辺り一面、雲の玉がいくつも浮かんでいる光景を見て驚くアスカの声にウソップとサンジもそれに気づき三人は目を丸くして玉が浮かぶ光景を見上げていた。
「『玉』だな!『玉』!!!」
「小さい"島雲"の玉だ…」
「ははは!!すげ〜〜〜!!でっけェ雪みたいだ!!」
「"雲の川"が木の上を走ってる…」
「なんか、不思議な光景…」
無数にあるともいえる多くの雲の玉が何個もアスカ達の頭上をとおりすぎる。
周りを見渡すも人工的な雲の川と玉、そして森しか見えない。
まさに『玉』の試練である。
「これの何が試練なんだ?」
「さぁな…何もねェならそれが一番だが……そうもいかねェだろ…」
「もしかしたら当たりなんじゃねェのか!?ここが!他の入り口選んでたら今頃えらい目にあってたとかよ!!」
「馬鹿…罪人にハズレがあっても当たりはないよ」
「アスカちゃんの言う通りだ。油断するなよ?さっきみたいに何か仕掛けがあるかも知れねェ。気ィ抜くな…とにかく前へ進むぞ!」
気を取り直すサンジの言葉にアスカも頷き、気を引き締める。
試練、というのだから、その試練に入った今どこから敵が襲ってくるか分からないのだ。
警戒しない方がおかしい……の、だが…
「ウソップ、空せんべい一枚くれー!」
「おう!」
「てめェら人の話聞いてたか!?気を抜くなと言ってんだろ!!」
「えー!」
「えーでもねェ!!いいか!おれが運転するからお前らは左右しっかり見張っておけ!!そしてアスカちゃんは当然おれの隣さ〜っ!」
「後方を見てるから無理」
「ん〜〜っ!クールビューティーなアスカちゃんも素敵だ〜〜!!でも照れなくてもいいんだよ〜!ささ!おれのお膝においで〜!!」
「後方を見てるから無理」
気を抜くなと注意した途端にルフィとウソップはコニスからもらっていた空せんべいを頬張っていた。
それを叱るまでは良かったのだが…アスカにでれっとし腕を広げてスタンばっては色々と台無しである。
案の定サンジの鼻血の件でちょっぴり罪悪感があったアスカもいつもの女に鼻の下を伸ばすサンジにいつものアスカに戻ってしまった。
『んも〜!アスカちゃんったら照れ屋さんだな〜!』とデレンデレンなサンジの声を聴きながらアスカは後方を見張る。
そして、サンジとアスカの間では…
「ヘ〜イ、ウソップ。パス!」
「おっし、オーライ、オーライ…」
「―――見張れっつってんだろうが!!!」
ルフィとウソップは雲の玉で遊び始めていた。
愛しのアスカの背中を見つめていたら野郎どもが緊張感もなく玉遊びをはじめサンジは怒りをぶつけようとする。
一発二発殴ったろうかと思ったその時―――ウソップが触れた瞬間、玉の中から蛇が飛び出し、ウソップを噛もうとした。
間一髪避ける事に成功しルフィが蹴って飛ばしてくれたのだが…次の玉がサンジに迫ってきていた。
また蛇入りかと思ったサンジが蹴り飛ばそうとした瞬間、今度は蛇ではなく爆発し、後方を見張っていたアスカごと4人は黒こげとなってしまう。
「けほ…っ」
「どうなってんだ!!この『玉』は〜〜〜〜!!!!!」
アスカが黒い息を吐き出すという定番の表現をし、サンジが摩訶不思議な玉に切れて怒鳴り声を上げていると辺りに4人以外の声が響く。
「ほーう!ほうほう!!何が出るかはお楽しみ!その雲の名は『びっくり雲』!」
「誰だ!!」
男の声だが、男にしたら高い声に4には振り返る。
すると太った男が蛇や爆発したのと同じ玉に座って現れた。
「ほっほほう!!へそ!!よくぞ我が"玉の試練"を選んでくれた!ほっほほう!」
「お前が『玉の試練』か!?『玉』か!?」
「ほっほほーう!!」
「踊ってんじゃねェ!!てめェ何者だァ!!!!」
男はご機嫌のいい笑い声を零しながらぴょんぴょん玉の上で跳ねる。
口ぶりからして男は神官なのだろう。
踊り始める神官を見上げ、アスカ達は怪訝とさせた。
「…何だ、案外マヌケそうな奴だな……」
「あんなのが神官なの?」
「おいダンゴ!!ナミさん達は無事なんだろうな!!!」
「生け贄の事か?ならば知らねェ。あいつらは放っておいても死ぬからな…運良く逃げ出せてもどの道死ぬからな。」
「んだとォ!!?」
「お前達はお前達の心配をしろ!一応言っておくがおれに勝たなくては当然先には進めないからな!」
神官はそう言ってポン、と飛び上がる。
「き!…来た!ルフィ!やれ!!やっちまえ!!」
「よっしゃ!打ち落としてやる!!!」
「
ほう、伸びるのか」
「ゴムゴムの…えっ?」
本当にこの神官が知らなかろうが知っていようが、神官が来たのなら話は早い。
この丸々太った神官を倒してナミ達のところに行けばいいだけの話である。
ルフィは腕を伸ばし先手を打とうとするも神官はルフィの能力を知っていたように攻撃を避け、ルフィに手を伸ばし触れてもいないのに打撃を与えルフィを吹き飛ばした。
アスカはルフィの攻撃が避けられたのを見た瞬間能力を出し船を蹴る。
「ルフィ!!」
「ほほーう…
後ろか」
「え……――ッが…!!!」
ルフィがやられた瞬間アスカが瞬時に神官の背後に回り蹴ろうとしていた。
しかし神官はそれすら読んでいたようで、回し蹴りをくらわそうとするアスカにルフィと同じく交わした後打撃を与えた。
強い衝撃にアスカの体は吹き飛び、そのままルフィと同じく木に背中を強打し、その衝撃から口から血を吐き出した。
「アスカちゃんッ!!!!」
「アスカ!!?…ルフィ!!おい!平気なんだろ!?ただの打撃がお前に効くハズねェ!!」
「打撃?少し違う…!」
アスカの攻撃は死角だったはずだった。
素早さも目でとらえられないくらい早かったはずなのだ。
しかしそれでもアスカの攻撃は読まれているように簡単に避けられてしまう。
サンジはアスカが地面にうつ伏せに倒れ動かないのを見て頭に血が上ったように神官を睨み向かっていく。
「何が違うんだよ!!!アスカちゃんを攻撃しやがって…!!!」
「ほっほう…!
右足上段の蹴り」
「ッ!―――何!?」
しかし、やはりサンジのその攻撃も神官に読まれ交わされた挙句に二人と同じ衝撃を受けサンジも船から落ちてしまう。
「う!!…うわあああ!!!サンジィ!!!」
「打撃とは違う……"衝撃(インパクト)"!!!」
主戦が三人もいてウソップは安心していた。
しかしその三人の主戦があっという間に船から吹き飛ばされ地面に倒れているのを見てウソップは悲鳴を上げる。
慌てて三人の無事を確認するように船から三人を見下ろしていると―――ウソップも神官の攻撃に船から降ろされてしまった。
「衝撃は身体の"隋"より破壊する!!」
「くそ…っ!!アスカ!サンジ!ウソップ!!」
気がついたルフィは3人の名を呼びながら起き上がる。
2人は気を失ってはいないものの痛みで身体を震わせ、アスカはルフィの声で目を覚ましうつ伏せの状態から体を起こそうとする。
しかしアスカの目に意外なものが映った。
「これ……"土"?」
うつ伏せで倒れたアスカは腕を立ててゆっくりと起き上がろうとする。
その際にジャリ、と空島ではありえない音や感触を感じ、アスカは痛みでうっすらとしか開いていなかった目をぱちりと開ける。
そこには青海出身のアスカならば飽きるほど見た『土』があった。
上半身を起こし手で地面を触れれば青海ならば当たり前の土が手についてくる。
「!―――!―――…アスカ!!!」
「―――ッ!!」
土を見て呆けていたアスカは肩を掴まれ、そしてルフィの声でハッと我に返る。
顔を上げればルフィが焦った表情を見せながらこちらを見ていたのに気づく。
「アスカ!」
「ルフィ……ごめん、大丈夫」
「そ、そうか!よかった…」
ルフィはアスカだけが返事がないのに焦っていたようで、傍にいたアスカに駆け寄り手を見つめていたアスカの肩を掴んで声をかけたらしい。
アスカが我に返りようやく自分を見上げ、金色のアスカの瞳に自分が映っているのを見てルフィはあからさまにホッとした表情を浮かべていた。
サンジも固まっていたアスカを心配していたのかルフィの声かけに反応したのに安堵しながら自分たちを船から降ろした敵を睨むように見上げた。
「ほう!ほう〜う!!おれの名はサトリ!!全能なる神・エネルに仕える神官、その一人だ!!!この"迷いの森"ヴァースを掌っている!!」
「迷いの森?」
「そう、この森のことだ……そして迷うのはお前達の船!!!」
「!!」
サトリと名乗った神官はやはり神の使いらしく、この森を掌っているらしい。
しかも迷いの森と不吉な名前もついており、サトリはルフィの問いに頷き…船を動かした。
動き出した船からサトリも玉に移り、誰も乗っていない船はそのまま進んでしまう。
「これから船は森の中の"雲の川"を無作為に走り回り…やがて勝手にこの森唯一の出口から出て行くのだ!!分かっていると思うが貝船を失う事は"生け贄"への道を失うのと同じ!!そうなる前にお前達は船を見つけて乗り込むことだ…勿論ここに浮く無数の"びっくり雲"とこのおれがさせない…!」
勝手に船が進んでしまったことに焦りを覚えるルフィ達を見下ろし、サトリはにんまりと笑う。
そして…
「ようこそ禁断の聖地"神の島"へ…ほう!!…ここは"迷いの森"。生存率10%!!『玉の試練』!!!」
戦いの火蓋は切られた。
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