(133 / 293) ラビットガール (133)

インパクトの威力はアスカも体験しているため血を流し気を失っているサンジにどれだけの衝撃を与えたか分かる。
だからこそ慌てていた。


「サンジごめん…ッ!待ってて今傷を治してあげる…!」


庇ってくれたおかげでアスカは怪我はこれ以上酷くはならなかった。
自分を庇ったサンジにアスカは慌てて駆け寄る。
サトリはルフィとウソップに任せ、サンジをサトリから遠ざけてから能力で少しでも傷を治そうと水着を脱ぐ。


「"ラビットセラピー"!」


全裸となったアスカはサンジに跨る。
すると少しずつアスカの体が毛で覆われはじめ、それと同時にアスカの体の形に変化が起こる…―――はずだった。


「ほほーう!お前ウサギになれるのか!」

「!」


少しずつウサギになっていくアスカの背後に、ルフィ達と戦っていたはずのサトリが現れアスカは息を呑む。
サトリの姿にバッと弾かれたように振り返りサトリの背後に目をやると傷だらけのルフィとウソップが倒れているのが見えアスカはギリッと奥歯を噛みしめる。
目聡く回復させまいと現れたサトリにアスカはくそッ、と悪態つきサンジを抱き上げて距離を置こうとしたその瞬間、アスカの行動を読んでいたサトリによってアスカは吹き飛んだ。
その際その衝撃の強さに持っていたサンジを放してしまい、人型に戻ってしまう。


「かはっ…!!」

「ほっほほーう!いい加減に終わったな!お前達!!さっさと安らげ!おれは神官!敵うわけなどないのだ!!」

「だ、駄目だ…もう…!!びっくりしすぎて…心臓が……もたねへ…!!!」


全員満身創痍のルフィ達を見て喜ぶように飛び跳ねるサトリをアスカは睨みながら起き上がる。
体のあちこちが痛すぎてもうどこが痛むのか分からない状態だった。
すでに痛みが全身から来ているため麻痺もしはじめ、少し痛みが感じなくなってきていた。
それにヤバイな、と思いながらアスカはさわさわ…と再び毛を生やし、今度は通常サイズではなく、長身のウサギになる。


「もはや打つ術もなくなるぞ!お前達の船はもうすぐこの森の出口に辿りつく!!…そしたら!もう!終わりだとも!!…この森で死ぬまでさ迷い、力尽きて死んでゆくのだ!!ほっほほーう!!!」

「そんな事になるかァ!!!!」

「ほほう!なるとも!!」


自分たちの負けを決めつけるサトリにルフィが声を挙げ、サトリに向かって腕を伸ばす。
だがやはりサトリにはその行動すら読まれており、簡単に避けられてしまった。


「びっくり"玉鬘…玉ドラゴン"!!!」

「うわァ!!!」


玉が繋がり龍のような仮面を被った玉ドラゴンをサトリは釣竿のようなもので操り、ルフィに襲い掛かる。


「ほっほほーう!!さァどれが"火炎玉"かな?お楽しみっ!!」


ウサギになっている途中、ウソップがどこかに走り出したのを見てアスカは船を探しに行っているのだろうとどこか頭の端で冷静に分析し、船はウソップに任せることにした。
そして完全な長身ウサギになったアスカは地面を蹴り、玉ドラゴンから逃げるルフィの横を通り過ぎる。
ルフィの声が背後から聞こえたが、今のアスカには目の前の敵しか見ていない。
勿論その速さは常人ではとらえられないほどで、本来なら不意打ちが効くはずなのだ。
しかし今相手をしている敵は常人ではない。


「ほっほほーう…左上段の蹴り…」

「―――!!」


やはりサトリは目にも止まらない速さで蹴りを入れようとしているアスカに気付いていた。
目線をルフィに向けながらアスカの蹴りを手で止め、アスカは目を丸くする。


「おれを攻撃するのは無駄だぞ!ほっほほーーう!!!」

「――――ッ!!」

「アスカ…ッ!!!」


サトリはアスカの足を掴んだままインパクトを放つ。
宛がっただけであの威力なのに掴んだままのインパクトの衝撃はそれ以上だった。
麻痺しはじめていた痛みが激痛に変わり、アスカはその強すぎる痛みに悲鳴を上げた。
アスカの悲鳴にルフィも悲鳴に似た声で叫んだ。
振り返ればアスカは痛みにウサギが解けはじめており、そんなアスカの足をサトリは放さず、アスカは逆さ吊りのようにぶら下がっていた。


「アスカ!!アスカッ!!」

「安心しろ!お前もあの金髪の後を追わせてやるからな!!」

「………くッ…!」


痛みで意識が飛びそうになりながらもアスカの耳はルフィの声が聞こえていた。
薄れる意識の中でも敵を睨みつけるアスカいサトリはもう一度アスカの身体にインパクトを放とうとする。
しかし、サトリの耳にブチッ、と何かが切れた音が届き、そちらに目をやるとルフィが玉ドラゴンの仕掛けに気付いて糸を切っていた。


「アスカを放せ!!!」

「あァっ!!玉ドラゴンを操れなくなってしまった!おのれ!小癪な!お前!そのままこっちへこい!!!」

「え!!うわわわっ!!!」


サトリは糸を持っている手をグイッと引っ張った。
だがアスカを助けようとすることで頭が一杯なルフィは手を放すのも忘れそのままサトリへ引き寄せられてしまう。
薄れていった意識もその騒がしい声や嫌な予感に閉じかけていた目をゆっくりと開く。
すると目の前にはこちらに向かってくるルフィと……爆発が起こる玉が体のどれかに入っている、玉ドラゴンが迫っていた。
それにはアスカも顔を引きつらせる。


「はっ!!!そっちの手は離して来んかい〜〜〜〜〜〜!!!!!」

「え…ちょっと…!ま……ッ」


やばい、とアスカは思った。
だがサトリも焦っているのか糸もアスカも離さずぎゅっと強く握っており慌てふためいていた。
そんなサトリに伝染したようにアスカも慌てた。

そして……一部の森から爆発が起こる。







その場にいたのはサトリだけだった。
ルフィとアスカはその場のどこにもおらず、サトリは爆発して黒焦げになっている場所を見下ろす。


「ハァ…ハァ…ハァ…あ、危なかった…!!……信じ難いアホめ…!!いや、あるいは本気でおれと自分の仲間を道連れの覚悟か…」

いやホント、危なかった

「きゅ…」

「お前ら生きてたのかァ!!!」

「―――離すなよ!!ルフィ…もう二度と逃がすなそのダンゴ…」


ゼーハー言いながらサトリは逃げ切って安堵していた。
大きな爆発だったからか、下はその爆破の威力を表すように地面が抉れて黒焦げとなっていた。
しかし、背後から声がし、サトリは後ろを見た。
そこには自分の背中に張り付き同じく難を逃れたルフィと、そのルフィとサトリの間に挟まる形で通常ウサギとなって同じく逃れたアスカがいた。
咄嗟にウサギになり、そのウサギになったアスカをルフィが掴み一緒に背中に逃げたのだろう。
ルフィとサトリに挟まれて少し苦しそうである。
すると、気を失っていたサンジが玉に座って現れた。


「あ、サンジ生きてたのか」

「てめェのせいで死ぬトコだよ!!!ちっとァ周りに気ィ配れ!!!!」


サンジの言葉にアスカも力強く頷く。
アスカが頷いたのと同時に、サンジはタバコを取り出し火をつけた。


「まァ、とにかく…ダンゴマン……お前は試練試練ととやかく言うが正直おれらにゃ実に覚えのねェ話…だが受けよう空くんだりのクソ試練…なぜならか弱いレディーが2人おれの助けを待ち、そしてもう一人…アスカちゃんがおれの助けを待っている!……つまり、そうだ……これは"恋の試練"!!

(こいつもアホなのかーーーっ!!!)


サトリのようにアスカは心を読むことはできないが、シンクロしたようにアスカも同じことを思った。
いつものサンジの女に弱いその発言に助けてもらったが呆れ返ってしまう。
どうやらサンジはサトリとルフィの間にアスカがいることに気付いていないようである。


「お前ら…!!クソ…!!離せ!!!お前達卑怯だぞ!!2人掛とは!!!」

「仲間を無断で誘拐するような…可愛い天使を泣かして殺そうとするような連中に!!卑怯と言われる筋合いはねェな!」

「!!」

「あぁ、そらそうだ!…お前おれ達の動きを読めるのはすげェけどよ、いくら読めても…よけられなかったら読める意味ねェよな!!ししし!!!」


確かに、サトリの動きを読める能力は厄介だ。
そのせいで闘いも長引いてしまっている。
しかしルフィの言う通りサトリの動きを止めさえすれば攻撃が読めようが読めなかろうが同じなのだ
サトリは次の行動が読めるからこそその恐怖は倍のようで来るであろうサンジの攻撃に汗を流し慌てる。


「やめろ!!バカめ!!おれは"神"に仕える神官だぞ!!!離せ!!!おい!聞いているのか!!!神官に裁かれないという罪ではこの国には第一級犯罪に値するんだぞ!!!!このおれに手を出すという事はいいか!"神・エネル"に宣戦布告を意味するのだ!!!!」

「口を閉じろ風味が逃げる…例えばコショウを最高のミニュネットに仕上げたければ大切なのは強く粗くためらわず……砕ききることだ…」


サンジはそう呟きながら玉から飛び上がり体を回転させ威力を付ける。
そのままサトリに"粗砕"を食らわせ―――サトリはサンジの蹴りをもろに食らい、気を失い倒れる。
サトリが落ちていく間、ルフィがサトリの体に巻きつけていた手足を解いた瞬間、アスカは苦しみと暑苦しさから逃げる為、人に戻り降り立つ。
その瞬間、インパクトを受けた方の足がズキリと激痛が走ったが、気づかないフリをしゆっくりと立ち上がる。


「え…ええええ!?アスカちゃん!!?」

「ふぅ…苦しかった!」

「な、ななななななんといういい格好…っ!ってそうじゃなくてアスカちゃんいたの!?」

「いたけど?」


その隣にルフィも降り立ったのだが、サンジはまさかアスカがいると思っていなかったというのもありアスカに気を取られていた。
まさか攻撃した先に愛しのアスカがいるとは思ってもみなかったサンジは顔を青ざめた。
その愛しのアスカは服全部脱いだため今は全裸で堂々と腰に手を当て隠すもんを隠さず立っていた。


「あぁ!なんて事だ!!アスカちゃんがいたのにおれァ救出する前にダンゴ野郎を倒してアスカちゃんを怖い思いさせていたなんてェェェ!!!!」

「それより服頂戴」

「どうぞ!!!お使いください!!!」


後悔真っ最中なサンジにアスカは全裸だからと服を要求する。
手を差し出すアスカに、サンジは喜んで着ていた上着を捧げ、ズボンも捧げようとするも『いやズボンはいらない』と断った。
また襲われた時の事を考えたのだろう。
サンジは上着を畳んで丁重に渡す時に『ありがとうございます!!!』とお礼を言って頭どころか腰を折ってお礼を言った。
その顔からはちょっと鼻血が出ていた。


「ルフィ!サンジ!アスカ〜〜〜!!!船見つけた〜〜〜!!!急げ〜〜!森を出ちまう〜〜〜〜!!!!」

「おォ…ウソップじゃねェか…あいつ無事だったんだな…爆発の後消えたからてっきり吹き飛んだのかと思った」

「おい!船やべェってよ!!とにかく走ろう!!よく見つけたなー!あいつ!」


アスカはウソップがどこかへ走っていったのを見たので無事なのを知っていたし船を探しに行ったのも知っていたからそれほど驚きもない。
ウソップは三人が戦っている間、船を追いかけやっと場所を突き止めてアスカ達にその場所を知らせる。
少し戦闘に時間をかけ過ぎたのか、船は出口へ走っていた。


「まずい!!あれはもう出口へのルートだ!!…おい!お前らおれの体にしがみつけ!!」

「体に!?」

「早く!」

「…………」


出口へ向かう船を見てウソップは焦る。
船だけが出口へ向かってしまうとここから出るのは骨が折れるだろう。
ウソップは慌てて船に"ウソップアーアアー"を伸ばし捕まえ、ルフィもサンジもウソップに言われ捕まるがアスカは嫌な予感がし一歩前に歩くだけで痛みが強く走るためそれを誤魔化すように足をウサギに変えるだけだった。


「おい!アスカ!早く掴まれ!!」

いや。

「な、なにィィ!?つかまらねェと―――…!!」


アスカだけがウソップにしがみつかない、ルフィが手を伸ばしたのだがアスカに断られてしまう。
アスカがしがみつかないためルフィもウソップもサンジも焦ったが、その瞬間…船に繋いだ紐に引っ張られアスカを置いて三人は船へ向かう。
しかし…途中大きな木々に体をぶつけ、それを見送りながらアスカは自分の選択は正しかったと無駄に怪我を追わずにすむとホッとする。
そしてアスカも置いていかれるのは嫌なので三人の後を追おうとグッと体重を足にかけたのだが…


「…っ!」


足に激痛が走りその場に蹲ってしまう。
普通の痛みと違うその強い痛みにアスカは脂汗が流れる。


「「アスカ〜〜〜〜ッ!!!!!」」

「アスカちゃん!!!」

「………ッ」


船に一足先に乗り込んだ三人の焦った声にアスカは痛みを我慢し、先に行ってるルフィ達を追った。
船に乗り込んだ時にはルフィ達はボロッボロになって沈んでいた。
そんな3人にアスカは『掴まらなくてよかった』、と思ったという。

133 / 293
| top | back |
しおりを挟む