「精霊?」
チョッパーはルフィの言葉に首を傾げる。
そりゃそうだ、どう見てもこの老人は精霊には見えない。
ルフィ達は精霊(仮)を囲んで話ていた。
「だって竹を割ったら現れたんだ」
「……おい…お前何か喋れ」
「……………」
老人は身体を起こし、何も言わない。
そして老人が何も言わないからルフィ達も何も言わない。
その無言は長く続き、先に口を開いたのは老人だった。
「勿論覚えているとも…久しぶりだな、元気だったか?お前ら」
「え?…誰か知り合いか?」
「おれ知らねぇ!」
「おれも」
「
ああ、道理で見た事もねぇツラだと思った」
「テキトーだな!おい!!何者だおっさん!!」
ウソップの言葉に老人は立ち上がり鼻を擦りながら名乗った。
老人はトンジットと名乗り、お礼を言う。
トンジットは竹の上にいたらしく、しかもその竹はもともと竹馬だったらしい。
「でもてっぺんが見えねぇ程長〜〜え竹だったぞ」
「そう。そのてっぺんにおれはいたのだ」
「何だ、竹を割ったから出てきた精霊じゃなくて竹馬折ったから落ちてきたおっさんなのか…何でそんな長い竹馬に乗ってんだ?」
竹馬と言われ思いつくのは成人男性の背より少し高めに切られた竹。
しかしルフィが蹴った竹はどう見ても成人男性の背よりもはるかに高い。
ルフィの問いにトンジットは背を向け、風に吹かれる。
「昔から竹馬が好きでな…この島の長い竹を使って世界一長い竹馬に挑戦したわけだ!!するとどうだ…登ったはいいが怖くて降りられませんでした!!」
「バカかおっさん」
「その期間10年」
「
大バカか!!」
「10年もずっと竹馬に乗ってたのか!?」
「そうだ。それにその間竹は成長を続けるもんで…ますます降りられなくなったのだ!!
あ〜〜〜〜恐かった。」
「10年分の感想がそれか」
10年も竹馬に乗って生活していたらしいトンジットの10年分の感想に思わず肩を落として脱力してしまう。
その間の食事などは同じく背が高い木に生っている果物で何とか食いつないでいたらしい。
「気の長ぇ話だな…」
「長ぇといやぁ、おっさん!この島の生き物は何でどいつもこいつも長いんだ!木も動物も!」
10年も竹馬に乗り続けていたトンジットに気が長いとウソップは感心した。
関心というよりは呆れになるのかもしれないが。
ルフィは『気が長い』という言葉の『長い』に反応し、動物や木が長いことを聞く。
ルフィからの素朴な疑問にトンジットは堂々と『のびのびと生きているから』と言い切った。
それにもちょっぴり関心しながらも、トンジットは色々な動物を紹介してくれたあと、助けてくれたお礼にと家へ招待してくれた。
その家が、先ほどルフィが勝手に入っていった唯一の建物である。
しかし…
「あら…お帰りなさい、あなた」
トンジットの家に入ると、目の前には絶世の美女が座っており、その美女はトンジット達に気付き誰もが見惚れる笑顔で出迎えてくれた。
そんな美女にウソップ達は頬を染めているなか、トンジットは一瞬止まったようなそぶりを見せた後、頷いた。
「あぁ。ただいま」
「え?誰!?おっさんの奥さんなのか!?若ェ奥さんだな!!」
「あれ?おれ達が来た時はいなかったぞ?」
「…!?……!……!!!」
トンジットが返事をし、その美女もトンジットに向けて『あなた』と言っていたような気もしたためウソップ達はその絶世の美女を『トンジットの妻』と思い、その若さに驚く。
チョッパーも人がいて驚いていたが、さきほどルフィが入っていったときは誰もいなかったことろを思い出し首をかしげ………ルフィは口をあんぐりと開け絶句していた。
様々な反応を見せるルフィ達を見渡し、美女はくすりと微笑みを浮かべる。
「ふふ、奥さんでも何でもない赤の他人ですわ」
「
ああ、道理で見た事もねぇツラだと思った」
「またかおっさん!!!!」
どうやらまたトンジットのボケらしく、ビシッとツッコミを入れるウソップを見て、美女はクスクスと可笑しそうに笑う。
その笑い声にハッと我に返ったウソップは女性に振り返り頬を染めながら指を差す。
「ま、待てよっ!!おっさんの奥さんじゃないならお前誰だ!!!泥棒か!!!」
「泥棒!?ギャーーー!!海軍ーーー!!!」
トンジットが知り合いでもなければ、先ほど入った時にいなかったという…その美女の正体にウソップは泥棒かと声を上げる。
泥棒という言葉にチョッパーは慌てだし大声で海軍を呼ぶが、海軍を呼ばれてマズいのは自分たちだと気づいていない。
肝心の美女はウソップに指差され、泥棒呼ばわりされているのに何も反論もせず目を細めて微笑むだけだった。
しかし視線をウソップからルフィへ移し…
「随分と賑やかで楽しいお仲間さんをお持ちなのねェ………ルフィ?」
そうぽつりと零した。
ルフィを見つめ、ルフィに親しそうに声をかける美女に、ウソップ達は釣られたようにルフィへ目をやった。
振り向いたルフィの顔には大量の汗が流れており、顔色もこれでもかというくらい青く、あがあがと開いた口が塞がっていない。
いつものルフィを知っているウソップ達から見たらその反応は異常で、ルフィに怪訝と声をかける。
勿論内緒話のように小声で。
「おい!知ってんのか?ルフィ!」
「あ…ああああ…ああ!!」
「おめェがそんな挙動不審なのは初めて見るぜ……そんなにヤバイ奴なのか?」
「あああ……ああ、あ、…ああ!」
「だ、大丈夫か?ルフィ…さっきから『ああ』しか言ってないけど…」
「あ…ああ、ああ!」
あまりにもウソップの質問に『あ』しか言っていないため、チョッパーは心配になって声をかけるもやっぱり『あ』しか返ってこなかった。
口が開けたままなのを見ると閉じられないのだろう。
そう思い、ウソップは顎を下から押して閉じさせてあげた。
するとルフィは美女を見つめこれでもかと叫ぶ。
「ね……ねね、ね…!!ね、…!!ねねねね…姉ェちゃァァァァん!!?」
ルフィは美女を指さし叫び、そんな叫びにウソップとチョッパーはバッと弾かれたように美女に振り返る。
「ね、姉ちゃん!!?」
「えええ!?ル、ルフィの姉ちゃんンン!!?」
驚愕の声しか響かないその家に、美女―――ミコトは目を細め笑った。
146 / 293
← | top | back | →
しおりを挟む