(16 / 293) ラビットガール (16)

「今日もどっか行くのか!エース!」

「今日もどこか行くの?ルフィ」

「……………」


今日も今日とてルフィはエースを追いかけ、アレ以来心配性になったアスカはルフィを追いかける。
それが何日も続き、しかも猛獣達との戦いに必然的にアスカも鍛えられ、以前より能力が使えるようになり、食料のために兎を呼び込む他に自分も兎になり猛獣と戦えるようになった。

そして、3ヵ月経ったとき。





「はぁ、はぁ……あ…森を抜けた…」

「くさーい!」


一ヶ月、二ヶ月、三か月…と幾度も追いかけては引き返しを繰り返し、やっとのことでルフィとアスカはある場所へと出た。
森を抜けたそこは、ゴミ溜め場だった。
ここは町の要らなくなったゴミで溢れかえり、そのゴミの中には当然生ゴミもあるため、臭いは強烈である。
ゴム人間だが食べ物に関して以外の嗅覚は普通であるルフィでさえその匂いに顔を歪めるというのに、ウサウサの実の能力者であるアスカには絶えられない臭いであるため、鼻をつまんでもまだ匂うその悪臭にルフィよりも顔を歪ませる。
ルフィは『帰ろうよ』と言うアスカの制止を振り切りゴミ山へと入ってしまい、アスカはルフィがゴミ山に入ってしまったため仕方なくルフィの後に続くが…やはりゴミ山の中は更に強烈な匂いで溢れかえっており、どこか生ごみとは違う生臭い匂いが交じって気分が悪くなってしまいそうになる。
更にこのゴミ山には沢山の人間が住んでおり、その治安は決していいとは言えない。
現にゴミ山に入って一分も経たないうちに『殺しだ〜〜!!』という叫びが聞こえた。
声の方へ目をやれば大柄の汚い男がゆったりと歩いており、片方の手には何かが入っている袋が握られ、もう片方には血がびっしりついている刃物が握られており、生ごみとは違う生臭い匂いの正体が分かった。
生臭い匂いとは、人間の血、そして色々な臭いが混ざっているため気づきにくいが、生臭い匂いが人間の血だと分かるとあの独特の人間が腐った腐臭も嗅ぎ分けられる。
男と目と目があったアスカはビクリと肩を揺らすも男は子供2人など興味がないように何もせず傍を横切った。


「こっちだ!」

「ほんとにー?」


汚いし、臭いし、危険だし、で『来なきゃ良かった』、と後悔するアスカだが、来てしまったのは仕方ないと諦めもはや鼻が利かないアスカはルフィを頼りにエースのもとへ向かった。







ルフィとアスカが森を抜け、付いてきたとは知らないエースは大きな荷物を持ってこそこそと何処かへ向かっていた。


「サボ!!サボいるか!!」

「おおエース!」


向かったのはゴミを抜けたところにある多くある大樹のうちの一つ。
樹齢数百年であろうその大樹の一つを見上げ、エースは小声で誰かを呼ぶ。
小声で上に声をかけたエースに木の上に影が浮かび、その影である子供がエースを見下ろし手を振る。
エースがサボと呼んだ子供の元へひょいっと軽々と木の上へと登り、サボの元へと向かう。


「悪ィ、遅くなった」

「遅かったな…おれはもう町で一仕事してきたぞ」

「そうか、実はおれもだ!!」


エースはサボの所まで木を登り、抱えていた荷物を降ろし括って縛っていた紐を解いて中身を取り出した。
その中身とは宝石や金目になる品々、そして…大金。
サボはエースの持ってきた荷物の中身に目を丸くした。


「うわ!すげェ!おれよりすげェ!!大金だぞ!?どうした!?」

「大門のそばでよ、チンピラ達から奪ってやった!どっかの商船の運び屋かもな。」

「くっそー、今日も負けたなー」

「どっちが勝ってもいいだろ。いつか二人で使う海賊貯金、溜め始めてもう5年になるな…苦労した」


どうやらエースとサボは金目の物等を協力して集めているらしく、太い木の枝を利用して隠し場所であるところにエースが持ってきた大量の大金や金目の物を仕舞う。
子供である彼らがこんなところで多くの金目の物を集めているのは…いずれ海賊になるための資金だった。
その資金は主に海賊船へと使われる予定で、まだ子供の彼らには船がいくらかなど知る由もなく、出来るだけ集めて、二人でこの国から出ようとしていた。


「海賊船なんていくらあれば買えんのかな」

「さァ…何千万か何億か…まだまださ。…早く仕舞えよ、誰に見られるかわからねェ…」


これだけの大金や宝石…見られれば誰かに取られるのは必須。
まだ銀行等なら多少の安心はあるが、ここにそんな大層な物はない。
ならず者ばかりの極悪な連中ばかりで、力があるとしても大人に必ず勝てるというわけでもない。
これらの大金等の扱いは慎重にしなければならないのだ。
エースの言葉に『そうだな』と頷きくり抜いた木の蓋をしたその時…


「海賊船〜〜!!?お前ら海賊になんのか!?」

「あ、馬鹿」


サボの耳に聞き慣れない声が二つ、届く。
エースは聞き慣れている声に驚いた表情を浮かべながらも下へと目線を移す。
するとそこには撒いたと思ったルフィとアスカの姿があり、エースは険しい表情を浮かべ、サボは見知らぬ子供二人にバレてしまった驚きから唖然としていた。
そしてエースに追いついたルフィは空気を読んでおらず『おれも同じだよ!!』と暢気に喜び、ルフィの後ろにいたアスカは呆れたように片手で顔を覆った。

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