマンの親父だった。
ルフィの問いに答えたアスカだが、その答えは的外れで、父ではなくルフィの姉であるミコトへの回答だった。
アスカは珍しく突っ込むルフィを無視し胸元で手を組みそこにミコトがいるようにうっとりとした表情を浮かべ頬を赤らめる。
「あぁっ!お姉さま!あなたは何故お姉さまなの!?」
「何だそりゃ…でも本当にシャンクスを寂しがらないのか?父ちゃんだろ?」
「…………」
ルフィのしつこい質問にアスカは手を組んだままルフィを横目でジロリと見る。
ジト目で見られルフィは後ろへ身を引かせるが、アスカはむすっとした表情で答えた。
「……パパとは会うからいいもん」
「いつ会うんだ?」
「それはルフィ次第。」
「は?」
「私、ルフィについていって海賊になる。」
「はああああああ!!!?」
「なにいいいいいいいいいい!!!!??」
「―――ってじいちゃん!!」
アスカはルフィの質問に何故か『ルフィ次第』と答えた。
何故自分次第なのか、疑問に思えば出てきた次の言葉に思わず声を上げて驚く。
どうやらあっけらかんと父を見送ったのはルフィが海賊となるという夢に便乗してついて行き父に会いに行くつもりだったから父と会えないというのに平然としていられたらしい。
初めてアスカの抱負を聞いたルフィの驚きの声に重ねるようにルフィ以外の人物も声を上げた。
その声に2人は振り返ると、家の中に巨体の男が入ってきており、その人物こそルフィとミコトの祖父であり、『海軍の英雄』とも言われているガープだった。
ガープの姿にアスカは驚いたものの嬉しそうな顔(ガープ視点)でガープに駆け寄って抱き付いた。
「おじいちゃん!いつ来たの?」
「ついさっきじゃ。ほれ、お土産じゃぞ〜これはルフィに、これはアスカにじゃ。」
老いてもまだ現役の海兵であるガープはこの村には住んでいない。
だがこうして孫たちの様子を見には来てくれる。
仕事で一緒にいられない事からガープはルフィ達に色々お土産を買ってきてくれていた。
ガープはミコトからアスカの事を聞いていた。
餓死寸前の子供の事はガープも心配だったし、アスカは知らないが村に戻った時に何度か眠っているアスカに会ったこともある。
だから村人たちと同じで、ガープも余計にアスカが元気な姿を見せてくれるだけで胸が熱くなるのだ。
ガープの中ではすでに三人目の孫と認識しており、血の繋がった自分の孫たち同様可愛くて仕方なかった。
この間アスカが描いたというガープの似顔絵をガープは本部にある自分の部屋に飾っているほどガープはアスカも溺愛していた。
それぞれ二人にお土産を渡し、二人の喜ぶ顔を見て鼻の下を伸ばすその姿はまさにじじ馬鹿。
その緩み切った顔には『海軍の英雄』要素が一つもなかった。
「ってそうじゃなくて!アスカ!!」
「なに?」
「か〜わ〜い〜い〜!ってちがーーう!!!」
「じいちゃん、何怒ってんだ?」
「さぁ?」
お土産に喜ぶ2人に甘々のデロデロの骨抜きだったガープだったが、ハッと思い出したように我に返りアスカへ改めて振り向く。
アスカは祖父に呼ばれ首をコテンと傾げたが、孫馬鹿なガープはその仕草もまた可愛く移りキリッとした表情を浮かべていたが、その仕草に再びデレッとした表情に戻ってしまう。
今はそれどころではないと首を振って我に返ろうとした祖父の行動にアスカもルフィは首を傾げ、ダブルとなったその仕草にガープはもうメロメロだった。
だが、流石海軍と言うべきか…ガープはすぐに我に返りアスカの肩を掴む。
「アスカ!海賊になるというのは本気か!?」
「うん。」
「なぜじゃ!じいじのお嫁さんになるんじゃなかったのか!?」
「
おじいちゃん、私そんな事言ってない。」
「おぉ!これはミコトじゃった!ってそれは置いといてじゃな!わしは許さんぞ!」
「ぶー!」
「可愛いっ!…ってそうじゃなくてじゃな!!海賊なんて駄目なものは駄目じゃ!!」
「…………ところでおじいちゃん、何しに来たの?」
どうやらガープが怒っているのはアスカが海賊になると言ったかららしい。
ガープはアスカの事を孫娘として愛しているが、その父であるシャンクスの事は認めていない。
否、実力・人柄は認めており一目置いているようだが、何分、彼は海賊である。
更にはその海賊であるシャンクスは娘を置いて航海に出て更に更にはもうこの村に戻ってこないというではないか。
更に更に更に!!更に!シャンクスは可愛い孫娘の一人であるミコトにお熱だというではないか!!!
もし海賊ではなく海兵であったのなら、可愛い孫娘達にちょっかいを出す憎きあの男への不満も和らいだだろう。
ミコトへの恋慕も歳の差というのが不満だが、ミコトが成長し望めば渋々だって認め婿として受け入れるだろう。(ここで間違っていけないのは、婿養子以外は認めないという事である)
だがシャンクスは間違えなく海賊である。
それも大海賊としてすでに名前が広まっている。
海兵が海賊となるのは簡単だが、海賊が海兵になるなどありえない事なのだ。
そんな海賊に孫娘達を任せられないし、何よりあの男はいずれ姉と同じく海兵となるルフィを海賊の道へ落そうとしている憎んでも憎み切れない男である。
アスカもいずれ海兵へとなる予定だったのだ。
既に海兵として入隊したミコトを含めた姉弟三人…否、4人を海兵として育て上げるつもりだったガープは海賊となると公言しているルフィとアスカの手を引っ張り何故か外を出てどこかへ向かった。
「うわ!なんだよじいちゃん!おれなにも悪いことしてないだろ!!」
「お前はダダンのところで鍛えさせる!全く、海賊になるなど断固許さんからな!アスカ、お前もじゃぞ!」
「えー…っていうかダダンって誰?」
アスカもルフィも海兵にさせる気満々な祖父の言葉に2人は不満顔を作るが、ダダンという聞いたことのない名前にアスカは首を傾げた。
13 / 293
← | top | back | →
しおりを挟む