(134 / 293) ラビットガール (134)

あの後、アスカ達は道の途中ゲリラ達との遭遇というトラブルはあったが、戦闘にはならず忠告されただけだった。
そのあと試練はなく、なんとか別れていたナミ達と合流することが出来た。
足を思いっきりやられたアスカはその痛みを隠していたため、誰にもばれる事はなかったが船から下りようとするが激痛で立てなかった。


「アスカちゃん!?」

「アスカ!どうしたの!!?」

「………ッ」


降りようとしたアスカが片足を押さえ息を呑み蹲るアスカにサンジ達が駆けつける。
すぐ医師であるチョッパーも駆けつけくれた。


「大変だ!!骨にヒビが入ってる!!」

「「えぇーーっ!!?」」


サトリのインパクトを足に直接受けた上に、その時手を放してもらえなかったからか、足の骨にヒビが入りそのせいで立てないほどの痛みがアスカを襲う。
今まで立っていられたのが不思議なほどで、恐らく立っていられたのは気力と試練を受け気を張っていたからだろうとチョッパーは診断した。
アスカはチョッパーを助けに来て大怪我を負っている空の騎士と共に絶対安静を貰ってしまった。
骨にヒビが入っているために歩くのも困難で、ナミはゾロにアスカを運ばせる。
なぜゾロなのかと言うと…サンジとルフィが運ぶと言って聞かなかったが、アスカを怪我させて尚且つ気づかなかったための説教でそれどころではなかったのだ。


「今キッチンに空の騎士を寝かせてるからそこで治療するよ!」

「わかった」


ゾロに横抱きにされるアスカは痛みからか呼吸が浅く、眉間にしわをよせ、縋るようにゾロの服を掴むその手も、そして体も痛みに震えていた。
そんなアスカを見下ろしながらゾロは『こうしていれば普通の女なんだがなァ』と思う。
アスカが痛そうにしているのを見てチョッパーは慌ててキッチンに案内する。
キッチンに着くと空の騎士が眠っておりその傍にはピエールが寄り添っていた。
チョッパーはアスカを治療しながらルフィ達に空の騎士の話をする。


「タダでくれた笛1個のためにここまで戦ってくれたのか…」

「空の騎士が来てくれなかったらおれも船もダメだった…」

「色々聞きてェ事もあるが…目を覚ますまで待とう。…おめェもありがとな」

「ピエ〜〜〜!」


合流し、時間も時間なため、今日はこれからの事を話し合うことだけにした。
動くのは明日となり、もし襲われても戦いやすいという理由で船を降り湖畔にキャンプを張る事になり、アスカは今度はサンジに抱き上げられ移動する事になった。
木の根っこに座らされ準備が終わるまでじっと待っていた。
しかし、硬い場所に座るとお尻が痛くなるので、ウサギをクッションにして敷いてその上に遠慮なく座る。
虐待?いいえ、彼ら(アスカのウサギ限定)は基本ドMですので虐待ではありません。


「はい、アスカ!」

「ありがとう、チョッパー」


絶対安静を貰ったため、空の騎士の傍で座っていたアスカにチョッパーは食事を渡し、ピエールにも食事を渡す。
アスカは鳥なのにシチュー?と思いながら持ち前の我関せずで黙々と食事を口に運んだ。
やはりサンジの料理は美味しい。
それから話し合いで黄金を狙うことに決め、アスカはやはり居残りだった。
アスカも骨にヒビが入っているという診察が出たため渋ることなくその指示を受け入れた。


「はァー、食った食った〜明日は黄金!晴れるかな?」

「そりゃ雲の上だもん」

「夜も更けたわ。用のない火は消さなくちゃ…敵に位置を知らせてしまうだけよ」

「バカな事を…聞いたか?ウソップ。あんな事言ってらァ…火を消すってよ…」

「仕方ねェさ、そう言ってやるな。ロビンは今まで闇に生きてきた女…知らねェだけだ」

「?……どういう事…?」


話し合いながら食べているといつのまにか夜となり、ロビンは敵に見つかると火を消そうとした。
ロビンは正しい。
そう…正しいのだが……ルフィとウソップの言葉にロビンは怪訝とする。


「キャンプファイアーするだろうがよォォ!普通!!!」

「キャンプの夜はたとえこの命尽き果てようともキャンプファイアーだけはしたいのが人道!」

バカはあんたらだ


いつまでたってもお子様な二人にナミの鋭いツッコミが入る。
キャンプファイアーやら宴やらが大好きなのは分かるが、今は敵陣にいるのだ。
それを理解してもらわないと自分たちの身が危なくなってしまう。
だからナミはギロリとウソップとルフィを睨む。


「いい加減にしなさいよ!!この森がどれだけ危険な場所かって事ぐらいわかってるでしょ!!」

「知らん!」

「神官もいる!ゲリラもいる!!それ以前に夜の森はただそれだけでも危ない所なのよ!!猛獣だって化け物だっているかもしれない!!!」

「化け物も〜〜!!?」


ナミはルフィをなんとか諦めさせようとするが…


「おい!ルフィ!!!組み木はこんなもんか?」

「あんたらもやる気満々か!!!」

「大丈夫さナミさん!むしろ猛獣は火が恐ェんだからさ!」

後ろ!後ろ!!もうなんかいるわよ!!!


乗り気なのは何もルフィとウソップだけではなかったようで、男性陣全員がキャンプファイアーをする気満々だった。
獣は火を嫌うのはナミも知ってはいたが…そう言いながら火を持つサンジの後ろには猛獣が目を光らせて唸っていた。
結局キャンプファイアーはすることになり、いつの間にか狼も参加しており、やけ酒をしているナミも楽し気に笑っていた。
ロビンはそんなクルー達を見つめながら、彼女もまた楽し気に笑っていた。


「…………」


アスカは足が動かせないせいで参加は出来ず座ってロビンと同じく見守っていた。
アスカの性格上参加したいとは思ってはいないが、アスカは楽しそうに笑う幼馴染を見つめていると、不意に手に着いたあのペンキを思い出す。
手を広げて手先の赤いそれを見つめ、指を擦りながらアスカはふと笑った。
すると騒ぎに目を覚ましたのか、空の騎士、ガン・フォールがこちらに歩み寄ってきていた。


「雲ウルフを手懐けたか…フフ…エネルの住む地でこんなにバカ騒ぎをする者は他におらぬぞ…」

「あら、お目覚めね…」

「動いてもいいの?」

「うむ……迷惑をかけた…助けるつもりが…」

「何言ってる。充分さ、ありがとうよ」


ガン・フォールはそのままロビンとアスカの間に座り、騒ぐルフィ達を見つめる。
ルフィ達もガン・フォールに気付き騒いだまま声をかける。
チョッパーは楽しいあまり怪我人に踊ろうと誘うほどテンションが高かった。
そんな彼らを見つめながらガン・フォールは口を開く。


「…さっきの…おぬしらの話を聞いておった…この島の元の名をジャヤというそうじゃが…何ゆえ今ここが"聖域"と呼ばれているか…分かるか?」

「地面があるから」

「!…知っておったのか!?」


さきほどのルフィ達の会話を聞いていたらしいガン・フォールの言葉に答えたのはアスカだった。
アスカの言葉にガン・フォールは目を丸くして隣のアスカを見つめるも、アスカは近くの砂を掬いサラサラと砂を落として見せる。


「だって、周りは雲だらけ…砂の一粒も石の一個もないもの……」

「…そうだ…おぬしらにとってここにある地面はあって当然のものなのだろう…だが、空には…これは元々存在し得ぬものだ…"島雲"は植物を育てるが生む事はない…緑も土も本来、空にはないものだ…」


ガン・フォールの話を3人は黙って聞き入る。


「我々はこれを"大地(ヴァース)"とそう呼ぶ…空に生きる者達にとって永遠の憧れそのものだ…」



アスカはガン・フォールの話を聞きながらルフィを見つめ、目を細めた。







「見ろ!!言った通りだろ!!ここに誰かいたんだ!!見たんだおれは!!やっぱりあれは夢じゃなかったんだ…!!」


朝、目を覚ますとウソップが誰かを見たと騒いでいた。
メリーを見ると下手だが完全に修理されており、アスカはマストに触れながら見上げる。


「折れてたマストが直ってる…」

「…だが、言っちゃ悪ィが下手くそだ」

「いい奴もいるもんだ!あははは!!」

「……おれァてっきり…オバケかと…」

「しかしこんな辺境で誰が船を直してくれるってんだよ…この"神の島"はおれ達以外敵しかいねェはずだろ」


マストだけではなく、ところどころ壊れている船の部分も直っていた。
しかもフライングモデルではなく、本来あるべき姿へと戻っていた。
だからこそ首を傾げてしまう。


「でもフライングモデルじゃなくなってるな、ウソップ」

「そこなんだ。それを考えてた…なんでこれを直してくれた奴はメリーの元の姿を知ってるんだ?トサカがなかった事も羽やしっぽがなかった事も…」


誰かが修理してくれたとしても、元のメリー号を知らない限りは元通りにできるはずもない。
それに首をかしげていたが、いつまでも悩んでいても仕方なく、壊れたままよりはとみんなそれぞれ準備に入る。
アスカは足が動かせないため、キッチンでお茶を飲んで忙しない仲間たちを見ていた。
正確に言えばしっぽと耳を生やし能力で痛みを鈍くしているため動けるのだが、やはり医師としてチョッパーからはドクターストップがかかっていたので仕方なく休んでいた。


「さてと、地図を見て!」


ナミが地図を広げてみんなナミの差す地図を覗き込む。
アスカはシュラハテンに連れられ負担を減らしている。


「『探索組』のルートはこうね。南へまっすぐ。この"右目"に何らかの遺跡があるハズだから…まァ、敵もろもろに気をつけて黄金持って来て!!」

「簡単に言いやがって…」

「何だお前、黄金黄金言ってるくせに来ねェのか?」

「そうよ、だってコワイじゃない。その間、私達はメリー号でこの島を抜けるわ…こっちも危険よ。なるべく早く遺跡付近の海岸へ行くからそこで落ち合いましょう!そしてそのまま空島脱出!これで私達は大金持ち海賊団よ!好きなもの買い放題!!」

「ナミ嬉しそう」

「当たり前よ!!もう残金5万ベリーの貧乏海賊団なんてごめんだわ!」


アスカの呟きにナミは拳を握って力説していた。


「よーし!!そんじゃ行くかァ!!!」

「「「おぉ!!!」」」

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