(147 / 293) ラビットガール (147)

「ディーバックファイト?」


ナミは突然現れた海賊達の言葉に首を傾げる。
その隣には降りたアスカもおり、同じく聞き慣れない言葉に首をかしげていた。
そんな二人に海賊達は説明してやる。


「そうだ。その戦いの火蓋は互いの船の船長同士の合意の瞬間切って落とされる。今、おれ達の船長がお前達の船長モンキー・D・ルフィに戦いを申し込んでいる頃…!!」

「申し入れ…?何を眠てェことやってんだ。ケンカなら買うっつてんだろ!!」

「おい…お前知らねェのか?ケンカじゃない"デービーバックファイト"は海賊のゲームだ」

「海賊のゲーム?」


知らないのはアスカ、ナミ、ゾロだけだったらしく、ただ単に喧嘩を売ってきたと思っているゾロが刀を抜きかけ、それをサンジが止めに入る。
そのサンジにロビンも続いて、海賊達の説明で足りないところを補足してくれた。


「そうよ。海のどこかにあるという海賊達の楽園…"海賊島"でその昔生まれたというゲーム…より優れた舟乗り手に入れる為、海賊が海賊を奪い合ったというわ…」


ロビンの説明を聞いていると船から呆れた声が届く。


「そんな事も知らねェでよく海賊をやってこれたな!…『デービーバックファイト』ってのは"人取り合戦"の事さ!!おれ達が挑むのは"4コインゲーム"!!4本勝負だ!!!」

「4って…不吉な数字……」

「1勝負ごとに勝者は相手の船から好きな船員を貰い受ける事ができる!!」

「貰われた船員は速やかに敵の船長の忠実な部下となる!!」

「深海の海賊"デービー・ジョーンズ"に誓ってな!」


その勝負は4本勝負のゲームで、更に言えば負ければ負けた方の海賊を取られるというなんともエグイ勝負らしく、それを聞いたナミが目を丸くする。
しかし仲間だけではなく、もし欲しい船員がいなかった場合は、人ではなく海賊旗の印を剥奪することもできるという。
それを聞いてアスカはハッとさせる。


「じゃぁ…あの纏わりのない船って……もしかして…」


アスカの言葉は海賊達にも届いているのかその言葉に笑い声を零す。


「ほう!もしや"キバガエル海賊団"の船にでも会ったか?あの船ならさっきゲームの餌食になったのさ!!」


やはりシーモンキーの悪戯にあう前に遭遇した纏まりのない船はこの海賊達が言っていたデービーバックファイトというゲームの犠牲者だったらしい。
『見ろ!』と言う男に4人の男が前に出る。
1人はあの船の元船長、そしてその隣には元船医、元航海士、元船大工…と紹介が続く。
『ここまで揃って移籍になるともはや吸収合併だな!』と大笑いする海賊たちを見て、アスカは不快に顔を歪めた。


「バカバカしい!!私達はそんなゲームの申し入れ絶対受けないわ!!」


仲間が奪われた船を見てナミはゾッとさせる。
8人だけの少人数の海賊だが、だからこそ絆が深い。
だからこの8人の誰かが引き抜かれて仲間ではなくなるというのは想像出来ないししたくはない。
避けれるのなら避けるべきゲームである。
しかし、ナミ達にはその拒否権はないと言った。


「泣けどわめけどお前達の船長、モンキー・D・ルフィが首を縦にふればお前達も全員ゲームの参加者となるのだ!!」

「その通りだ。ナミさん、これは海賊の世界では暗黙のルール…逃げ出せばこの世界で大恥かく事になるぜ!」

「いいじゃない!恥かくくらい!!」

「生き恥をさらすくらいなら死ぬ方がいい。」

「右に同じ」

「何よそれ!2人共っ!!」

「諦めなさい…男ってこういう生き物よ…」

「面倒な生き物なんだね…男って…」

「んもーっ!!じゃぁルフィを止めなきゃ!!」

「ムダだ!あがくな!船長同士が同時に撃つ2発の銃声が開戦の合図!!大人しく…」


暗黙のルールだろうが、海賊の恥だろうが、男として生き恥をさらすくらいなら死ぬとか…。
女のナミからしたらどーーでもいいことである。
が、男連中、海賊連中はそれを恥としているらしく、売られた喧嘩は買う主義の男連中に噛みつくも噛み切れず、ならばとルフィを止めに走ろうとするのだが……遠くで銃声が二発、響くのが聞こえた。


「まさか…!!」

「あ〜あ、受けやがった…」

「望むところだ…」

「面白そうね…」

「あの馬鹿…」


ナミは現実逃避にどこかに街か何かがあってそこで乱闘事件が起きて〜…と考えようとはしたが、それはいくらなんでも無理がありすぎた。
その銃声はあまりにもタイミングが合いすぎ、その二発のうち一発の銃声はモンキー・D・ルフィが撃ったのだろうと推測できる。
仲間を失うかもしれないというゲームを受けたくもないナミは頭を抱え、サンジは呆れ顔をし、ゾロは不敵に笑い、ロビンは目を細め、アスカは溜息をつく。
それに対し、海賊達は銃声を聞き大きく歓声を上げた。


「ゲームを受諾したーーー!!!!」


ナミは人生で初めて…心の底から人を恨んだという。
『あんの馬鹿…!!絶対殴ってやる…!』と心に秘めて。







ゲーム会場は、この島の中で行われるようである。
その準備は全て麦わら海賊団にゲームを仕掛けた側である、フォクシー海賊団が行い、アスカはルフィ達を待ちながら目の前で出店があっという間に出来上がるのを見て暇をつぶしていた。


「おーい!!」


そしてしばらくして別々に行動していたルフィ、ウソップ、チョッパーがやっと来た。
ナミはそのルフィの声に一番に反応し顔を鬼のようにしながら振り返る。
しかし来るであろうナミの怒鳴り声も聞こえず、アスカは首を傾げながらナミ同様面倒なことを起こした文句を言おうと振り返った。
だが…アスカはルフィよりもそのそばにいる"人物"に目を奪われる。


「お…!?おおお…!!お、お姉さまあああああっ!!??」

「あら、アスカ」


アスカが目を奪われた人物…それはアスカが『姉』と盲目に慕うルフィの実姉、ミコトだった。
アスカは愛おしい姉の姿に、すでにアスカの目はミコトしか映っておらず表情乏しいいつもの顔が満面の笑みを浮かべ目も輝いていた。
シュラハテンに『早くお姉さまのところへ!!!はやく!!』と叩いて急かし、慌ててシュラハテンは姉だというミコトのもとに駆け寄る。


「お姉さま〜〜っ!!会いたかったです〜〜!!」


アスカはある程度近づくとミコトの胸に飛び込むようにシュラハテンから降り、ミコトは少女とはいえ一人の女の子が飛び込んできても易々と受け止めた。
あの後ミコトはルフィと一緒にいたのだが、途中ルフィがフォクシー海賊団の船長であるフォクシーの『デービーバックファイト』を受けてしまい、用事があったが心配だとついてきたらしい。
それを聞いてルフィへの文句ばかりだったアスカだったが、『グッチョブ!ルフィ!!』とルフィを褒めたたえていた。
胸に飛び込んで嬉しそうに抱き着く弟の幼馴染にミコトも表情をやわらげ嬉しそうに微笑みアスカの頭を撫でる。


「まあ、アスカったら……ふふ、わたくしもあなたに会いたかったわ」

「ほ、本当ですか!?」

「ええ」

「〜〜〜〜ッッ!!」


慕ってくれる可愛い妹にミコトも頷き、その言葉にアスカは言葉にならない喜々とした悲鳴を上げる。
『私…!ここで死んでもいい!!』と思うほどの嬉しさのあまりアスカは気を失いかけ、よろける背中をシュラハテンがしっぽで支えた。
はう…、と声を零し頬をこれでもかと染める可愛い妹を微笑ましく見つめていたミコトだったが…『でも』、とルフィを見る。
二人の再会を焼きそばを頬張りながら見守っていたルフィは姉と目と目が合い、更にはその視線が凍るような目だったため、ドキリと心拍数を挙げた。
勿論、恐怖からである。


「ねえ、ルー君…わたくしにはアスカの体に包帯が巻かれているようにも見えるんだけど……どうしてかしら?」

「ぅぐ…!?」


ルフィはアスカに負けないくらい姉が大好きである。
まだ悪魔の実を食べていなかった頃のエースにも、サボにも負けたことのない姉の強さも、その鈍いルフィにも分かる美貌も、出来た内面も…ルフィは大好きである。
ミコトも優しく、実弟であるルフィだけではなく、血のつながらないアスカ、エース、サボを本当の弟妹のように可愛がっている。
しかしその反面、怒らせると怖いのだ。
ルフィ的にはガープの次くらいに怒った姉は怖い。
そのまさに祖父の次に怖いという怒った姉の言葉にルフィは食べていた焼きそばを詰まらせ胸を叩き、ルフィは何とか飲み込む。


「まさかと思っていたんですのよ?久々に会いに行けばエー君もいない、ルー君もいない…そしてアスカもいない……ダダンさんに聞いても知らぬ存ぜぬ…ウープさんに聞いても知らぬ存ぜぬ……でも、村の人たちは嬉しそうに話してくれましたわ……あなた…アスカを海に連れ出したのね」

「ね、姉ちゃん!それはだな…!!その…!」

「それは?何かしら?"その"の続きは?」

「そ、それはァ〜…っ!!」


ミコトはアスカの怪我を目ざとく見つけ、ルフィに迫る。
アスカが海賊となり弟の船に乗っているのは知っている。
しかし、それとこれとは違う。
今のミコトはルフィの姉として、そして、アスカの姉としてここにいるのだ。
妹が怪我をして心配するのは姉として可笑しくはない。
笑顔のまま怒る姉にルフィは普段動かさない頭で必死にどう回避しようかと考えた。
チラリと姉に叱られる原因である幼馴染を見ればうっとりとした顔で自分の姉に抱き着いているのが見えた。







ナミはミコトとルフィのやり取りを見て近くにいたウソップに事情を聞く。
ウソップの口から聞いたナミはミコトへ差している指を震わせた。


「ね、ねぇ…本当にあの人がルフィのお姉さん?」


ルフィの姉というのが信じられないナミはまだ半信半疑だった。
しかし頷くウソップを見て『嘘でしょ!?』と零しウソップからミコトを見る。
宝石や黄金などで目が肥えているナミでも、ミコトという女性はその宝石や黄金など以上に輝いて見えていた。
実際は見たことはないがあの『海賊女帝』の異名を持ち更には『世界一』と謳われ『絶世の美女』とも言われているボア・ハンコックと同等ではないかと思うほどミコトの美貌に圧倒されていた。


「ね、姉ちゃん!!こ、こ、こいつらな!!こいつらおれの仲間!!」


ルフィは姉からの責めを逃れようと目を泳がせ考えていると、視界にナミ達が映った。
みんなミコトに目を奪われていたが、そんな仲間たちを見てルフィは話を逸らす作戦に出る。
ナミ達は突然ルフィから紹介されビクリと肩を揺らす。


「あら、あなた方がルー君とアスカのお仲間さん?」

「「「ル、ルー君!?」」」


話をそらしているのはミコトにも分かったが、しつこく責めるのも可哀想だと思い話はここまでにした。
ルフィは自分から仲間へ意識を移したミコトにホッとしながらも気を取り直し、嬉しそうに『おう!』と笑みを浮かべ姉に仲間を紹介する。
ナミ達はナミ達でミコトの呼び方に何度目かの驚きを見せていた。


「こいつはゾロ!!剣士なんだ!!」

「まあ、あのロロノア・ゾロさん?」

「あ?なんでおれの名前知ってんだ?」

「あなたは有名でしてよ?ですが、まあ…!まあまあまあ!海賊狩りのロロノア・ゾロさんがお仲間さんにいらっしゃるなんて!!ルー君っ!やはりあなたはすごい子ね!お姉ちゃん、鼻が高いわ!!」


最初はゾロを紹介した。
ゾロの名前を聞いてミコトも聞いたことがあるとはしゃぐ。
海賊狩りの名前は東の海で広がっていただけなのだが、ミコトはそれではなく原作を読んでいたから知っていて、本物のロロノア・ゾロに会いテンションが上がっていたのだ。
仲間も自分も褒められたルフィは気をよくしたのか次はナミを、その次はサンジとすでに紹介をし終えているウソップとチョッパー以外のメンバーを姉に紹介する。
ミコトも本でしか見たことのない主人公の仲間たちにテンションをそのままに一人ひとり挨拶をしていった。


「…エースの時も思ってたけど……あの人本当にルフィのお姉さん?アスカのお姉さんじゃなくて?」

「おれもそれ一番に考えたが……ありゃ本当にルフィの姉ちゃんだ」

「その根拠は?」

「最初に会ったとき…人の家に勝手に上がり込んでお茶してた」


正確に言えばエースはルフィの兄でもアスカの兄でもミコトの弟でもない。
しかしその間違いは正されないままであり、エースとミコトの礼儀が正しいため逆にルフィとの血縁を疑ってしまう。
特にミコトの容姿はまさに完璧・絶世の美女・100人中100人が振り返る…などがつくほど整っており、女に弱いサンジは既にミコトに骨抜きにされイケメンが台無しとなっていた。
ナミはそれも含め疑っていたが、ウソップの根拠に『あ、確かにルフィのお姉さんだわ』とすぐに納得したという。

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