(15 / 293) ラビットガール (15)

ガープはその後、二人を置いて海へと帰っていった。
その際置いて行かれることに不安いっぱいのアスカの寂しそうな目を見てガープは抱きしめ『じいじももっとアスカと一緒にいたんじゃぞ〜!じゃがこれもお前達の将来を考えてじいじは心を鬼にしてだなァ〜』と長々と子供では分からないいい訳を並べていた。


「おれ山賊大っっ嫌いなんだ!!」


置いていかれたルフィとアスカは戻り道が分からず村に戻る事も出来ず結局山賊らしいダダンのお世話になることになった。
しかし山賊と言えば、つい最近シャンクスを馬鹿にした山賊のイメージしかなく、ルフィは『んべ』、とルフィは舌を出して嫌そうな顔をダダンに向ける。


「黙れクソガキ!あたしらだっておめェみたいなの預けられて迷惑してんだ!!ここに居たくなきゃ好都合!!出てってその辺で野垂れ死んじまえ!!」

「まーまーお頭」

「メシ食い足りねぇ!おれもあの肉食いてぇ!」

「ウサギなら用意できるけど?」

「ウサギかーウサギはなぁー」


子供の言葉だが、嫌々引き受ける形となったダダンは当然頭に来る。
ダダンは追い返す勢いだが、その頭の怒りを傍にいた部下や幹部達が宥めていた。
しかしルフィはそんなダダン達を無視しルフィはエースが食べている牛肉を羨ましそうに見つめる。
出された食事はなんとも質素なもので、水と一杯のお米のみで、ルフィほど食べないアスカでも少ないと感じる食事だった。
アスカは少ない米をゆっくり噛み締めながらウサギをどこからか取り出すが、ルフィは食い足りないと断った。


「あの肉もこの肉もエースが獲って来た野牛の肉だ!!あたしらにも分け前を渡す事で食卓に並ぶんだ!山賊界は不況なのさ!明日からおめェ死ぬ気で働いて貰うぞ!!掃除・洗濯・靴磨きに武器磨き!窃盗・略奪・サギ・人殺し!!!いいな…!ここでさせられた事は絶対にガープの奴にチクるんじゃねェ!!1日に1回茶碗一杯の米!コップ一杯の!!これだけは保障してやる!後は自分で調達するんだ!!そして勝手に育ちな!!」

「「わかった」」

「んわかったんかいっ!!!泣いたりするトコだ!そこはァ!!」


ガープは怖いが、子供は別段怖くもないダダンはそうここに住むにあたっての決まりを2人に教えた。
その決まりを聞いて2人の心が折れてさっさと出て行かないかという算段もあるが、実際厳しい事情もあるのも否めないだろう。
しかし案外二人はあっさりと頷き、ダダンは泣くことも不満に思うこともなく呆気なく頷く二人にダダンは思わずそのままこける。
こけるダダンをよそにルフィはニカッと歯を見せて笑い、アスカは手に持っているウサギを見下ろす。


「昔じいちゃんにジャングルに投げ込まれた事もあるし、ミミズもカエルもキノコもここが森なら腹一杯食える!おれはいつか海賊になるんだ!!それくらいできなきゃな!!」

「お肉好きだけどルフィほどじゃないし、別にその辺の草食べればいい事だし、食料も呼び込めるから不自由はないよ。」


アスカはウサウサの実の能力で人間が食べてもまずいしか言葉が出ない雑草も平気で食べれるようになった。
しかしだからと言ってベジタリアンではなく、肉も好物の一つである。
ルフィとアスカの言葉を聞き、ダダンは『やっぱガープの血ィ引いてやがる…!』と内心思った。
タフすぎる2人にどう諦めさせようかと考えていると、食事を終えたらしいエースが立ち上がり、何も言わずむすっとした表情のまま家を出た。


「あいつどこ行くんだ?」

「おめェがどこ行くんだよっ!…それより海賊って言ったか!?今!!」


エースが席を立ち家を出ていったのを見てルフィは気になってついて行く。
ダダンは自由人なルフィに頭を抱えかけるが、ルフィの『海賊になる』という言葉に頭にやりかけた手を下げた。
…が、ルフィはすでに家を出てエースを追いかけて姿がなかった。


「ホラ見ろ!逞しすぎだよ!だからヤなんだよ!ガープの孫なんて!!」

「まーまーお頭…」

「ちょっとあんた、コレさばいて。」

「ってお前も逞しすぎだろ!あたしの部下を勝手に使ってんじゃねー!」

「あ、はい」

「お前も使われてるんじゃないよ!!!」

「まーまー、お頭…」


アスカはここが自分たちに害する人間がいない事を察したのか出ていったルフィを追いかけることなく見送る。
その際ついでにと手にいていたウサギを近くにいたダダンの部下に渡してさばいてもらおうとし、来て早々他人の部下をこき使う女の子と何の疑問もなく従う部下の2人にダダンは強く突っ込んだ。
たくましすぎるというか、タフすぎるというか…我が道を行き過ぎる子供達にダダンはついに頭を抱えてしまう。







その後、ウサギの丸焼きを美味しく頂いたアスカはルフィが帰ってこない事に不安を感じていた。
アスカはまだ戦いという事にはド素人のため野生を伸す力はなく、事流主義な事からダダンの命令通り家の手伝いをしていた。
…だが…その時、アスカは自分の新たな能力を知る事になる。
アスカはなんと…―――家庭能力ゼロだった事が判明したのだ。
ルフィ達の家では家事全般をミコトがしており、ミコトがいないときは基本マキノの家でお世話になってマキノが家事をしてくれていたため気づくのが遅かったのだ。
家庭能力ゼロどころかマイナスのアスカにダダンからも『もうお前何もするな…』と言われるほどだったという。


「ねぇ、ルフィ知らない?」

「……………」

「ねぇ、ルフィ知らない?」

「……………」

「ねぇ、ルフィしら…」

「知らねぇよ!!!ついて来んな!」


エースと呼ばれた男の子の後をついて行ったルフィが帰ってこない。
一日、二日と待てどもルフィは帰ってこず、アスカはエースが帰ってくる度に同じことを聞く。
だが三日四日と続くとエースは声を荒げアスカを振り払うように森へと姿を消した。


「………けち。」


森へ消えたエースをアスカは膨れ面を作って渋々見送り、家へと戻っていった。
―――ルフィが戻ってきたのは姿を消して、一週間後だった。

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