(150 / 293) ラビットガール (150)

一回戦は引き分けとなり、二回戦は『グロッキーリング』だった。


「アスカ、本当に大丈夫?」

「うん、大丈夫」


参加者はサンジ、ゾロ、アスカなのだが、アスカは怪我人である。
本当はアスカを不参加にさせたかったのだが、アスカが頑なに拒んだため怪我人のアスカも参加することになった。
怪我をしているという事で大蛇であるシュラハテンも(半強制的に)参加可能としてもらう。
勿論、手出しすれば即失格となる条件であるが。
それでもやはり心配は心配なのか、ナミ、サンジは心配そうにアスカを見つめていた。
チョッパーも医者として納得してなかったが言ったら聞かないアスカだからか、結局説得できなかった。


「大丈夫って…あんた全治一か月ってチョッパーが言ってたでしょ…何が大丈夫なの」

「大丈夫って思ったらなんとかなるんじゃない?」

「ならないよ!!怪我して分かったけどゾロもアスカも似たもの同士だよな!?全然医者の言う事聞かねェ!!」

「大丈夫だって…シュラハテンから降りなきゃいいんでしょ?」

「そういう問題じゃないんだけど……でも、絶対よ?絶対降りちゃ駄目よ!!激しい運動もよ!!」

「んナミさ〜ん!!大丈夫だよ〜!!アスカちゃんに指一本触れさるなんておれが許さないさ〜〜!!!」


チョッパーは医者の言う事を聞かない患者にキレ気味だったが、それすらアスカの耳は通り抜けて去っていく。
心配そうなナミにサンジが締まりのない笑顔を浮かべ、目をハートにさせただけではなく周りもハートを量産しながらナミに自分がついているからとアピールする。
そんなサンジの手をミコトが握りしめる。


「アスカのこと…よろしくお願いします」

「―――っか、必ず…!!必ずあなたを守ってみせます!!」

「そいつじゃねェだろ、アホコック」


ミコトに頼られサンジはデレー、とした顔をしていたが、瞬時にきりっとさせミコトの手を強く握る。
ゾロの突っ込みも聞こえていないほどミコトに魅入られていた。
しかし、見つめ合っていたサンジの頭に強い衝撃が走った。


「お姉さまの手を握るな!!!バカサンジ!!!!」

「まぁまぁアスカったら…」


その衝撃はアスカがシュラハテンにしっぽで頭を殴らせたものだった。
シュラハテンも手加減はしてくれたのか気を失うことはなく、アスカはギロリとサンジを睨む。
『さっさと行くよ!!』とプンプンとした怒りのまま、シュラハテンにサンジを連れて行かせコートの中に入り、アスカの可愛い嫉妬にミコトはコロコロと笑った。
シュラハテンは主の指示通りしっぽでサンジの足を掴んでズルズルと引っ張る。


≪ここで一発!「グロッキーリング」のル〜〜ルを説明をするよっ!!フィールドがあってゴールが二つ〜〜〜〜!!球をリングにぶち込めば勝ち!ただし球はボールじゃないよ!人間!!両チームまずは球になる人間を決めてくれっ!!≫


シュラハテンは、ぽい、とサンジを投げ入れる。
アスカ達がコートの中に入ったのを見て、審判の格好をしている海賊が球を持ちながら近づいてくる。


「おめェら誰が"球"やるんだ?」

「「ん」」


審判が"球"役を聞くと、ゾロとアスカは同時にサンジを指差す。
その二人の指先にいるサンジの頭に審判は球がついた帽子のようなものをかぶせる。


「ん?」

「球印!」

「勝手に決めてんじゃねぇよ!!球はてめぇェだろ!マリモ!コラ!!!」


相談なしにサンジが球印となり、サンジはゾロに噛みつく。
ゾロに"だけ"噛みつくのは流石サンジとしか言いようがなく、ゾロが何か言い返そうと口を開いたその時―――フォクシー海賊団の船から音楽が鳴り響き、狐の口が開き誰かが現れる。


≪おっと!聞こえてきた!!やつらの入場テーマ曲!!これまた『グロッキーリング』無敗の精鋭!!!そうだ!こいつ等に敗北などありえない!!その名も"グロッキーモンスターズ"今!フィールドに……登場〜〜〜〜ォ!!!!!≫


現れたのは、三人の男。
どの三人もアスカ達よりも巨体を持っているのだが、一人、まるで巨人族のような体格を持っていた。


≪先頭には四足ダッシュの奇人ハンバーグ!!続いて人呼んで"タックルマシーン"ピクルス!!そして最後方には魚人と巨人のハーフ!!"魚巨人"のビックパン!!まさにモンスター共の行進!!!≫

「なんじゃありゃ!」

「何あのデカイ魚人!」

「あいつが"球印"つけてるぞ〜〜!!」


実況からの照会によれば、巨人のような男は、魚人と巨人のハーフだった。
それを聞いて魚人の姿にも似ておりアスカは納得する。
相手側の球印はその魚人と巨人のハーフらしく、アスカ達は球印を持つ彼を見上げる。


「不足は?」

「ねェな」

「ない。」


サンジの問いにゾロはゴキッと首を鳴らし、アスカは手をウサギにして巨人を睨む。


≪我らの誇るグロッキーリング最強軍団に対するは!!1回戦でお邪魔軍団を蹴散らした"暴力コック"!サンジ!!≫

「一流コックと言え…」

≪6千万の賞金首!!"海賊狩り"!ロロノア・ゾロ!!!≫

「…………」

≪そして!!見た目は可憐なのに中身は最悪!?8千万の賞金首!!"冷酷ウサギ"!アスカ!!≫

「くおらァ!!!アスカちゃんは中身も可憐じゃボケェ!!!!」

「どうでもいいし」

「アホか…」


実況は一応アスカ達の紹介もしてくれるようで、サンジはアスカの紹介に異議を申し立てる。
あちら側からしたら可愛らしい見た目なのに異名が『冷酷』とついているからとの事だが、彼らは『冷酷』の異名の経緯は逆恨みとは知らない。
更に言えば、アスカの性格を知っているゾロからしたら相手側の説明はあってると言えばあっているのだ。


「お姉さま〜〜!!見てて〜!!!私頑張ります!!」

「……?…――!!」


実況に向かって蹴り飛ばさん勢いで文句を言っているサンジをよそに、アスカはミコトに向かって手を振り、ミコトに手を振り返してもらったアスカはご機嫌だった。
すると突然ビックバンがミコトに向かって駆け寄り、アスカは手を振ったまま固まり目を丸くする。


「は!?」

「な、何だ!?」

「え!?なんでこっちに向かってくるの!?」


理由もなくこちらに向かってくるビックバンにナミ達も戸惑うが、ビックバンはそんなナミ達を見向きもせず真っすぐミコトに向かって駆け寄り、どこから取り出したのか分からない花束をミコトに向けけ差し出した。
ミコトがビックバンから差し出される花束からビックバンを見上げれば、彼の目は某コックのようにハートになっているのが見えた。
ミコトも流石に戸惑っていると中々受け取らないミコトにビックバンはまたズイッと花束を差し出し、ミコトは押し付けられた花束をつい受け取ってしまう。
つい受け取ってしまったミコトはキョトンとした表情でビックバンを見上げ、ミコトに見つめられたビックバンは照れているのか頬を赤くしてモジモジと大きな身体をくねらせる。
どうやらアスカが手を振っているのを見てミコトに気付き一目惚れしてしまったようである。


≪おおーーーっと!!これはどういうことだー!?ビックバンが突然麦わらチームの絶世の美女に惚れてしまったァァ!!!!!≫

「「な、なにーーーーー!!?」」

「まあ…」


実況の言葉にルフィとアスカが同時に叫び、ミコトは頬に手を当てる。
ナミ達も突然のラブストーリーに絶句していた。


「うがーーーーーーっ!!!」

「アスカちゃん!?お、落ち着いてくれー!!!」

「ゆーるーさーんー!!!!」

「ル、ルフィ!!!お前も落ち着いてくれェーーーっ!!!!」


実況の言葉にフルフルと体を震わせていたルフィとアスカはその怒りを爆発させ、未だミコトを熱い眼差しで見つめるビックバンを殴る…否、殺す勢いで暴れようとしていた。
しかし寸前でサンジとウソップに止められてしまう。


「てめェ!この魚人モドキがァァ!!よくも私の愛しいお姉さまに惚れやがったな!!殺す!!!こーろーしーてーやーるーー!!!」

「アスカちゃん!!駄目だって!!殺しちゃったら駄目だって!!!」

「よーし!!アスカ!!やっちまえ!!!おれが許す!!!」

「っておいーー!!許しちゃ駄目だろ!!!」

「ありがとうございます、とても綺麗なお花ですね」

「姉ちゃんーーー!!?」

「お姉さまーーー!!?」


言葉使いも荒くなりシュラハテンから降りて怪我しているのに関わらず暴れようとするアスカをサンジは必死に止めた。
ルフィもルフィでウソップに止められながら殺害の許可を出しウソップに突っ込まれている。
しかしそんな弟と妹をよそにミコトは状況を飲み込めたのかにっこりと極上な笑みをビックバンに向けた。
そんな姉にルフィとアスカはショックを受け、ルフィは唖然としアスカは気を失いそうになる。
ビックバンはミコトの言葉にドスン、ドスン、と嬉しそうに飛び上がる。


「でも…」

「?」

「わたくしとあなたは敵同士…気持ちを受け取る事は出来ませんわ」


ごめんなさい、と眉を下げて謝るミコトにビックバンはコレでもかってほど肩を下ろし落ち込む。
仲間であるはずのハンバーグとピクルスはビックバンの失恋を面白おかしく笑い出し、ルフィとアスカはミコトに向かってぐっと親指を立てる。


「ビックバン!!!」


落ち込むビックバンに他の仲間達が慰めているとフォクシーがビックバンを呼ぶ。


「欲しいものは奪え!!それが海賊でありこのゲームの趣旨だぜ!!勝ったらその女を手にすればいいだけだ!!!!違うか!?」

「うお…うおおおおおおお!!!!」

≪さァすがオヤビン!!!落ち込むビックバンを一瞬にして元気つけたよー!!!≫

「こ…の…この…!!クソ狐があああああ!!!!!!」

「あが!!」

≪ぎゃーーー!!!オヤビーーン!!!≫


失恋して落ち込むビックバンは船長の言葉に一気にやる気を取り戻した。
それを見たミコトは『まあ、どうしましょう』と困ったように手を当て呟く。
炊きつけたフォクシーにアスカはガコーン、と靴を二つフォクシーに投げ、それがヒットしフォクシーは倒れ、そばにいたポルチェが駆け寄った。


「殺す…絶対殺す…」

((恐ェーー…))


グルルル、とまるで獣のように怒りを露わにするアスカを見て、ゾロとサンジは恐ろしく流石に喧嘩も出来なかった。
ビックバンは待ちきれないと言ったようにそわそわしはじめ、更にはチラチラとミコトを見ていた。
試合を始める前にゾロは武器は反則だと没収されてしまう。


「要するにあのデケェ奴の頭をむこうのリングにブチ込みゃ勝ち…!!コックの頭をこっちのリングにブチ込まれりゃ敗けか…!!」

「アスカちゃん!お願いだから無茶だけはしないでくれよ!!」

「安心して、あいつをブッ殺すまで私は止まらない!!」

「「いや、そういうゲームじゃないから…」」


改めて確認するゾロをよそにゲームの事なんて全くもって頭に入ってないアスカに2人は突っ込むがアスカは反省するよりもビックバンを睨みつけるだけだった。
ビックバンは緩んだ顔でミコトに手を振り、ミコトも振り返すがルフィに『駄目だぞ!姉ちゃん!!』と手を取られ止められてしまう。
ビックバンは残念そうな顔をしていたが、ミコトは弟が嫉妬してくれるのが嬉しいのかニコニコと笑みを浮かべていた。
アスカはミコトに手を振るビックバンを見てギシリと奥歯を噛みしめ、ギッと審判を睨む。


「笛!!!」

「は、はいィィィ!!!」


審判を殴ると失格になるとサンジに言われたため、一刻も早く試合を開始しろと言いたいのだが怒りすぎて『笛』しか言えなかった。
それでも通じたのか審判は悲鳴を上げ笛を加え思いっきり吹き…試合を始める。

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